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Game  作者: りょく
3/5

記憶

痛みが増す頭痛で視界が薄れて・・俺はその場に倒れてしまった。


「なぁなぁ聞いてくれよ!!」

かなりのご機嫌でそう言うのが貴一と芳川雅人の2人。

芳川雅人よしかわまさとは、副部長で・・まぁパソコンとかゲームとかの属に言うオタク。

「ウルセーって・・」

H本を片手に持って、茶髪にネクタイをだらしなくゆるめ、ソファーに寝そべっているのが林田啓二はやしだけいじ

「ねぇ何の話??」

少し派手めメイクに短いスカートの松野世良まつのせらはいつもの軽いトーンで話に混じってくる。

そして俺を含めたこの5人がパソコン部だった。っと言っても俺の場合、部長の貴一に人数合わせで無理やり入部させられたんだけど。

「やっと手に入れたんだよー!!じゃーん!!」

貴一が手に持っていたのは、真っ黒な箱に入ったゲームソフト。タイトルも何も書いてない箱に貴一と芳川以外の俺たちは首を傾げる。

前から貴一が欲しがっていたゲームがあったのは知ってる。耳だこが出来るくらい話を聞かされたからだが・・・。

けど、そのゲームは曰く付きで、どこかのプログラマーが造ったらしく・・公には売り出していない。なのに最近このゲームが密かに人気を持っている。

「それって例のでしょ??ほんとに存在してたんだぁ・・」

「ってか、ほんとに面白いのかよ?」

俺はそんなにゲームをする方じゃないし、あまり興味が無い。

そんな俺たちの反応を見て貴一と芳川は、じゃあ見てろよ!っとソフトをパソコンに入れてしまう。

「あっ入れちゃった・・いいの?」

「説明書とか・・って入ってないし・・おい、貴一」文句を言う林田は無視なのか、2人は画面をじっと凝視する。

「これは何人でもプレー出来るんだよ」

次々に起動ページが開き、ログインページへと切り替わっていく。

芳川の名を最初に入れ、貴一、世良の3人を次に記入する。

「2人はどうする?」

俺は少しはどんなのか気にはなったが、自分がプレーするほどの興味は無く。

「俺はパス」

「俺もパス、先帰るわ」

林田はダルそうにそう言って部屋から出ていった。

結局3人がプレーする事となり、俺は取り敢えずどんなのかだけ見て帰ろかなぁっと部屋に残った。

「部長?パスワードって出てるよ?」

「あぁ、これで大丈夫」

貴一はすぐにキーボードで打ち込む。そうするとすぐに、画面は真っ黒になり次に白い文字が下から順に上ってくる。


『  ヨウコソ

   君達ヲ歓迎スル

   最初ニ・・・

   Gameノキャンセルハ出来ナイ・・

   ソシテ・・・

   Gameハ、勝者ガ決マルマデ続ケラレル・・

   君達ハ選バレタプレイヤーダ・・

   サァ創メルガイイ・・

   全テハココカラ始マルノダカラ・・・    』


「何これ?気持ち悪ぅ・・」

文字が出ると、黒い水の水面が動くように画面が波打つ。しばらくすると、画面はクリアになりゲームが始まったが・・。

「現代のRPG?」

プレーするキャラは自分で選ぶのでは無く、どうやらログインの際に自動的に登録されているようで、貴一達はもちろん学生で性別も決まっていた。しかも・・そのキャラは自分達と似ていて・・。

「何か・・気持ち悪くない?」

「そうか?面白そうじゃん」

「陽、今日はもう帰ろ?芳川君、また進み具合教えてね?じゃっ明日」

世良は気味悪がって半ば無理やりに俺を連れて部室を出る。

「陽は・・あのGameどう思う?」

「俺はあんまり詳しくないからなぁ・・」

「そっか・・・・あのね、何となくなんだけど」

世良は見た目派手で言葉も軽いが、人より感受性が強くいい女友達だ。

「あれ普通じゃ無い気がするの・・やばいものかも・・」

その時、俺はあまりその言葉を信じていなかった・・けれど世良の表情はどこかいつもと違うようなっと思う程度だった。

「・・お腹空いてない?一緒に何か食べに行こ?」

「あぁ」

「やった?もちろん陽のおごりでね」

「えっ?・・ったく」

「えへへ、ご馳走さま?」世良のいつもの様子にいつの間にかゲームの事を忘れていた。


何気ないいつもの日常の記憶・・。

なのに一瞬で視界が変わり、真っ暗な脳裏の中断片的に映像が見える。


「・・・助けて・・・」

「嫌!!来ないで・・・もうやだ!!」

「このGame・・は・・・・・・・・・・・・・」

「どうして・・こんな事に・・」

「・・陽・・お願い・・私を・・・・・・・・・・」

「ッ・・・・・・・・」

どれ位気を失っていたのだろう・・外は真っ暗なのに気づく。

まだガンガンと痛む頭を押さえながら周囲を伺う。

「倒れて・・たのか・・」

そうだ・・目覚めてから過去の事を忘れていた・・。もう少し思い出そうとしたがさっきの記憶以外、思い出そうとしても何故か思いだせなかった。頭の靄がかかっているようで目覚めてからスッキリしない。


