表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/47

行間 三

 

 

「なんだ、それは?」

「戦利品。指輪だよ」

「金にするつもりか?」

「当たり前でしょ。ちょっと血で濡れちゃってるけど拭けばいいし。きっと良い値段着くと思うな」

「ふん。それにしても、思ったより抵抗が激しかったようだな?」

「は?」

「裾に返り血。らしくないな。お前なら返り血一つ浴びずに片付けられると思っておったに。所詮は惰弱な人間かとばっかり思っていたが……」

「オレだってね、手を抜いた覚えはないよ。相手はヤクザとか警官とかどうでもいいヤツらじゃなかった。苦しんで死んで欲しくなかったから、一撃で決めようと思ったのに下手に動くからさ」

「貴様の腕も鈍ったか?」

「バカじゃないの? オレの腕が落ちるわけ無いでしょ?」

「さあな。分からぬぞ?」

「……、」

「……、」

「―――時に、だ」

「……『押領使』?」

「何時ぞや、話した昔話を覚えているか?」

「ん? ああ、勿論。オレがお師匠様殺したときだろ?」

「覚えているなら止めておけ。末路は同じだ。貴様は『追捕使』となった者を縛り付ける永遠の螺旋に捕らわれているだけに過ぎない。その『抗おうと行動していること自体』が螺旋の一部なのだ。余は今まで歴代の『追捕使』とこの世界を渡り歩いてきたが、誰一人として永遠の螺旋から逃れられた者はいなかった」

「その話は聞き飽きたよ。でもさ、だからってオレが出来ないって証拠はないでしょ?」

「まあ、な」

「オレはやるよ。あの頃はオレも、そしてお師匠様さえも未熟だった。だけど今のオレがやったらどうなると思う? 今のオレがやったら成功する。みんな幸せになれる。そう思うでしょ、ね?」

「……貴様」

「アレ? 羨ましいの?」

「―――良い。分かった。最早止めぬ。好き勝手、気の済むまでやるといい。余は余で勝手に動くとする」

「勝手にして。ただし、オレの邪魔はしないでね」

 

 

     ◇◆

 

 

 命が一つ、またこの世界から零れ落ちた。

 ―――最愛の、命が。

 彼は征く。

 斬り捨て、挽肉にした亡き骸を置いて。

 愛刀の血糊を払い、引き裂かれた骸を跨いで。

 そして。

 

 

 

 

 ―――その事実を知るものは、まだ誰一人としていない。

 

 

 

 

分かり合えてるかなんて分からないけれど、その手を掴まずにはいられなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