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女子高生に激能力! 2

腰を抜かしても仕方がない状況だった。

すくなくとも二年近くにわたって指導してくれたり暴行を止めたりしてくれた、あの先生たちが…


神崎先生と天国先生は、同じ転生組だったというこの事実。

驚いているのに構わず、神崎先生はなおも話を進めていく。


あの、先生、リアクションしてるのに無視ですか。


「で、たぶん草野がやべぇなって思ってるその力のことだけどよ」


「そ〜そ〜、それ、神様の力なんだよね〜」


「要、テメェ!

話の隙間を選んで入ってくんじゃねぇよ!

アタシにきっちり話させろコラ!」


普通の人なら委縮する神崎先生のメンチにも、天国先生は漫画を片手に、ヘイヘ〜イと適当な相づち。

あたしはこの二人のツーショットを見たことがなかったから、慣れたやりとりにも驚いた。


普通あんなメンチ食らったら即座に財布を開いてしまいそうなんですけど。


「…で、あーと…あァ、そう神様な。

で、草野。

いつからだ?」


「あ…いえ、目覚めたらこんなんになってて…まさかこんなアッサリとは」


昨日の今日で急すぎる話だけど、これが現実。

ふうんと神崎先生は腕組みをして考え込む。


「なぁ、要、これってどういう『暗示』なんだ?」


「……」


「おい、要!

何度も呼ばせるなタコ!!」


「な〜ん〜だ〜よ〜ぉ、読んでていいって言ってたじゃ〜ん。

その辺は俺でも分かんないよ〜。

もしかしたら近くで見てて、解放してくれたんかもしんないし〜」


...だれの、話だ?

会長...闇闇乃は、どこまで掴んでいる?


なんとなく部屋が沈黙に包まれる。

次の瞬間、保健室の部屋のドアがすごい音で叩かれた。

まるで誰かが体当たりしてるような音。

しかもそれは一人二人じゃなく、十数人くらい…


「ノックにしちゃ、ずいぶん気合入ってンな」


異常に気付いて神崎先生は軽口をたたく。

でも天国先生は、ドアを見ようともしない。


「ちょ、天国先生っ!

ドア破られちゃいますよ、もっと焦ってくださいよ!」


きっとまた早倉ちゃんこと色主とかの差し金に違いない。

それはヤバイ、至極マズイ!


でも天国先生は、最後のページをゆるりとめくっただけ。

その間にも、ドアはめきめきと音を立てて、歪んでいく。


ぱたん、と天国先生の漫画が閉じられた。


「やっと終わったか、読むの遅ェんだよ」


神崎先生のため息。

と、同時に後ろからあたしを包み込むようにそっと抱く。


「え、せんせ…?」


「騒ぐな、静かにしてろ」


天国先生はぼうっとした眠そうな顔つきで、保健室のベッドから降りる。

この間にも、ドアは歪み、あと二・三回の衝撃で破られてしまうくらいになっていた。


「じゃ〜行きますよ〜…


――我が右目のクラニイナ、

我が左目のカグニイナ、

誓約の歓楽を望むのならば、

我が前に姿を見せよ…」


ついにドアが破られた。

なだれ込むようにして、数十人の男女生徒が入ってきた。

皆目が虚ろだが、彼らはにやにやと口の端に笑みを湛えていた。

本能的な恐怖を感じる。

心以外のどこかの部位で、警報が鳴っている。

あぶない。こいつらは、あぶない。


「――眠れ、カグとクラの導きと共に…」


す、と天国先生は空を指さす。


静かな沈黙。

硬直したように止まった生徒たちが、パタパタとゆっくりと崩れ伏していく。


「え、なに…? 眠ってる…!?」


ゆうに二十はいた男女が、一人、また一人と眠っていく。

神崎先生はあたしを抱えたまま、耳元でひそりと囁いた。


「あれはな、草野。

目に見えない二柱の精霊が、生徒たちを眠らせてンだよ。

要の技だ。

あいつらは感情を支配されているわけだからな。

意識を手放してしまえば支配統括ができねーんだ」


ぱたり、と最後の生徒が崩れ伏し、ドアの向こうには早倉ちゃんだけが一人立っていた。


「先生たちが闇闇乃の仕込んだ『式神』だったんですね。

…やられましたわ、私の負け」


早倉ちゃんの降参したという表情を、神崎先生は鼻で笑う。


「はっ…嘘つけ、いつだって布石を打ってあンだろ」


くすり、と早倉ちゃんは笑う。

あたしはこの期に及んで、まだ実感がなかった。

あの早倉ちゃんが…こんな顔をして笑うのかと。


「次に負けたら、二対ゼロで私の負けです」


ぱちん、と指を鳴らす早倉ちゃん。

窓ガラスが割れる。


「なんだ!? 要!把握しろ!」


「…そうか、

人間だけが敵じゃなかったか~…」


窓ガラスを突き破ってきたのは、一羽の鴉。


「ええ、特に動物の感情はとってもシンプルですから。

こちらの方がぶっちゃけ得意なんです」


次々にガラスが割れると、黒い羽根が宙を舞う。


「視野のある校庭に出るぞ!

要!援護しろ!!」


神崎先生に肩を押され、あたしは悲鳴を漏らしながら窓を飛び越える。

早倉ちゃんは、さらに指を鳴らす。


外に出てみて初めて気づいた。

教室にいる生徒は、すべて床にうずくまっていたのだ。

誰も声を上げていない。

死んでるのかもわからない。


「草野!もっと気合い入れて走れ!

これじゃ護れねェぞ!!」


あたしを抱えている神崎先生は、どうやら薄い膜のようなものであたしを包んでいるようだ。

さっきから鴉のくちばしがあたしまで届かずに途中で飛ばされてしまっている。


なんだよもう、あたしばっかり護られて。

なんか役に立てないのか?

せめて速く走ることしかできない。

全力で、土を蹴る。


「くっそぉぉぉおおおおおお!!!」


あたしは高速で校庭を走り、鴉さえも追い付けないほどのスピードを出した。

とりあえず、早く逃げるしかない!


「草野!!バカ!前見ろ!」


校庭が広いおかげで、体育倉庫にぶつかる前に避けることができた。

しかしあたしを追ってきた何羽かの鴉は倉庫に激突してしまっていた。

神崎先生もろとも、あたしはグランドに突っ込んだ。


「早倉を叩かなきゃ、ここ一帯の飼い犬まで追ってくるぞ!

あいつを吹っ飛ばすしかねぇ!」


先生の膜のおかげで、あたしはかすり傷一つなかった。

頷き、あたしは走った、保健室へ。


保健室の前庭で、天国先生は必死に見えない精霊を使って、鴉の群れを追い払っていた。

走りながら考えた末に、あたしは保健室の隣の教室に生えている四メートルくらいあるケヤキの木に手を回す。

力を込めると、メキメキと音を立てて、ケヤキの木は抜けた。


「じゃまだぁぁぁあああああ!!」


その木を。

抱えながらあたしは振り回した。

鴉たちは思いもよらぬ攻撃に驚き、散っていく。


「な…まさか、力が!?」


早倉ちゃんも口をあけて驚いている。


「どっせぇぇぇええええいいぃ!!!」


その巨木を保健室につっこんで、あたしは勢いよく薙いだ。


「ぃいやぁぁぁぁああ…!」


早倉ちゃんは悲鳴とともにグランドに吹っ飛ばされていった。


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