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魔法少女ぜんぶのせ☆ ~マジカルハーレム、進行中!~  作者: 夏目八尋
第2章 魔法少女ものがたり論
12/15

第11話 同期(天才JS・魔法少女)

毎度応援ありがとうございます。

頑張りますのでますます応援よろしくお願いします!!


陸人とリリーが奥の部屋で出会う人物とは……!?

 貴重な郷土資料の宝庫だった調部博物館の、その奥。

 つむぎに指定された、その部屋は――。


「う、お……!?」


 ――さっきまでとは違った驚きを、俺の網膜(もうまく)に刻み込んできた。


 うずたかく積み上げられた資料、資料、資料。

 壁一面に並ぶ棚の中に押し込められた、中身の詰まった(かご)、籠、籠。

 テーブルの上にも、奥のデスクにも、そこかしこに物が置かれた空間。


「へぇ。なんだか、お城に住んでた薬師(くすし)の部屋みたいだわ」

「おぉー……」


 リリーの言葉も耳に入らないくらい圧倒的な、存在感。

 まさしくここは――研究者の城。


 ただし。



「ねぇねぇ、兄さん。あれはなに?」

「え? ああ、あれか。あれは……フィギュア、だな」

「あっちの大きな絵は?」

「あれはポスター」

「さっきからあそこのテレビでバチバチ流れてるのは?」

「薄紫の髪に黄色い衣装……かなり昔のアイドルアニメみたいだな」


 集められている資料のそのほとんど、すべて。

 郷土史とはかけ離れた、フリフリでキラキラな女の子たちに関する物たちで。


 部屋の異様な気配を警戒してかピトッと引っ付いてきたリリーを受け止めながら、俺はその言葉を呟く。



「魔法少女……って、やつだな」

「いかにも。ここにある資料の多くは、日ノ本が誇るビッグコンテンツ“魔法少女モノ”作品にまつわる品々だ」

「「!?」」


 声がした方を見る。

 その正体を目にした時、俺の視線はゆっくりと下へと修正された。



「ようこそ。私の研究室へ」


 幼い少女が立っていた。

 暗めの(だいだい)色の髪を二つ結びにして前に垂らした、白衣をまとったメガネの女の子。

 腰に手を当て胸を張り、こちらをまっすぐに見つめる瞳の色はライトブラウン。

 小さいながらも理知的な気配をまとった彼女は、確かにここの主と言われて納得がいく。


 だが。


「あーっと、俺は御伽守陸人。調部つむぎって人に呼ばれてここに来たんだが……キミは」


 彼女の妹さんか何か?

 そう聞こうとする前に、リリーに腕を引っ張られ、俺は言葉を遮られた。



「アナタ」


 リリーの深い青の瞳が少女を射抜き、告げる。


()()()()()()()()()

「え?」


 強い確信を伴って吐き出された言葉を、すぐには理解できなかった。

 そして理解する間もなく、状況は進む。



「さすがはプリンセス。すぐに見抜いてしまうんだね」


 少女が白衣のポケットから、一本の万年筆を取り出した。

 かなりの値打ち物に見えるそれを少女は無造作に振り回し、中空にそれを走らせる。


 すると。


「なっ!?」


 ペンの先から光のラインが引かれ、ありえないことに、その場に留まり続け文字になる。



grown‐up(大人になぁれ)



 流暢な筆記体で描かれた英文が完成すると同時。

 目の前の小さな少女がカッと眩い輝きに包まれて。


「っ! ……ぁっ?!」


 思わず目を閉じて、再び開くまでの刹那の時間。

 それだけで、すべての答えは与えられた。



「改めて……ようこそ、私の研究室へ! こここそが真の『ふでん研』……不思議ノ伝承及び魔法少女研究室の本拠地(ホーム)だ! 実に、ワンダフルだろう!?」



 俺の目の前に現れた、白衣のギャル。

 鮮やかなオレンジ髪のサイドテールを揺らし、たわわなナイスバディを突き出して。

 まつげバチバチ、ネイルバチバチ、伊達のメガネを輝かす――。


「……つむぎ」

「うむ!」


 ――大学の同期“調部つむぎ”が、そこにいた。



      ※      ※      ※



 調部紡(しらべつむぎ)は、一言でいえば“天才”だった。

 物心つく前からその類まれなる知能をいかんなく発揮し、父母の所属する研究チームによる世界を股にかけた英才教育も相まって、幼くして研究者としての気質“好奇心”に目覚めていた。

