女子高生は忙しい!
「そういえば、黒崎野さんて夏休みからずっとお休みしてるけど、何か知ってる?」
絵筆を持ちながら、リエちゃんは可愛らしく首をかしげた。
「いや分からないなぁ…
それに私は美術部の部長なんだし、
さすがに軽音までネットワークはないよ」
私とリエちゃんは昼休みの時間を使って、文化祭に出展する作品を仕上げていた。
穏やかな日常のひとコマ。
これこそが望んでいた平和な日常。
女子高生に転生した甲斐があるっつー話だ。
私は草野アンナ。人間。普通の女子高生。
でも転生前は、ちょっとした有名人。
人というか、神サマ。
ちょっといざござがあって、人間になったのだけれど、転生してよかったー。
そしてなにより、美術部のマスコット的存在であるリエちゃんとの至福ひととき… 。
「アーンナッ!邪魔しに来たぜ〜!」
「早倉を置いてかないで下さいよ〜
千賀せんぱぁ〜い」
それは突入してきた二人によって、あっけなく破られたけど。
私は入ってきたイリタを睨みつけながら腕を組んだ。
「イリタ、もうすでに邪魔」
「うわー、もう任務遂行しちゃったよ。
サスガ俺!」
「千賀先輩、素敵ですぅ〜」
マジどっか行ってくれ。
そんな心の叫びが届くはずもなく…
二人は美術室の椅子を勝手に持ってきて、
弁当を広げ始めた。
「ここで食べるの!?」
「心配すんなって。
もちろん、ちゃんと石鹸で手洗って食うからよ」
貴様の体を気遣った訳じゃねぇ。
イリタは親指をぐっと立てながら、ウインク。
そして横で同じポーズをしている早倉ちゃん。
このウザい二人は美術部員ではない。
バレーボール部である。早倉ちゃんはマネ。
茶髪で制服はだらしなく、授業も部活もまんべんなくサボる、
この『歩く校則違反』――千賀イリタは私の幼馴染。
黙ってじっとしてれば、○ャ○ーズに入れそうなくらい容姿端麗。
手足も細長いし、男女ともに人気者。
私に言わせれば、ウザイ男の一言だが。
で、横にいるツインテールのくりくり嬢は、早倉ちゃん。
自分のことを何故か名前でなく名字で呼ぶので、実は下の名前を知らない。
イリタの周りをうろちょろしている後輩。
イリタの正式なファンクラブを押しのけて、こんなに付きまとっているのだから、見かけによらずタフなんだろう。
私の重いため息すら聞こえないくらい、二人はおいしそうに弁当を食べ始めた。
…邪魔だなぁ…。
「あ、そーだそーだ、アンナ。
軽音部の亀っちがお前を探してたぜ。
美術部にいるかもって行っといたから、もうすぐ来るんじゃん?」
「軽音の…?
亀っちって誰よ、相変わらず顔が広いんだから…。
なんだろ…つかこっちも一応忙しいんだけど…」
二回目のため息をついて、私は絵筆を握った。
と、激しく扉が開かれた。
「草野アンナ殿はご在席かな!」
再びの来客。
私はまた絵筆を置いた。
「私ですけど、なにか?」
およそ軽音には結びつかない長髪牛乳瓶メガネの男が、そろりと入ってきた。
「これは創作中に失敬です。
私は軽音部部長をやらせていただいている、亀淵と申します。
単刀直入に伺いますが…」
彼は、突然人差指をつき立てて…
「貴公は神様を信じますか?」
宗教の勧誘みたいな言葉を吐いた。
どうしよう。
はい、神様でしたって言えない。




