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第8話 平穏に暮らしたい魔王、盗賊団を追っ払う。

なんということだろう、魔王達が街に遊びに行ってたまたま甘味処の店で聞いた馬車を襲っているという盗賊団と遭遇したのだ。


「さぁ、運転手も客どもさっさと馬車から降りろ!」

「人生最悪の日だ…」

「怖いよ、お母さん…」

「大丈夫、大丈夫だからね?」

「ボク達の新婚生活も短かったね…?」

「そうね、私達、まだ結婚したばかりなのに…」

「まさか本当に盗賊団に馬車が襲われるとはな…?」

「どうしますか…?」

「暗い顔しなくてもいいっすよ、こんな盗賊共、あたいだけでも簡単にボコボコに出来ますから。」

「そっか、チズさんなら!」 

「まっ待て、少し様子を見た方がいいだろう、我々があまり目立ってしまっては勇者パーティーから生きてるとバレる可能性が上がる。」

「そっそうっすかね?」

「どうでしょう…?」


魔王達は馬車の運転手に乗っていたほかの客達と一緒に縄で縛られた。


「さて、持ってる金品は全て頂くとして、奴隷として売れそうな奴を選別しなくちゃな?まずは、おっ!そこの姉ちゃん!まずはおまえだ!」

「あたいっすか?」

「超ボインで美人だからな、おまえは高く売れるぜ?」

「グヘヘ、そうだよな、お頭。」

「こいつは上玉だぜ。」

〈やっぱり。〉


チズ以外の全員が納得してしまった。


「それか俺の愛人にしてやってもいいんだぜ?」

「結構っす。」

「お頭の誘いを断るだと!」

「なんて肝の座った女だ!」

「ケッ、可愛げはねぇな、次はそこの姉ちゃんだ。」

「わっ私ですか!?」

「あの姉ちゃんには負けるが胸がデカくて綺麗だからな。」

「チズさんには負ける…」


リリアンは本気で落ち込んでいた。


「へっへ。」

「くっ悔しい…」

「全くこんな時に張り合うやつがいるか…?」

「そして次はおまえだ。」

「いや!私はダーリンから離れたくない!」

「ボクもだよ!ハニー!」

「黙りやがれ!!」

〈ひぃっ!〉

「次イチャつきやがったら容赦なくぶち殺すからな!わかったな!」

〈すみません…〉

「あとはおまえとおまえだ。」


最後に選ばれたのは魔王とお母さんに抱きつく男の子だった。


「我か?」

「ぼっボクも…?」

「ガキは女だろうが男だろうが高く売れるからな。」

「うわぁーん、やだぁー!」

「泣くんじゃねぇ!」

「黙れ、クソガキ!」

「泣いちゃ駄目よ。」

「うっう…」

「相手は子供だぞ?泣くなという方が無理があるだろう?」

「あん?」

「誰に向かって言ってんだ、こら!」

「ぶふっ!」

〈なっ!?〉


魔王(少女姿)は盗賊の下っ端に頬をぶたれた!


「おいおい、こんなガキでも大事な商品なんだぞ?あまり傷つけるなよ?」

「すみやせん!親分!俺、生意気なガキが嫌いでつい!」

「まぁ、わからねぇでもないけどな。」

〈魔王様をぶった、魔王様をぶった…〉


それにリリアンとチズの怒りが爆発寸前になった。


「落ち着け、二人とも。」

〈でっでも…?〉

「我は平気だ。」

「お嬢ちゃん、逆らうと痛い目に合うっていい勉強が出来たろう?」

「ただの人間にぶたれたぐらいで痛いわけあるか。」

「てめえ!」

「好きに吠えさせておけ、今俺が言った奴らは一括りに縛りつけて馬車に乗せろ。」

〈へい!〉


魔王達は馬車に乗せられた。


「全員乗せました!」

「じゃあ、とっと出発するぞ、サツが来ても困るからな?」

「わかってやすよ。」

「ハニーはどうなるんですか!」

「お母さんも!」

「殺すに決まってるだろ?」

「ダーリンを殺…あっ…」


女の人が気絶した。

 

「そんな〜!いやだ〜!」

「泣くな、そんなことはさせん。」

「えっ…?」

「リリアン、チズ、すまぬ、やはり我、怒りの限界みたいだ、勇者パーティーにバレる恐れもあるが暴れてもいいか?」

「あたいは最初からそのつもりっす!」

「私も微力ながら戦います!」

「ふっ、流石は我の家来だ。」

「うぇーん!」

「だから泣かなくていいと言っているだろう?」

「ボクじゃないよ…?」

「じゃあ、今のは?」


盗賊団は残った客を殺そうとしていた。


「まずはおまえだ!」

「ハニ〜!ハニ〜!」

「その愛しのハニーにお別れの言葉があれば伝えてやるぜ?」

「ハニ〜!あの世に行っても愛してるよ〜!」

「くたばる最後までくさいセリフ言いやがって!あの世で精々見守ってな!」

「ぐっ!」

「デーモン・キング・キック!!」

「ぶほぉっ!!」

「へっ…?」


魔王(少女姿)の黒い炎を纏ったキックが男の客を殺そうとしていた盗賊の下っ端の背中に見事にヒット!吹っ飛ばして木に激突させた!