 このまま自分もチームに所属し、知識を磨き、世界中の謎に挑み、その先のワンダフルな景色を探し求めて生きていくのだと疑わなかった。


 だが、そうはならなかった。


 紡が小学校に入学できる年を迎えると、研究チームは彼女を父の実家に残し旅立ってしまった。

 彼女がいくら泣いて喚いて引き留めても、その決定は覆らなかった。


『キミはまだ“子ども”だから』


 それがチームの出した結論で、父母の望みだった。



 父の実家――調部家では紡の祖父母が優しく世話を焼いてくれたが、彼女の心の穴は埋められなかった。

 彼女の持つ高い知能は学校教育に対しても裏目となり、遂には家に引きこもってしまう。


 ……そんな彼女を変えたのが、博物館の奥の部屋(ここ)だった。


 この場所は以前、彼女の父親が研究室として使っていた。

 調べていたのは不思議ノ市の郷土史、とりわけその特異性について。


“不思議ノ市には、女性が活躍する伝承が多く存在する”


 他の地域とは明らかに違う特徴に、学生時分の彼女の父親は熱中していたという。



 それからというもの、紡は父が残した資料を眺め、物思いにふける日々を過ごす。

 父の残り香を感じながら、同時に未完成の研究テーマに対して興味を(くす)ぶらせていた。


 そしてそんな日々を続けたある日、小学2年生となった彼女は“それ”に気がついた。


“それ”は、暇潰しに流し見していた、自分と同じ年齢の少女向けに作られたテレビ番組。

“それ”は、超常の力を使い、常識外れの出来事を巻き起こす不思議な女の子たちの物語。

“それ”は、不思議ノ市に数多く残された“女性活躍伝承”と、多くの類似点を持っている。

“それ”は、“魔法少女モノ”と呼ばれ、多くの人々に愛され親しまれている。


 郷土史に残る特異な“女性活躍伝承”と、人々を魅了する“魔法少女の物語”。


 彼女の中で、点と点が、繋がった。


 それが彼女の――調部紡(しらべつむぎ)の今に至るまでの研究テーマとなったのである。



      ※      ※      ※



「――と、いうワケで。私は不思議ノ市の特異な伝承群“女性活躍伝承”を調べつつ、同時に日ノ本で愛され続けている“魔法少女モノ”……とりわけ公共性の高いアニメーション作品を中心に造形を深め、()()()()()()()()その細かな類似点や違いなどを研究する日々を重ねているということなのさ。ぱちぱちぱちー」

「……つ・ま・り! どういうワケよ。さっぱりだわっ!!」

「どうどう、リリー。いい子いい子」


 今にもつむぎに飛び掛かりそうなリリーの頭を撫でてなだめて、俺はコーヒーを口にする。

 長い話を聞く間にリクエストに応え、みんなにも紅茶やコーヒーを淹れてある。


「ふにゃぁ、兄さんったら……じゃない! つむぎ! ワタシが知りたいのはどうしてアナタが魔法を使えるのかってところなの! アナタの身の上話になんて全然これっぽっちも興味ないんだから!」

