10 臨時国会
10 臨時国会
カスミガセキの官庁街も大混乱だ。臨時国会が召集され、各議員があわただしく国会議事堂に馳せ参じる……はずだったが。与党、野党ともに、その数は半数にも満たない。何故かといえば字宙大怪獣が進路を変え、自分たちがいる議員会館の方に向かってくるとわかったからだ。多くの議員たちがテンデン・バラバラに逃げ去ってしまう。残った骨のある議員たちも内心、実はビクビクしている。大怪獣進行のコースがわずかにそれ、マルノウチ方面に向かうとわかったときには、みんながみんなホッとする。ついで気を引き締め、何とか宇宙大怪獣をやっつける手段はないものかと智恵をしぼる。
「じつは、つい先ほど、アルシア国に軍事衛星の協力を求める連絡を入れました」
首相が言うと、にわかに場内が騒がしくなる。
「反対!」
「賛成!」
「反対!」
「反対!」
「反対!」
各議員たちが口々に叫ぶ。
「それでは、いずれ核攻撃が行われることなってしまいます!」
「何を寝ぼけたことをいっているんだ! この腰抜けが!」
「その事態だけは、なんとしても避けねばならん!」
さまざまな議論が交わされる。
けれども――
「だが他にわれわれに選択できる方法があるかね。陸上及び航空自衛隊は全滅だ! 海上自衛隊の保有するジェット機とて、おそらく手も足も出ないだろう。もはや、わが国には自国を護る手段が残っていない!」
悲痛にくれた口調で首相が発言したとき、与党、野党議員とも一瞬押し黙り、しばし沈黙が訪れる。
「むろん、最悪の事態にならないかぎり、核攻撃はするなとアルシア国には申し入れてある」
首相はいうが、その表情はいくぶん自信なさげだ。彼は内心、
(悪い時期に首相になったものだ……)
と思っている。が、しかし、
(この緊急事態を無事に乗り切れば、首相再選は確実だろう)
そんな目算も立てている。
「とにかく今は彼らの力に頼るしかない!」