「ぶってくれたお返しだ、10倍返しって所かな?」

「てってめえはさっきのガキ!?」

「今のはおまえがやったってのか!」

「ああ、そうだが。」

〈嘘だろ!?〉


盗賊団の親分も下っ端も全員が驚いていた。


「というか縛られてたはずだ!」

「あんな縄、簡単に引きちぎれる。」

「馬車にいた見張りの子分達はどうした!」

「みんな、とっくにおねんねしてるぞ?我の家来、いや、お姉ちゃんが倒してな?」


魔王の言う通り、馬車を見張っていた盗賊の下っ端の全員がチズによってKOされていた。


「嘘だろ…?」

「ありえねぇ…?」

「あとは親分だっていうあんたと子分の五人だけのようだな?」

「てってめえがどんなに強いガキだろうが、所詮はガキだ!全員でかかれば倒せる!行くぞ!」

〈へい!〉

「バカめ、魔力が1%しかなくてもきさまらみたいな雑魚なら片手で十分だ。」


全員でかかってきたが、少女姿をしているとはいえ相手は魔王、簡単に蹴散らした。


〈グヘッ…〉

「つまらん、戦いだった。」

〈かっかっこいい…〉

「おい、男と女、今見たことは絶対に口外するなよ?いいな?」

〈はっはい!〉

「ならばよい。おい、盗賊の親分とかいう奴、起きろ!」


魔王はボコボコにした盗賊の親分を起こすためにペシペシ頬を叩いた!


「いてて!」

「起きたな、きさまに聞きたいことがある、馬車に乗せている赤ん坊はなんだ?ちゃんと答えないともっとボコボコにするぞ?」

「あっあれは!ここに来る前に襲った田舎の村で手に入れたヴァンパイアの娘だ!」

「やはりそうだったか…」


‐馬車にて‐


「オギャ〜!オギャ〜!」

「ほら、ほら、泣かないで!いないないばぁ!」

「きゃはは!」

「笑ったね。」

「可愛いです♡」


馬車にいたのはまだ1歳未満の赤ん坊の女の子だった。


「なぜあの赤ん坊がヴァンパイアだとわかったのだ?」

「村の奴らを脅したら答えたんだよ!あのガキは半年ちょっと前にトーカの街の近くの森で母親だと名乗る女から引き取ってほしいと頼まれたんだってな!」

「そうか、メアリーが。」

「もういいだろう?解放してくれよ?」

「駄目だ、きさまらを街の警察に引き渡してもらう。」

「そっそんな!!」


魔王達は蹴散らした盗賊団達を一括りに縄で縛って馬車に運び入れて、その後のことを運転手と客達に任せて退散した。もちろん、ヴァンパイアの赤ん坊を連れてだ。


「まさか歩きで村に帰ることになるとは思いませんでしたね。」

「仕方あるまい、あのまま一緒に捕まえた盗賊団を街まで運んだりしたらいよいよ我々が目立ってしまうだろう、我慢だ。」

「はーい。でも魔王様が人間を助けようとするなんて思いませんでしたよ。」

「だっ誰が人間風情を助けたか!我は今どれだけ戦えるか確かめただけだ!」

「ふっふ、素直じゃないな。」

「それにしても、ヴァンパイアのメアリーさんが娘を人間の村に引き取ってもらってたとは思わなかったっすね。」

「きっと娘だけでも助けたかったのだろうな…」


魔王はリリアンの背中におんぶされながら眠る幼い赤ん坊を切ない表情で見つめた。


「どうするんですか?この子?」

「我に最後まで尽くしてくれた家来の娘なんだ、育てるに決まってるだろう。」

「やっぱり魔王様優しくなりましたね。」

「なっなんだよ。」

「いいえ、素敵だなと思っただけです。」

「ふっふん、いちいち言葉にせんでいい…」

「魔王様、照れてるっすね。」

「チズまで!全く尊敬が足りない家来達だ。」


魔王は照れながら、心の中で誓ったこの家来の娘は必ず育て上げると。



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