願いの記録②
願いが叶うという逸話のある惑星で、私は仲間と歩いていた。
「記憶がないのは心細いが、一人じゃなくてよかったよ。」
互いに同士だと確信したのは、同じ隊服に同じメンバーカードを持っていたからだ。
思い出せた願いはどちらも同じ。
故郷の繁栄だった。
「我々の願いが叶うと良いな!」
無邪気な顔に、笑い返す。
「二人いればなんとかなるさ。」
だが、どこか不安に感じていたのは気のせいではなかった。
しだいに思い出していく記憶のうちに、知りたくもなかった事実が見つかることになる。
相方は同士などではなく、ただの密偵で。
敵なのだと。
「それは、本当なのか?」
「間違いない。好きに罰してくれ。」
故郷の繁栄。目的は同じはずだったのに。
互いの故郷は別にあったなんて。
「真実なんて隠していればよかったじゃないか。」
「裏切りたくは、なかったから。」
「最初に思い出した願いは故郷の繁栄だったくせに。」
一番大事なことだけは、覚えている感覚があった。
それは私だけじゃなかったはずなのに。
よくもまぁ、本当の自分を捨てられたものだと思いながら銃を向けた。
「望み通りにしてやろう。」
故郷のためには、やらなきゃならない。
だけど、これが本当に私の願いなんだろうか。
たしか故郷の繁栄は、一族の夢で。
私の役目で。
背負ってきた目標で。
「…あぁ、そういうことか。」
ようやくわかって、銃を下げる。
これはおそらく目的であって、望みではないのだと。
「何もしなくてよかったの?」
「うん。今の私にとっても、ここにいる君が一番の仲間だからね。」
いつか記憶が完全に戻るまで。故郷に戻るまで。
それはまでは、まだ互いに仲間でいよう。