願いの記録集
これは願いの記録である。
惑星は通常、異なる次元に漂っており見つけることは困難である。
運よく辿り着けた者は、その惑星で願いを叶える奇跡を得ることが可能である。
しかし異なる次元への干渉は、思考回路に大きな影響を与えたようだ。
よって誰もが、記憶喪失という現象に陥ることが判明している。
その範囲は記憶というよりも思い出に近い。
常識など、生きていくのに必要な最低限の記憶はなんとか保守されている。
記憶は完全に消去される訳ではなく、大事なことからしだいに修復されていくようだった。
おそらくはそれも、生きていくのに必要な記憶を優先させているからだと思われる。
願いの記憶が真っ先に思い返されるのも、それが要因だとされた。
記憶がなければ、誰もが何をすればいいのかわからなくなるものだろう。
生きる目標や、目指す指針を持とうとするはずだ。
よってそれらを定めるために、願いの記録は執着される。
元々願いを叶えるためにやってきた者なら尚更のことである。
今回、二組が願いを叶えて惑星を去った。
一人はもう片方に命を分け与えたという。
もう一組は、争いの波を沈めた後に同じ星へと戻ったようだ。
当初の願いとは多少変わったようだが、おそらく間違ってはいないだろう。
記憶を忘れ、願いを違う視点から見つめ直すことができるからこそ。
この惑星は願いを叶える場所としてふさわしいのかもしれない。
「収集は以上。」
さて、次の記録へと向かおうか。