第15話 帰り道(伝承の真実と異文化交流)
毎度応援ありがとうございます。
第2章のエピローグになります。
つむぎと別れた俺たちは、夕暮れの街をのんびりと歩いて帰宅していた。
「むむむ……むー?」
横を歩くリリーが、何か考え事をしながら唸る。
博物館を出た辺りから何度か繰り返すものだから、気になって声をかけてみた。
「リリー。どうかしたのか?」
「む? ああ、いえ。何でもない……ことはない、みたいな?」
「歯切れが悪いな。何か気になることでもあったか?」
「気になる……ああ、確かに。それかも!」
俺の言葉に合点がいった様子で手を叩くリリー。
どうやら、彼女の中に違和感があったらしく、その正体に思い至ったのだとか。
「博物館にあった大きな絵なんですけど……ほら、兄さんも見てた」
「俺も見てた絵……ああ、あれか」
言われて思い出したのは『千寿子と姫』伝承を描いた掛け軸だ。
複数の資料とともにコーナーとして分けられていて、特に大きな物だったから記憶にあった。
「あの絵、どこかで見た覚えがあったんですけど、どこで見たのか思い出したんです」
「へぇ……どこで見たんだ?」
確かリリーは、魔法の国の鏡を通じて俺たちの世界を覗いていたらしいし、その時にどこかで見たのかもしれないと、この時は思っていたのだが――。
「エターネーヴァ城です」
「へぇ、お城……お城!?」
――予想外の答えに、目玉が飛び出しそうなくらいに驚いた。
※ ※ ※
「あれ、私の大叔母様の事だと思うんです。サニーマリー大叔母様」
リリーの話を聞くことにゃ、千鶴子と姫の伝承に登場する姫とは、彼女の大叔母の事らしい。
「兄さん。千寿子と姫のお話について改めて教えてくれませんか?」
「ああ、いいぞ」
千寿子と姫。
それは、不思議ノ市の温泉にまつわる伝承。
「大昔、山の麓で炭焼きをしていた千寿子の元へ姫を名乗る人物が来訪し、そのまま同居生活を始め、姫から渡された宝石の価値を知らぬまま千寿子が放り投げた結果、空を飛ぶシラサギを打ち落とし、落ちた先で源泉を見つけたのが、後の不思議ノ温泉の始まりだったって話だな」
「やっぱり! それ、サニーマリー大叔母様が王家の試練を受けた時の話だわ! あ、です!」
そう言ってリリーが、魔法の国での有名な笑い話を1つ、教えてくれた。
「王家の試練を受けた大叔母様が、ホームステイ先で出会った女の子に魔法の国では高い価値のある霊石をあげたんですけど、その価値をわかってもらえない……どころかあっさりと捨てられちゃって。投げ捨てた先で鳥にぶつかって、落ちた鳥が“ケガを治したいよー”って願ったから、霊石が願いを叶えて温泉ができたんです。魔法の温泉」
「な……」
「当然、人間界に隠匿できないレベルで影響を残す魔法を発動させてしまった大叔母様は、王家の試練に失敗。魔法の国に強制送還されることになったんですけど、その時にホームステイ先の女の子も付いてきたらしくって。なんだかんだで長いこと友人として仲良く暮らしたんだとか。その時の失敗談は、宴会での定番だったそうですよ」
「なる、ほど……」
速報。
不思議ノ温泉、魔法の温泉だった。
「伝承でも、千寿子のその後は行方をくらましたってなってたけど、魔法の国に行ってたのか」
「結構なトラブルメーカーで、各地に逸話が残ってます。チーズーさん」
異世界人から明かされる、衝撃の事実。
だがそれは同時に、つむぎの研究を正しいと裏付ける貴重な話でもあって。
「今度はそれ、つむぎにも聞かせてやってくれるか?」
「えっ。……まぁ、兄さんがどうしてもっていうのなら、話してもいいと思いますけど?」
「どうしてもどうしても」
おねだりしながらよしよしと頭を撫でれば、リリーが「仕方ないですね」とふにゃふにゃになりながら言ってくれた。
ここではないどこかの住人。
魔法少女っていう存在についてはまだまだ勉強不足だが。
異なる文化との交流や、それを通じてわかる新しい事実ってのは、俺でも楽しいと感じられた。
(俺たちとは違う常識を持った存在って、そう考えるともっと身近に捉えていいのかもな)
魔法少女。
それは、思ったよりも近いところに、感じていいものなのかもしれなかった。
※ ※ ※
その後も、リリーからは色んな興味深い話を聞くことができた。
今回みたいな話は、掘り下げれば掘り下げるほどまだまだたくさんありそうで、話題も尽きない。
だからか。
「リリーと出会えてよかったよ」
そんな言葉が、俺の口から自然と零れ出た。
「えっ!? 本当!? んふふっ、そっかそっか。これはもうメロメロにするのも時間の問題ね……よし、よし!」
「???」
当のリリーからは、何やら悪だくみしているようなしていないような気配を感じつつ、歩みを進める。
と。
「あっ、陸人さーん!」
視線の先、こちらに気づいた小さな女の子が、声を張り上げ手を振って。
「ごめんね。また明日!」
一緒に帰っていたらしき金髪縦ロールの少女に別れを告げて、こちらに向かって駆けてくる。
夕日を浴びてきらきら光る銀色の後方お団子髪と、満面の笑顔が愛らしい。
その正体は。
「おかえりなさい、陸人さん。今帰りですか?」
「ただいま、みはりちゃん。そっちも今帰りかい?」
ご近所さんこと、星宮みはりちゃんだった。
踏み出すことでわかること。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
第2章、これにて完結です。
そして、今日までの投稿の反応から、本作の更新はいったんここまでとさせていただきたく思います。
ひとえに、私の実力不足です。
ここまで楽しんで読んでいただけた読者の皆様には大変申し訳ございません。続きは、何かあって本作が再評価されたら、とさせていただきたく思います。
正直、く、く、悔しいーーーー!! と叫びまわりたい状態ですが、それを力に変えて、よりたくさんの方に見てもらえるような作品を用意したいと思います。
よければ次作も応援していただけると幸いです。
本話の感想欄に、このようなお話が読みたいだとか書いてくださるのも歓迎です。
私の執筆傾向は、読者さんの心が動く姿が見たいという点に集約されますので、ポジティブな反応をいただけるのが一番嬉しいです。
なにとぞ、よろしくお願いします!
筆は折りません! 次はもっともっといい話を、書きます!
それではまた!




