第09話 みんな魔法少女だった件
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第1章のエピローグ的なお話になります。
自室で寝る前のストレッチをしながら、俺は今日の出来事を思い返す。
(同期を初めて家に招いたら、見知らぬ女の子が父さんをバグらせてた。それを見た同期が暴走して、女の子が魔法を使って葉子を動けるようにした。そうしたら葉子が暴走して大暴れしたから止めて、捕まって……ご近所さんが飛んできて、なんやかんやあって全部が丸く収まった)
思い返す途中で頭が痛くなってきたから後半をキャンセルする。
おおよそ現実的じゃない状況の連続で、俺の脳はそれらを理解するのを拒絶した。
「でも、現実だったんだよ、なぁっ!」
ハの字に開いた両足の真ん中で、上半身をゆっくり倒して床にペタンと押しつける。
風呂上がりの柔らかい体をフルに使ってほぐしながら、同時に思考の海へと再び身を沈める。
(魔法少女なんてのが、本当に存在するなんてなぁ)
不思議なこともあるもんだ。
しかも、片や魔法の国のプリンセスで、片や黒猫のお供を連れたご近所さんだ。
世の中狭いというか広いというか……不思議も不思議、不思議ノ市(地元・物語の舞台)だ。
「そして今。んっ。数部屋先の客間に、魔法の国のプリンセスがいらっしゃる……ふぅー」
俺の居る2階は、俺の個室と倉庫を除いて全部が客間になっている。
その1室をリリーに預けて、仮のお宿にしてもらったのが1時間ほど前の話だ。
「コーヒー牛乳に大興奮だったし、あの様子ならそろそろスイッチも切れて寝ちゃってるだろうな」
聞く限り、初めての人間界。
その上で今回の大騒動だ、きっと見えない疲労も溜まってることだろう。
普段からこまめにベッドメイクしている我が家のフカフカ布団で、ぜひともぐっすり休んでいただきたいところだ。
「……さて、明日以降が正念場だな」
ストレッチを終え、端末でSNSアプリを開きメッセージのやり取りをしつつ、考えを進める。
リリーという存在を、どう扱うか。
(魔法の国のプリンセスって立場が悩ましいな。常識外の存在を表立って貴賓として扱うワケにはいかないが、かといって完全に庶民に合わせろって言ってできるとは思えない)
当人からも“自分のことは家族みたいな気安さで扱って欲しい”って要望があった。
可能な限り叶えてあげたいし、ホームステイにやってきた子扱いくらいがちょうどいいだろうか。
(他に思いつく問題としては父さんたちへの言い訳だが、これはもう、そういう立場だって魔法を使ってもらうしかないんだろうな)
有識者の同期曰く、
“稀人族支配型の魔法少女は、自らのルールを押し通すことに長けている”
らしいし。
「なんにせよ、しっかりと明日リリーと話し合って、いい感じにまとめないとな……ふああ」
体が睡眠を求めている。
俺は魔女帽がアイコンのSNSアプリを閉じて端末を放り、ベッドに倒れこむ。
ふわふわのシーツに包まれて、なめらかに眠りへと誘われていく。
(……母さん。世の中には、こーんなトンチキ極まる縁も、あるんだな)
まどろみの中。
母さんが面白そうに笑っている姿を夢に見た。
これがまだ、良縁なのか悪縁なのか、俺には判断できないけれど。
「……面白い奇縁なのは、間違いない、な」
自分の中の何かが大きく書き換わっていくのを感じる。
けれども俺は、その感覚を嫌とは思わず受け入れようとしていた。
まるで、世界がこうであることを昔から知っていたかのように。
いや、違う。
そもそも、だ。
(世界ってのは、不思議に満ちていると……いつから思わなくなった、の、か……)
……そんな思考を最後に。
俺の意識は深い深い眠りの闇に溶け込んでいく。
そして朝が来て、目覚めの時に引き上げられた……その瞬間。
「う゛あ゛あ゛~~~~~!! ごべんなざーーーーい゛!!」
「……んぇ!?」
俺の上に、わんわん泣きじゃくるムラサキプリンセスウミウシが、べちょべちょと覆い被さっていた。
※ ※ ※
「おはよう、陸人。今日もリリーと兄妹仲良しさんだね」
「……なるほど」
リリーに引っ張り起こされ連れ出された先、ダイニングにそれは居た。
昨日に比べて落ち着いてこそいるが、それは確かに、俺たちへの認知をバグらせていた。
「説明は、してもらえるんだよな?」
「たぶん……“記憶の定着”が起こったんだと思う」
「記憶の定着?」
ダイニングでこっちが用意したトーストを頬張る父さんを遠目に気にしつつ、俺たちは二人、リビングのソファに腰かけ顔を寄せ合いひそひそと話をする。
それを仲いいねぇって目で温かく見守られてるのは、ちょっと小っ恥ずかしいが。
