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女子高生に激能力!

異常に気づくのに、そう時間はかからなかった。


シャーペンが二本も折れた。

芯ではない、折れたのは本体。

ペンが三本も折れた。

おかげで手はインクまみれ。


「いやいやいや…折れないでしょ、フツー」


これはもう日常とはかけ離れた感覚。

普通の女子高生は、シャーペンもペンも折ることはない。

柔らかいチョコでも握ってるかのようにあっさり。


…やばい。

この感覚、人間のそれを超えているような気がする。


いやいやいや、たぶん体の調子が悪いんだ。

そうだ、保健室に行ってみよう。


頭によぎる不安をかき消すように、とりあえず保健室に直行した。


「普通に調べても特に何も異常は見られないな〜。

あとはこんな保健室じゃなくて病院に行くしかないだろうけど、たーぶん同じこと言われると思うよ〜?」


保健室のベッドに寝そべりながら、週刊漫画を読んでいる男性。

決して怪しい人ではない。

この保健室の主―――天国てんごくかなめ先生。

聞きなれない名前だし、まだ若い先生だが、腕は確か。

校長からの信頼も厚い。


「ん、ん~、アンナ氏~。

急に怪力になりましたとか言われてもね〜。

俺、ただの保健室の先生ですから〜!」


勤務態度に異常があっても、ココの学校は咎めないのだろうか…。


「天国先生、私の力は異常なくらい強いって言ってましたけど、具体的にどのくらい異常なんですか?」


「うん、だいぶ異常〜。

アンナ氏の力なら、たぶん走ってくるトラックも片手で止められるんじゃないの〜?」


やばい、やっぱりだ…。

思わず頭を抱えるあたし。


これ、力が覚醒したんじゃね?


予鈴が鳴る。


「ま、気を付けていればなんとかなるんじゃないの〜。

また昼休みにでも来れば〜?」


と、いういっそ無責任とも言える天国先生の発言になんだか元気づけられて、あたしは前向きに授業に出た。


次は体育。で、テニス。

うちの高校には体育館が広く、バレーボールコートもテニスコートも両用になっている。


「アンちゃん、行くよー」


楽しげな友人のまいちゃん。

あたしは顔を引きつらせながら、力加減をして打つしかない。


もしこの前までやっていた柔道だったら、パートナーのまいちゃんを畳にめり込ませてしまったかもしれない。

今日がテニスでよかった…。


昼休みまで、何とか頑張った。

とはいえ、ボールを二球破裂させ、ガットを一本駄目にし、ネットに穴を開けまくったが…。

昼ご飯を早々に食べ、保健室に入る。

―――と、そこには。


「話は聞いたよ、草野」


「か・神崎先生?」


保健室のベッドにいつものように寝そべっている天国先生だけでなく、教務机に両足を乗せて煙草を吸っている神崎先生がいた。


不良の溜まり場かココ…


「は・話って何の…?」


「コイツからお前が怪力になった話だ。

一応顧問だからな、最近のサボリようについて調査してたんだよ」


根は真面目な神崎先生。ただし、タバコがある時に限るが。


「それから、雨宮から任務をもらってたからな」


生徒会長から?


「え、…雨宮生徒会長、ですか?」


あたしの言葉に、神崎先生は少し首をかしげる。


「何か変か?」


「普通、先生から生徒会とかに連絡いくのかな、とか思ったんですけど」


「あー、まぁ『普通』の関係じゃねェからな。こいつも。

そうだろ、要」


エロ漫画を真剣に読んでいた天国先生は、そこから目を離さないで、そ〜そ〜と適当に相槌を打つ。


「で、雨宮から伝言だ。

『この前は失礼したね、君に起こった変化は把握しているよ。

なるべく目立たないようにと天国から言われているだろうから、それに従うといい。

おそらく君のことはあっちにはバレていないようだから、有意義に使うといいよ。

三日後にはきちんとした動向がつかめるようにしたいから、しばらく行方をくらますけれど、

天国と神崎が上手くサポートしてくれるから、それまで何とか踏ん張っていたまえ』

…だ、そうだ」


長っ!

よく覚えられたな先生…


「風倉御子が動き出すにしては早すぎるだろうから、

たぶんまだ早倉...色主いろぬしを使っているだろう」


「そ〜だろ〜ね〜。

ま、なんにせよ、俺は漫画さえ読めればどっちでもいいんさ〜」

 

相変わらずやる気ないなぁ、天国先生…

と、考えてからあたしは驚く。


…あれ?


「せ・先生たちは、信じるんですか?!

槌御神つちみかみとか闇闇乃やみやみのとか!!」


雨宮生徒会長が言ったように、ツイッターで調べてみた。


武蔵野神話の話は割と有名みたいだったから、果たし状はおもしろネタとして拡散されてた。

『転生女子高生、神様を怒らせる』って感じで。

風倉神子が色主と同盟を組んで、下劣な槌御神をぶっ殺す!みたいな雑な果たし状だったから、経緯も何も分かったもんじゃない。


でも、どう考えたって普通の先生がそんやネタ話を鵜呑みにするわけない。


「うん、そりゃね〜」


ページを繰りながら、天国先生はのんきにこたえる。


「…まぁ契約してるからな」


神崎先生は二本目のタバコに入った。


「契約...?」


神崎先生は、はーっと溜息と同時にタバコの煙を吐き出す。


「魂をもらったんだ。


…前世でな」


「そ~」


にっこりと笑う天国先生。

つられてあたしもにっこり笑う。


「せ・先生も…神様なんですか?」


「ち〜がうよ〜。

俺たちは、主にずっと仕えてる使い魔みたいなかんじ〜?

まったく面倒くさいことに巻き込まれちゃって、主も大変だよね〜」


「まったくだ」


あたしは床にへたり込む。

闇闇乃には能力故に配下が沢山いた。

…その中でも古参の神が二柱いたはず。


「先生たちって人間じゃなかったの?」


「だから違うって言ってるジャン!」


ハモリで怒られた。

すいません、知りませんでした。

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