「あら、こんな所に人がいるなんて」


月明かりの下に学生服を着た女が瓦礫の上に座っていた。

「怪我?それじゃこちらに来てみて下さい」

女は優しく微笑みながら招く。

「この湧き水は治癒力があるんですよ」

促されるまま、その湧き水に触れてみると確かに擦り傷などはほとんど治っていく。

「そう言えば自己紹介がまだでしたね、私は神宮寺祈じんぐうじいのりと言います・・もしよろしければこうして出会ったのも何かの縁・・あなたの名前も教えてくれませんか?」

神宮寺祈と名乗った女は、にっこりと微笑む。黒い髪を肩まで伸ばし、黒色のセラー服に紺色のリボンを結んだ学生服を着ている

「俺は・・神無陽」

「神無さん?ですか、あなたのグループは?」

「・・いや・・特には・・」

「・・なら私と一緒に来ませんか?」

「は?」

「私は神徒に属しています、神を思う心がある方なら誰でも歓迎ですよ」

神徒って貴一達が言ってた大きなグループの一つだな・・。

貴一に聞いた時はどんな奴らかと思ったけど・・・。

「答えを焦らしてしまいましたか・・?すみません・・」

「いや・・そう言うわけじゃ」

申し訳そうな表情をしたが、次の瞬間少しだけ表情が変わった。

「・・・少し周りが騒がしくなってきましたね・・私はここを離れます・・ではまた機会があれば」

「はぁ」

「面倒ごとに巻き込まれたくなかったら、早めにあなたも離れた方がいいですよ」

神宮寺がそう言うと同時に、上の方で瓦礫が崩れる音がした。

「!?」

「そこの動くな!!」

崩れた瓦礫を爆発かなんかで微塵になったと思うと、銃を持った者達に囲まれた・・。

「こんな所で1人で何をしている?」

さっきまでいた神宮寺の姿はすでに無く、自分1人が呆然とそこに立っていた。

銃を構えている人から見れば確かにおかしな光景・・。

「何をしていると聞いているんだ!!」

返答に困っていると、身体検査をされ何処かに連れて行かれることになった。やはり崩れかけたビルの中を通り、地下道を通る。

東京にこれだけの地下道があるなんて・・以前なら知ることも無かっただろう。

「ここに入ってろ」

と言われ、入らされた所は刑務所の牢屋の様な場所だった。ひんやりとした空気と、かび臭い臭いが漂っている・・。

「まさか・・牢屋に入る日が来るなんてな・・・」

こんな状況だけど、頭の中を整理するにはいい時間かもしれない。・・調べる事は沢山あるけど・・貴一が言ってたゲームソフトも引っ掛かる・・。

「はぁ・・・・」

目覚めてから今日で・・まだ7日位だもんなぁ・・。こうなる前は、ほんと退屈な様な毎日で、朝起きて、学校行って、貴一達と部活して・・帰って寝る・・。今考えるとどれだけそれが良かったか・・。


「・・・あの・・すいません・・」


体を揺さぶられる振動で気づくと、どうやらいつの間にか眠っていた。そして周りには数人の男と自分より少し幼い少年がいた。

「誰?」

「こことは違う場所からここに移されてたんです・・」

「君もあいつらに捕まって?」

後ろに座った男達に睨まれるが、横に座った少年は落ち込んだ表情で頷く。

「あのさ・・ここって何か知ってるか?」

「ここは鬼乱派の辺境地です・・」

「鬼乱・・・・」

「おいおい、この兄ちゃん何にも知らねぇのか?」

話を聞いていた男が口を挟んでくる。

「勢力の辺境地って言っても、鬼乱に捕まったら終わりだ・・」

「終わり?」

「兄ちゃんも俺も、良くて死ぬまで放置されるか、悪くて・・奴らに殺られるかだな」

馬鹿にした様な口調で話す男にも、恐怖の影が見える。

「あの・・その制服って桜咲高校ですか・・?」

「そうだけど」

「やっぱり・・あの松野・・松野世良って知っていますか?」

「世良?知ってるよ、同じパソ部だったし・・君こそ何で世良を?」

「あっ・・僕は松野春まつのはると言います、世良は姉なんです」

驚いた。こんな状況で知り合いに合うとは思わなかったし、世良に兄弟がいたのも初耳だ。

「世良に弟がいたなんて知らなかったな・・・」

松野春と名乗った少年は、確かによく見れば世良と目元などは似ているかな?っと思うが、世良とは違って真面目そうなタイプだ。

「姉さんを・・見ていませんか?」

見ていないと告げると春はしゅんとうなだれる。

「そうですか・・僕も高校の方へは行ってみたんですが・・」

「行ったって、どうなってた?」

「え・・学校周辺は見てみたんですけど校舎の方は崩れている部分が多くて中には入れなかったんです・・」

「そっか・・」

貴一も学校の事を言っていたし、入れなくても一度行ってみようと思った

「でも鬼乱に捕まるなんて・・・」

春がますます落ち込んでしまいどうしたもんかと考えていると、大きな音が鳴り響いた。

それは巨大な鉄扉が開くような音だった・・・。



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