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「間違いないんだね?」

「ああ、間違いない。名前は北沢楓。間違いなく『異常因子』だ」

「……ふうん」

「―――どうした?」

「あの娘、カワイイな。お師匠様に似てる」

「あんな小娘が好みか? あの程度の娘なら世界にごまんと溢れてるではないか」

「『押領使おうりょうし』は本当に女を見る目がないね。下手に美人よりもあんな感じの可愛い子ちゃんの方がそそられるんだよ。それに何よりお師匠様にそっくりじゃん。―――そっか。あの娘はお師匠様の生まれ変わりなんだ」

「余には貴様の考えが理解できぬ」

「いいよ、分かって貰えなくても。―――ねぇ、ホントに斬らなきゃならないの? お師匠様かも知れないのにさ、ホントに斬らないとダメ?」

「無論。貴様は『追捕使』なのだ。それが永遠の役目だ。それにあの女が先代のわけがなかろう」

「お師匠様、オレのこと忘れちゃったのかな……。一度死んじゃったから記憶が飛んじゃったのかな。―――でもさ、お師匠様だから『紫衣』を纏えるから大丈夫だよね? ね、お師匠様の生まれ変わりならならきっと大丈夫だよね?」

「貴様……」

「だってそっくりだもん。あれは絶対にお師匠様だって」

「愚かな。生まれ変わりなどありはしない」

「あんなにそっくりなのに?」

「無論」

「でもさ、あんなにそっくりなんだからお師匠様だよ。オレを愛してくれたお師匠様だよ」

「目を覚ませ。愚か者が」

「目を覚ますのは『押領使』だよ。あんなにそっくりなんだよ!? もうあの娘はお師匠様。誰が何と言おうとお師匠様なんだから!!」

「貴様というヤツは」

「あの時はお師匠様の気持ちが分からなかったからあんな無下にしちゃったけどさ、今度は大丈夫。きちんとお師匠様の愛を受け止めてみせる。だからさ、オレは決めた。今度こそお師匠様といっしょになる」

「あの女は先代とは別人だと言っている」

「違うよ。あれはお師匠様。絶対にお師匠様なんだから」

「……、」

「ねぇ『押領使』。オレは、お師匠様の願いを叶える。三〇〇年経った今なら分かる。オレはお師匠様を愛してる。お師匠様はオレを愛してる。今度こそ愛し合う二人の『追捕使』が永遠の時を渡るんだ」

「貴様はどこまで愚かなのだ。例えあの女が先代の生まれ変わりだとしても、あの女が『紫衣』を纏えるとは限らない。それに貴様では女を壊すことしかできん。お前のような人間に女が付いていくわけがない。全てを改めるのならば別だが、お前が欲しい物をあの女から引き出すことはまず不可能だ。ましてや、お前が望むような展開など有り得ぬのだよ」

「やってみないと分からないよ? オレ、なかなかの遣り手だからさ」

「そんなにあの女が欲しいのならば手込めにすればいいではないか。その方が遙かに楽だとは思わぬか? どうせ処分する存在なのだからな」

「お師匠様のこと悪く言うなよ。いくら『押領使』だからって口が過ぎるんじゃないの? それにね、オレはお師匠様の身体が欲しくて言ってるんじゃない。オレはお師匠様の心が欲しいんだ。身体なんて二の次でも三の次でもいい」

「ほう」

「もう一度言うよ。オレは決めた。過去の間違いをオレは正す。あの時のお師匠様の想いに答えるよ。オレはもう一度お師匠様とこの世で踊る」

「―――好きにしろ。貴様にはほとほと呆れた。余は責任を取らぬ」

「いいよ。その辺で見ていれば? オレはお師匠様と愛を育むんだから」

 

 

     ◇◆

 

 

 それは。

 少女と少年が出逢う、ほんの少しだけ前の出来事。

人の心は酷く醜い。故に、人は覆い隠す。自らを守るために、自らを着飾るために。

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