「偽りの記憶でも、本人がそれを強く信じたり意識した状態で深い集中を重ねると、本当の記憶として定着しちゃうことがあるの」
「深い集中……あっ」
思い当たる節は、ある。
昨夜の父さんはアトリエにこもって……きっと、絵を描いていた。
葉子の暴走とかは全然覚えてなかったってご近所さんからは聞いてたが……。
「……強いインスピレーションがあったって言ってたもんな」
「本来なら一日遅れたくらいじゃ全然修正できるはずだったんだけど、ああなったらもう、しばらくは様子を見ないと無理矢理解除するのは危なくて」
「害があるのか?」
「記憶が消えちゃったり、また……その、アレっぽくなったり」
「あぁ……あぁ……」
アレ、で通じる昨日の父の醜態。
世間じゃ落ち着いた儚げな優男として通っているイメージが一瞬で崩壊する、アレ☆
「アレは、ヤバいな」
「うう……こうなる可能性もあったのに、なんでワタシこんな、ベッドに横になったらもう朝で」
「うちのベッドがフカフカですまない」
様々な不可抗力の果てに、こうなってしまったらしい。
これはもう、不幸な事故だと断じていいだろう。
「リリーのせいじゃないよ。こうなったらもう、対処していくしかない」
「対処……」
「教えてくれ。俺はどうしたらいい?」
昨日の入浴剤のいい香りをさせる姫様に、対策を尋ねる。
餅は餅屋。
超常への対処は専門家に聞くに限る。
「あー、えっとー……」
「リリー?」
その専門家様は、なにやらそわそわキョドキョドと、恥ずかしそうに身を揺らしていた。
そして、ようやくその口から零れ出た対処法は――。
「……今日からしばらく、ワタシの兄になってください!」
「わかったこれからよろしくな妹よ」
「はやっ!?」
――あまりにも予想通りだったから、俺は即座に対応した。
「え、いいの? あれ、こんな、本当になんで、いくらなんでも都合が良すぎ……ええ?」
なにやらリリーの中で受け入れ難いことがあるようだったが。
「ごめんなリリー。俺の大事な家族のため、諦めて俺の家族になってくれ」
「!?!?!? あ、あ、え、ええ! そうね! 大事だから、しかたないものね! ねっ! お兄さ……兄さんっ!」
こっちからもお願いすることで、どうにか吞み込んでもらえたらしかった。
まるで何度もそう呼ぶように練習してきたかのように自然に兄扱いしてくれて、この調子なら父さんの記憶の混乱もまず起きなさそうだ。
ところどころでポンが見えても、やはり彼女はプリンセス。
根っこの部分に、とても頼りになる芯の強さを持っている。
「ありがとう! リリー! キミにとってのいい兄になれるよう、俺も頑張るからな!」
「~~~っ!!」
「ふふ。僕たちの子供は仲良しさんだよ、冥」
……こうして、思わぬ紆余曲折の果て。
妹(妹ではない)は、妹(部分的にそう)になった。
「あ、そうそう。王家の試練も手伝うよ。なんたって、兄さんだからな!」
「ええ~~~!?!?」
やると決めたからには兄として、最善を尽くすぞ!
※ ※ ※
「……ふぅ。朝から騒がしくしちゃったな。さすがにこれは、連絡しておかないとだ」
話もまとまり、なぜかへにゃへにゃに溶けたリリーをさておいて、俺は端末を起動する。
開くアプリは昨晩と同じ、魔女帽アイコンのSNS『MAGI』だ。
昨日の騒動のあと必要だろうからとアドレスを交換し、グループを作成しておいたのである。
「にしても、魔法少女一人と絡むだけでこれだからなぁ。もう一人の魔法少女、みはりちゃんの事情も聞いたら、もっと話が大きくなりそうだ。なんたって、魔法少女二人分だし」
リリーだけ、一人だけとの縁ならまだしも。
俺にはもう一人、魔法少女との縁があるワケで。
それはとっても不思議な――。
「三人よ?」
「え?」
不思議な――。
「兄さんのダイガクノドウキ……調部つむぎって人。あれ、魔法使ってるわよ?」
「…………えっ?」
――魔法少女との縁は。
「……マジ?」
「マジよ」
どうやら、まだ始まったばかりのようだった。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
第1章、詰め込める夢を詰め込みましたが、楽しんでいただけたでしょうか?
ウルトラマン並みに長い歴史を持つ魔法少女モノ。
描きたいこともたくさんで、ラブコメわちゃわちゃしつつ、いろんな角度でぶち込んでいけたらと思っています。ですので!
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次章は天才ギャル白衣ことつむぎちゃんの章です。ここからは隔日投稿となります。
続けて楽しんでいただけたら幸いです! よろしくお願いします!




