願いの記録①
願いが叶うという伝説の惑星。
そこで私は、記憶を無くして倒れていた。
住民の話では、ここにたどり着いた生命体はほとんどの記憶を無くしてしまうらしい。
ただしそれは一時的なもので、しだいに思い出していくのだとか。
「でも、どうして。」
微かに覚えていた願い事があった。
だけど、どうしてそれを願ったのかが理解できない。
自分自身を消す、だなんて。
「何があったら、そんな願いを叶えるためにここまでやってくるんだろう。」
どうすればいいのかわからずに、うずくまる。
そんな私の目の前に、何かが現れた。
不気味で、恐ろしく、得体の知れない何か。
「な、何?」
怯えた声に反応して、その何かは動きを止める。
そこからわずかに声が聞こえた気がした。
「願い事…。」
何かは呟く。
「願い事、どこですか?早くしないと、消えてしまう。」
なんとか聞き取ったその言葉に呆然としていると、近くの住民が駆けつけた。
「この子は、悪い子じゃないんだよ。お手伝いしてくれるし、人助けもしているんだ。でも。」
「でも?」
「見た目のせいか、他所からは恐れられててね。襲われてばかりだから、未だに願いを叶えるための手順ができていないんだ。」
よく見れば大怪我をしていて、その体には呪詛のような何かが取り付けられていた。
それが体を蝕んでいることは目に見えてわかった。
「消えたくない、私はまだ、消えたくないのに。」
「…そうだね。わかるよ。」
そうだ。それが普通なんだ。
きっと私も、本当はそれを願っていたはずなんだ。
「消えたく、ないよね……っ。」
思わず泣いて、涙が止まらなかった。
だけど残酷なことに、それは許されないということを思い出すことになる。
私は滅びを呼ぶ存在。
消えなければ、愛した故郷を救えないのだと。