序 To feel the sense of incompatibility.
To feel the sense of incompatibility.(≒違和感を覚えて)
ネオンが月光を覆い隠す河川敷。
混じり気のない白猫が堤防の上に丸くなっている。
猫は大きく欠伸して、やがて一点にその双眸を向けた。
「『世界』は貴方を知らないんだ」
その双眸の先に、若い男が倒れていた。高級そうな布地で仕立て上げられたらしいスーツはボロボロで、鮮血に彩られている。全身に刀傷を刻み付けられた男は、血溜まりの中を浮かんでいた。
勿論、この男は助からない。絶命まであと数分といったところだ。
「『世界』は貴方の存在を知らないんだよ。だから始末する。簡単に言うとね、そう言うこと」
そんな状況下、夜より黒い黒衣を纏った少年は男を見下ろし、告げる。まるで息の根を止めるように、最期の最期で絶望を与えるように。
「うん、分かるよ。死にたくないってことは分かってる」
掠れる男の呼吸。
閉じられていく両の瞼。
「でもね、残念なことに貴方は『世界』に記されてないし、生き残るために必要な切符を持っていないんだ」
少年は手に握る刀の切っ先を男の首元に当て、
「それだけで充分。オレが貴方を殺す理由はそれだけで充分なんだ」
少年は、嘆息。
「さようなら。良い夢を」
優しく最後通牒を突き付けて、少年は男の首を刎ねた。
こんばんは。完結までちょっと長いですが最後までお付き合い頂けると作者冥利に尽きます。なお、毎日の更新を目標にしてますのでどうぞよろしくm(_ _)m