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第5話 平穏に暮らしたい魔王、家来だったミノタウロス娘と再会する。

ジャイアントを追っ払ったと勘違いされて魔王(少女姿)が村で英雄扱いをされて5日後、魔王はいつものようにポーション屋の売り子の仕事をして昼飯を食べたら、家来で同居人だけど雇い主でもあるバフォメットのリリアンのポーション作りに必要な素材採集のお手伝いを頼まれた。(最初は断ったが大好物の餡子入りお饅頭の次に好きなシュークリームもおやつに出すと言われ手伝うことにした。)


「見つけたぞ、ネムケナシ草。」

「はーい。これで必要な素材は採集出来ましたよ。」

「疲れたぞ、仕事終わりにこき使われてるから尚更だな…」


魔王は肩を鳴らしながら愚痴った。


「本当に助かりましたよ。魔王様、ありがとうございます。」

「ふっふん、お礼などいらんわ。その代わりに約束だからな?三時のおやつにはシュークリームもつけるの?」

「わかってますよ。」


二人は薬草がたんまり入った籠を背負って、村に戻ろうともと来た道を歩いた。


「それにしても意外でした。魔王様がシュークリームが好きなんて。」

「魔界にいた頃から好きだったぞ?」

「そうなんですか?」

「魔界にいた頃によく幹部だったチズが作ってくれたのだ。」

「ああ、魔王様がヒヨリ国を支配させていた幹部でミノタウロスのチズさんのことですね。私も城が健在だった頃に何度かお見かけしたことがあります。」

「奴は我の家来の中でも三本の指に入るくらい強かったな。」

「知ってます。だから人間界に来て最初に奪った国であるヒヨリ国の支配を任せたんですよね。」

「それだけではない、我への忠誠心が強かったのもある。今のお主よりもな?」

「ひどい〜!私だって魔王様への忠誠心なら負けてませんよ〜!」

「手伝いさせておいて、どの口が言うんだか。」

「むぅぅ、そんな意地悪言うんだったら、シュークリームをおやつに出すのやめようかなー。」

「なっ!それは卑怯だぞ!」

「だってー。」


『ううっ…』


会話中に茂みの方からうめき声のようなものが聞こえた。


「今の何でしょう…?」

「また変な魔物とかじゃないだろうな?」

「ちょっと魔王様!」


茂みを抜けるとそれこそさっき話していたミノタウロス娘、チズが倒れていたのだ!


「きさまはチズではないか!」

「なんでこんな場所で倒れて!」

「どうして人間が…あたいの名前を…ぐっ…」

「しっかりしてください!」

「家に運ぶのだ!急げ!」


家に運んだら倒れていた原因がわかった、お腹の空きすぎだったらしい。おやつに食べるはずだった餡子入りお饅頭を出してあげるとペロリとたいらげた。


「食ったっす、食ったっす。」

「ゔうっ、全部食いよった…」

「まぁまぁ。」


涙ぐむ魔王をリリアンが慰めた。


「んで、魔物であるあたいに施して何が目的っすか?まさか善意でやりましたとは言わないっすよね?それにどうしてあたいの名前を知ってるっすか?」

「あれっ?気づいてませんか?」

「ハハッ、さっきの饅頭に毒でも入れてたっすか?残念だったっすね、あたいは人間が用意できる程度の毒じゃくたばったりなんか。」

「いや、そうじゃなくて。」

「じゃなんすか?」

「私もあなたと同じ魔物ですよ。」


リリアンは頭に本来の角を出現させた。


「なるほど、人間になりすましてたってわけっすか。」

「バフォメットのリリアンです、魔王様の城では料理番をしてました、ご存知ありません?」

「全然、知らねっす。」

「ガクッ、そうですか。」

「ならもしかしてそのチビガキも魔物っすか?」

「ちっチビガキだと!」

「口を慎んでください!この方こそ私達の主で偉大な魔界の王であらせられる魔王様本人なんですよ!」

「おまえが言うか、おまえが…?」

「ダハハッ、もっとマシな嘘いてほしいっす、こんなチビガキが魔王様なわけないっすよ。」

「本当ですってば!」

「仕方ない、証拠を見せてやる。」


魔王は人間の少女姿のまま頭に角を出した。


「その特徴ある角は紛れもない!魔王様の角っす!」

「だからそう言っているだろう、我は魔王だ。」

「申しわけありませんっす〜!!」


ミノタウロスのチズはさっきの生意気な態度から一変、魔王とわかるや素早い動きで土下座して詫びた!


