女子高生って言えなくない?
驚いている神崎先生、額を覆っている天国先生。
深刻そうに頷く早倉ちゃん。
「…黒崎野先輩の魂は、風倉御子は、
我々の母であり父の存在であった『全能神』を転生してもなお愛していたのです。
ファザコンだとかそういう感情で言ってしまえば楽ですけれど」
――前世で起こった四つの神の闘争の発端は、
風倉御子と…槌御神。
この二柱から始まったこと。
全能神は四つ柱の中でも特に槌御神を愛していた。
大地の愛を受け、優しく清らかだからだと。
風倉御子はそれを妬んでいた…。
ある、きっかけで全能神が風倉御子を激しく叱り、
とうとう四つ柱が分断。
全能神の力が消滅しかける程のいさかいが起こってしまった。
かろうじて、全能神は99%の力を引き換えに、残りの1%を同じ『武蔵野』の生物の魂に繋げた。
―――おそらく、愛していた槌御神を見護るために。
まったく。
ストーカー気質が半端ない。
「全能神の魂を1%宿した生物の魂…
それが千賀先輩なんです」
転生して、絶対に会いたくなかった存在だった。
名前すら忘れたかった。
それが、こんなに身近にいたなんて。
...てゆーか、こんだけ転生元の神が集結してるの、たぶん全能神の仕業な気がするんだが...。
「黒崎野先輩は彼を攫い、自分の手元に置いていたんです。
私は千賀先輩が攫われた現場に居合わせて、その時に転生前のこと、思い出したんです。
もちろんそれまでの記憶も健在ですから、なんとか千賀先輩を解放しようと、策を練っていたんですが…。
―――駄目です、やっぱり私や色主としての専門分野ではありませんね」
目を閉じてため息をつく早倉ちゃん。
話を聞いて、起きていることが少しずつ分かってきた。
あたしはがっくりと肩を落とした。
「専門じゃねーの?
早倉はいいとしても、色主の方は?」
天国先生が包帯をくるくると巻きながら、
神崎先生の言葉にゆっくりと返す。
「違うよ〜。
色主様はね〜感情をつかさどる神なの〜。
まぁ、言ってしまえば〜お色気担当?」
「ええ、ですからこういった頭脳労働は…」
「――――…いや、よくやっていたよ。
色主…早倉さん、どちらもね」
「!?」
低く響く声。暗い、影のような。
振り向くまでもなく、彼女…雨宮まみやの声だった。
「おかえりなさいませ、我が主」
いつのまにか…
神崎先生・天国先生二人そろって、雨宮まみやに片膝をついて首を垂れていた。
「…御苦労。
…でも、私は言ったはずだ、
『早倉・草野に怪我をさせないように』と。
…お仕置き、後でしてあげる。
…控えていろ」
小さく頷き、二人は彼女の後ろにそっと控えた。
垣間見えた天国先生の横顔からは汗がにじんでいた。
「…さて、早倉さん。
…私と会うのは初めてだろうね。
…器的に言わせれば、はじめましてだが、
神の記憶から言えば、――久しぶり、だ」
にたりと笑う、雨宮まみやに早倉ちゃんはぎこちなく頭を下げた。
「…さて、そろそろ事の本質が分かってきたころだろう、草野アンナさん。
…君の抱いた感慨はあながち間違ってはいないさ。
…こんな闘いなど、たたかいですらない。
―――けんか、だよ」
雨宮まみやは歩きながらそう言い、保健室のベッドに腰掛ける。
「…だいたい、私はうんざりなのだよ。
こんな面倒は」
と、彼女は肩を落とした。




