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こいびと。  作者: サークルO.L. (尖角)
2/2

涙の訳

俺は6月21日、お前をレストランに招待した。



まず、席に座ると、君は微笑む。

そして、「懐かしいね」と一言。



前回、来た時から8年という月日が経った。











だから、確かに懐かしい。


だが、俺はそんな風には感じなかった。





俺はすでに、宣言された“10年”を生きた。


もう、きっと、いつ死んでもおかしくない。






だからなのか、お前といる一瞬一瞬が楽しくって、

そして、なんだか新しいことのように思えて仕方がない。



要は、俺等にとって、このレストランは2回目だけど、

今の俺にとっては、キラキラした経験に思えて仕方がない。



だから、俺にはそう思えなかった。



しかし、君はそんなことを考えもしないだろう。


だって、君はまだ俺の病気のことを知らないんだから……。











俺は、それを伝えるために「話がある」と切り出した。












病気のこと、結婚は出来ないということ、

だけど、俺はお前のことが好きで、一緒に暮らしたいということ。



俺は今まで話していなかった沢山のことを、初めてお前に話した。







すると、お前は俺が言い終えると、

微かに目に涙を浮かべながら笑って答えた。



「気にしないから」

「私、あなたの寿命のこととか気にしないから」


「だって、すでに10年以上経過してるんでしょ?」


「だったら、医者は嘘つきってことじゃん?」


「もしかしたら、あと10年……」

「いや、普通の人よりも長生きするかもしれないよ?」



「それに、例えあなたが明日死んだとしても、

 私達が今まで過ごしてきた日々が消えるわけじゃない」


「未来がどうなるかなんてことはわからないけれど、

 私は、あなたと過ごした事実を忘れることはしないよ?」



「だからさ、どうなってもいい」

「あなたが今、隣にいてくれれば、それでいい」


「それに、私もあなたが好きだから」



「だから、私も一緒に暮らしたい」

「むしろ、普通の暮らしをしようよ!」









「医者は嘘つきで、病気は治ってると思って、

 結婚して、子供作って、一緒に生きよう?」




「私、あなた以外の男の人なんてどうでもいいから」


「私には、あなた以外考えられないから」





「だから、一緒に暮らしてください……」










そう言って、頭を下げた。

























俺は嬉しくって、思わず泣いた。


確かに、お前の言う通り、医者は嘘つきなのかもしれない。






俺の病気なんて、とっくに治っているのかもしれない。






だから、俺は「そうだよな、ありがとう」と呟き、

涙を拭ってから、「食べようか」と飯を食べ始めた。





















































それから5年後、


俺は嫁と息子を残してこの世を去った。







































最後までお読みいただき、ありがとうございました。

例え、どんな終わりになろうとも、愛す人がいるのなら最後まで一緒に。

そういう思いで書きました。  少しでも伝わったなら幸いです^^

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