「綺麗な土下座ですね…?」

「わかればよい、頭を上げろ。」

「えっ!許してくださるんっすか!」

「そうだか?」

「間違えたおしおきに裸吊りにされてムチで叩かれると思ってたっすよ…?」

「我、そんなことしてたっけ?」

「あっいや、イメージっす。」

「確かに昔の怖い魔王様だったらそういうイメージありましたね、失敗したらおしおきされる的な。」

「そんなもんか?」

「ですが、魔王様?なぜそんな人間の娘の姿になって?」

「えっと、色々とわけがあってだな!」

「訳とは?」

「そっそれは…」


魔王は言い出しづらいというか言いたくなかった。


「それは無くなった魔力が全回復する100年まで勇者パーティーに生きていることを知られないようにするためです。」

「おっおい!」

「魔力が無くなった…?」

「じっ実はな…」


観念した魔王は勇者パーティーに倒された後から現在に至るまでを包み隠さず全て話した。


「それで魔力が回復するまで人間の姿でいようと?」

「情けないだろう。」

「魔王様…」

「そんなことないっす!」

「えっ…?」

「あたいは魔王様が生きてくれていると知って嬉しかったっす!」

「ガッカリしてないのか…?」

「ガッカリするもんすか!魔力が大幅に減ってもなお、勇者パーティーへの復讐を諦めず、全回復しようと姿を変えてまで頑張っていらっしゃった!家来として誇らしいっす!」

「こんな我に付いてきてくれるのか…?」

「魔王様の魔力が全回復するまであたいが守ってみせまっす!」

「ぐぉぉ、我は嬉しいぞ!」


魔王はあまりの嬉しさに涙を流した。


「むしろ、あたいこそ情けないっすから。」

「なっなんでだ…?」

「勇者パーティーと戦ったはいいけどダサいくらいコテンパンにやられて部下を全て失い、魔王様から任された国を奪い返されて、自分だけ生き延びたと情けなく魔王様の元にも戻れないで、城での勇者パーティーとの戦いにも参加できず、人間に見つからないようにしながらあたいも暮らしてたっす…」

「いいんだ、勇者パーティーを舐めていた我が悪い、きさまら家来は何も悪くない。」


魔王は笑みを見せた。


「キュン♡魔王様可愛いっす♡」

「ふぐっ!?」

「なっ!?」


魔王の少女の姿の可愛いさにようやく気づいたミノタウロス娘のチズは胸の谷間に顔を埋めさせた。


「ぷはぁ、やめんか!」

「だって母性本能くすぐられちゃったんっすもん♡」

「なんだそれは…?」

「ちょっと魔王様が嫌がってるじゃありませんか!離れてくださいよ!」

「嫌がってはないっすよ?」

「嫌がってます!」

「嫉妬は見苦しいっすよ、貧乳。」

「なっ!?私だってそこそこ胸ありますよ!?自分が大きいからって貧乳扱いしないでください!あと嫉妬もしてませんから!」

「魔王様、こんな嫉妬女はほっといて、あたいが久しぶりにシュークリーム作ってあげるっす。」

「本当か!」

「私が作りますよ!」

「えー、チズのがいい。」

「ガーン!そうですか…」

「落ち込まないで、あんたの分も作ってやるっすから。」

「まぁ、今回はお手並みを拝見するということで…」


そしてチズがシュークリームを作った。


「どうっすか?魔王様?」

「うむうむ、上手い。このシュークリームが食べたかったのだ。」

「そうっすよね。んであんたはどうっすか?」

「悔しいけど、美味しいです…私が作るより…」

「そうしょ?」

「ぐぬぬっ、ってあれっ?よく考えたらシュークリームに使う生乳切らしてたような?」

「そういえば切れてたっすね?」

「えっ…?じゃあ、どうやって作ったんですか…?」

「さて、どうやってすかね〜。」


はぐらかされたのでもしかしてと思い、魔王に聞いた。


「そういえば魔王様、魔界にいる頃、城で乳牛って飼ってましたっけ…?」

「飼ってないな?そもそも魔界に乳牛などおらぬはずだが?」

「ですよね…」


リリアンはあることを確信したが、黙ることにして美味しいので追加でシュークリームをもう一個食べた。



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