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28 解説

 28 解説


「では、わけを聞かせてもらおうかな?」

 と、なんでもたべちゃうゴンの強烈な胃液に溶かされる前に、シュレーデインガーのテレポーテーション能力で窮地を脱し、大乗寺啓之助邸に戻った弘左衛門が言う。

「そういう約束じゃったからな」

 すると目を輝かせて男の子が答える。

「磁石だよ! 電磁石の応用さ」

「正確にいえば、マッツクウェルの電磁気学の応用だな」

 シュレーディンガーが、すかさずつけ加える。

「なんでもたべちゃうゴンはその昔、火山の溶岩だとか、コバルトの岩石などを食べていたって言ってたじゃない。火山の溶岩には成分として鉄が含まれるし、コバルトは良く知られた超伝導磁石の原料だよ。つまり両方とも磁気を持っていたということさ。……もっとはっきりいえば磁石だったんだ」

「それで?」

 弘左衛門が先を促す。

「それが回転するブラックホールの磁場とちょうどうまく吊り合って、なんでもたべちゃうゴンの胃袋の中で安定化していたんだよ」

 男の子が説明する。

 すると――

「え、待ってくれよ。確かに翁からの通信で、ブラックホールに電荷があることわかったが、磁場があるとは言っていなかったはずじゃが……」

 と弘左衛門が首を捻る。

「そこのところが、どうも……」

「あ、そうか!」

 と男の子がうなずく。

「つまりね、うーんと、電荷の自転は円電流と同じっていうことなんだよ。電荷が回転すると、そこに磁場が生まれる。その説明でいいかい?」

 男の子がそう言い、弘左衛門をじっと見つめる。すると弘左衛門は男の子の説明がわかったのか、

「わかった、それで?」

 と先を促す。

「うん。じゃあ、ここから先は電磁石を例にして説明するよ。……釘にさ、銅線を巻いて電磁石を作ったとするでしょう。すると電流が左まわり|(反時計まわり)のとき、釘の上の方が磁石のN極になるよね。木ねじをドライバーで壁なんかに止めるときの締まる方向。それがN極。そして、なんでもたべちゃうゴンのお腹の中にあったミニ・ブラックホールの回転方向も、それと同じだったんだ。ここでもし電磁石の電池の向き|(電流の方向)を反対にしたとすると、そのとき電磁石のN極の向きが正反対に変わるでしょう」

「なるほど!」

 と男の子のその説明に弘左衛門が膝を打つ。

「つまりそれまで、なんでもたべちゃうゴンの胃壁の磁石と釣り合っていた|(電荷が回転することによって生じた)ブラックホールの磁場が、急に反対になって反発し合い、その結果として外に跳び出して行ったというわけじゃな」

 弘左衛門が納得して、そう呟く。

「そう。……そして、それで説明できることは、まだ他にもあるんだよ」

 と男の子が続ける。

「たとえばテレビの画面がチラついたのは、ブラックホールや、なんでもたべちゃうゴンの胃袋が作りだした強烈な磁場による電波障害のせいだし|(たとえば、今は液晶に置き換わり、めっきり数が少なくなったテレビのブラウン管に磁石を近づけると画面が乱れる)、前の日に降った流星雨は、その磁場が引き寄せた隕鉄|(主成分が鉄とニッケルからなる隕石のこと)が、地球の大気中で燃えたために起こったんだ!」


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