女子高生の大謀略! 3
イリタにも匹敵する雨宮まみやのやる気の無さに、私はぶん殴りたくなった。
が、拳を握り締めたところで彼女はまたにやり、と笑う。
「…普通の女子高生に転生したはずだったけれど、私には能力と記憶があった。
君の力が目覚めないのもきっとわけがあるのだろう。
この状況のおかげで、私もいよいよ傍観者のままではいかなくなったから、
責任を持ってしばらく君を守るよ。
…そのメモ用紙を肌身離さず持っていてほしい。
また襲われた時に、そのメモ用紙を媒体として私の精神を送るからね。
…とはいえ、私もそんなに暇じゃあない。
だから『自動的』に君の周りのもので、ある程度ガードしよう。
…足りない分は、君自身で補うといい」
雨宮まみやは饒舌にひとしきり話すと、話は終わりとばかりに席から立つ。
ちょっと待ってよ。
「あ、あの・まだ今回の経緯が理解できてないんですけど...」
「ああ…大丈夫、今回の喧嘩の果たし状は君が知らないだけで、けっこう拡散されてる内容だよ」
今回の経緯、ツイッターで出回ってんのかよ!
「ま、ほとんどネタ扱いだから誰も本気にしてないけどね。
女子高生なんだからツイッターくらいやってるでしょ?
うん、問題ないね」
じりじりと生徒会室のドアに追い込まれる。
まだ、聞きたいことがあるのに。
「い・いつ来るんですか?
急に家とかに来られても、私...」
ようやく私の質問に少し黙って考えてくれた。
指先をあごに当てて考え込む姿は改めて見ると、きりっとしていて凛々しい。
「…早倉さんの動向は把握しているが、黒崎野さんはどうも分からなくてね。
…『自動』だと力は三日しか持たないから、また三日後に対策を考えようか。
…それまで、自分でどうするか考えていればいいよ。
…じゃ、そろそろ帰ってくれ。
楽しみにしているラジオが始まるんだ」
肩を押され、私はしぶしぶ生徒会室から出た。
身の危険を訴えているのに、ラジオの心配をしている雨宮まみやが腹立たしかった。
こっちは好きでもないケンカに巻き込まれているのに。
下校途中はひやひやだった。
いきなり襲ってきやしないかとおびえて帰ったが、何かの気配を感じる度に、暗闇で何かが動いて静かになる。
その繰り返しで、なんとか無事に自分の部屋まで帰ることができた。
…全く、こちとら生身の人間に無茶してくれる。
家族と食卓を囲んでいつも通りにテレビを見ているうちに、学校で起こった奇妙な出来事を忘れていく。
お風呂からあがり、ベッドで寝ころんでいたら、
わりと疲れがたまっていたのか、私はそのまま寝入ってしまった。
そして翌朝。
気持ちよく寝過してしまった。
大急ぎで着替え、ご飯を食べて登校しようとしたときに、部屋にかばんを忘れたことに気づいた。
もう最悪。
階段を駆け上り、自分の部屋を思い切り強く開ける。
―――ばきっ
と、扉が蝶番から外れた。
そんなに老朽化していたなんて、私は思いもしなかった。
最悪。とことんついてない。
こんなん漫画の世界だろ!と心の中で叫んで、私はそっと扉を元に戻す。
きっと後で掃除をしに来た母が、このドアを開けて絶叫するだろうけど。
玄関を出て時計を見ると、走ればなんとかなるギリギリなところ。
とはいっても…私は運動が得意な方ではない。
言ってしまえば運動音痴。
でも背に腹は代えられない。
精いっぱい走った。
――ぐっすり寝たせいかな?
あまり体が疲れない。
そのまま学校まで猛ダッシュで駆けた。
幸運にも、学校には遅刻せずにつくことができた。
息もきれてない。
不思議な感覚のまま、とりあえず自分の席に着く。
この時の私は、まだ何も分かってなかったということを、
この後、思い知ることになる。