「はっはっは。魔法が使えるルーツだなんて、そこは別にどうでもよくないかい?」

「よくないワケないでしょ!? アナタのそれ、魔法界の魔法とは異質なのよ!」

「へぇ? どう異質なのかぜひとも聞かせてもらいたいね。あと、どうして助手くんが兄さんなのかについても詳しく」


 大騒ぎするリリーに対し、つむぎは終始冷静だ。

 むしろ、言葉の端々から漏れる異世界の話をもっと聞き出そうとしている余裕すらある。


 とはいえ。とはいえ、だ。



「つむぎ。俺も気になるな。っていうか、それが聞きたくてMAGIで連絡したワケだし」


 当初の目的は、彼女が魔法を使っていたという事実の確認だったから。

 その由来ってのには俺も興味津々なワケで。


「話し辛いことじゃなければ、教えてくれないか?」

「……助手くん」


 俺の口からも頼めば、彼女はほんのわずかに眉をしかめて。


「……ふぅー、しかたないね。大して面白い話でもないから、もったいつけていただけなんだよ」


 最後は降参と白衣の袖に隠れたままの両手を挙げて、聞かせてくれた。



「去年のことだ。研究に行き詰っていた私の元に、コレが突如として送られてきたんだ」


 そう言ってつむぎが、さっき光のラインを引いた万年筆を掲げる。

 蓋の部分になにか文字のようなものが書いてあるのが見えたが、俺には読めなかった。


「差出人の名前は『マーリン』。まず間違いなく偽名……と、言いたいが、リリーくんが居る以上もしかしたら本当に円卓騎士物語のキングメーカーが実在するかもしれないと今ちょっと思ってる」

「それ、贈り物だったのか」

「そうとも。魔法少女モノにおいて、贈られた品で力を得る物語は数多く存在している。実にありきたりなパターンさ。最初は私も半信半疑だったが、試してみたらご覧の通り、想像していた大人の姿に大変身! ……と、いった次第さ」


 詳しくないが、よくあることらしい。

 だが、それを聞いた俺の胸には、心配の二文字が浮かんだ。



「危険は……」

「あるかもしれない。だが、私がこの力を使うことに迷いはない」


 想定されていた返しだったんだろう。

 予定調和めいて言葉を被せたつむぎの瞳は、力強い決意に満ちていて。


「大人でなければ、私の研究はこれ以上先へは進めない。子どもという体は、この世界で自由を掴むにはあまりにも不便だ」

「つむぎ……」


 続く言葉にも、俺自身思い当たる節がいくつも浮かんでしまえば、口を閉ざすしかなかった。



「なるほど。そのマーリンってのが、私の知らない魔法を使う魔法使いってワケね」


 そこに、リリーの声が差し込まれる。


「ってことは、アナタ自体はただ力を借りてるだけの“偽物”ってことじゃない」

「な、こらリリー!」


 あっけらかんと言い放つには鋭利に過ぎる言葉を咎めようとして。

 けれど。



「あっはっは!! ワーーーーーンダフルッッ!!」



 それは同期の大笑いに止められた。



「そう! その通りなんだ! 私は偽物!! この魔法の力は借り物でしかない!!」

「つむぎ?」


 パンパンと派手に手を叩き笑い続けるつむぎが、心底おかしそうにひーひー肩を震わせて、それでも言葉を紡いでいく。


「だから私は、本物に会いたかった。そして、会うことができた! 実にワンダフルだ!」


 彼女の視線は、真っ直ぐにリリーを見つめている。



「本当に、会えて嬉しいよ。本物の魔法使い……いや、私以外の初めての“魔法少女”!」


 笑いを堪えた後に向ける、慈しみすら感じる微笑みで。


「キミは私の元に現れた希望だ。私の仮説を立証するための、大事な大事なニューファクターだ!」

「え、わっ、ちょ! なに抱き着いてひゃん! ちょま! ま! 兄さん! なんでそんな生暖かい目で!! ふひゃあ!? どこ触って、にいさ、兄゛ざ~~~~~~ん゛っっ!!!」


 心の底から歓迎しているとわかる、真っ直ぐな言葉に。



(やっぱり……これが、つむぎだな)


 俺は、どんな姿であっても変わらない、彼女の本質のようなものを見た気がした。


 調部つむぎは生粋の、そして、筋金入りの“研究家”なんだ、と。

白衣ギャル大学生にして天才JS美少女。その正体は、研究家。


応援、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!

ぜひぜひよろしくお願いします!!

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