第21話 平穏に暮らしたい魔王とチズ、蜘蛛女と戦う。(後編)
「油断するなよ、チズ。奴はお前と同じミノタウロス族のしかも戦闘に長けた男達を倒した相手だ。」
「魔王様、うちはこの村の男達よりさらに強いっんすよ?だからうちを幹部にしたんじゃないっすか。」
「フッ、そうであったな。」
【仲良くコソコソ話しちゃって。ワタクシと戦っていつまでそんな余裕な態度が取れるかしらね、見物だわ。】
「先手必勝だ!行くぞ!」
「はいっす!」
魔王とチズは同時にパンチした!しかし、攻撃は届かない!なぜなら蜘蛛女が口から吐いた糸で盾を作って跳ね返したからだ!
「いたた、まさか跳ね返されるとは…?」
「あんなのありっすか…?」
【クフッ。残念でした。次はワタクシの番よ。】
蜘蛛女は今度は口からではなく背中の手足から魚網のような形の蜘蛛の糸を吐きまくった!
「よけられるか!チズ!」
「あんな数、無理っす!」
「我もだ!」
〈きゃあっ!〉
魔王とチズは身体中に蜘蛛の糸が絡みまくった!
「身動きが取れないっす!」
「悔しが我もだ!」
【どうやら勝負あったみたいね。】
「チズちゃんまで負けるなんて!」
「そんな!」
「スパーミ様に勝てるわけがないんだ!」
「あの糸は最強だもんな!」
チズの両親がチズに聞いた!
「おい、チズ!斧はどうした!」
「父ちゃん!」
「そうよ!あれなら糸ぐらい切れるでしょう!」
「母さん!」
「そうだな、あの斧なら!」
「人間界の家に忘れて来たっす…」
〈あちゃ…〉
蜘蛛女はチズに近づいて顎をクイッと持ち上げた。
【あなた、強いだけじゃなくて村の中でも上位に入るくらい綺麗ね。胸も大きいし。反逆者として牢獄に閉じ込めるには惜しいわ。】
「褒められても全然嬉しくないっす。」
【決めた、今謝るなら反逆者じゃなくてアイリス様の玩具として連れて行くことにするわ。】
「何!」
「誰が新魔王なんかの玩具になるもんっすか!」
【新魔王なんかですって?】
「身体が勝手に浮いて!どわっ!!」
蜘蛛女は糸を操り、着ていた革ジャンを脱がせるとタンクトップ姿になったチズを木に縛り付けた!
【自分の置かれた立場がわかってないよね?お仕置きが必要だわ。】
「ぎゃあっ!!」
〈チズ!!〉
蜘蛛女はムチでチズの太ももと腕を強く叩いた!
【痛いでしょう?】
「いっ痛くなんかないっす…」
チズは涙目で答えた。
【あら、強がっちゃって、謝らなかったらもっと叩くわよ?】
「絶対に謝るもんか…」
【いつまでその痩せ我慢が出来るかしらね!】
「ぎゃっ!!ぎゃあっ!!」
チズは身体中をムチで叩かれた!
【いい声で鳴くじゃない、最高だわ!】
「やっやめろ!!」
【お黙り。】
「むぐぅ!」
魔王の口を太い糸が塞いだ!
「ハァハァ…」
ムチで叩かれまくった結果、タンクトップは破れて胸が少し見えていて、身体中が傷だらけとなりチズは息を荒立てていた。
【あらら、綺麗な身体が傷だらけよ?これ以上、叩かれたら最悪、命を落としかねないわ?それでもいいの?】
「やめてくれ!」
「娘をこれ以上、傷つけないで!」
【ほら、あれってあなたの親御さんでしょう?必死に止めてくれてるわよ?想いに応えなくていいの?】
「それでも絶対に謝らないっす…」
【本当に強情ね?どうしてそこまで頑なになるのかしら?】
「うちの主は魔王様だけっす…」
「ふぐ…」
(チズ、おまえ…)
魔王はその言葉に心を打たれた。
【魔王様?新魔王様じゃなくて?】
「そうっす…」
【まさかあなたって人間界で勇者パーティーに倒されて消息が途絶えてた幹部のミノタウロスかしら?】
「そうっす…うちは魔王様の最強の幹部、チズっす…」
【クフフ、アハハ、大笑いだわ。人間ごときに倒されて今まで隠居してた情けない負け犬さんが自分の故郷のピンチに駆けつけて来たわけね。ご苦労なこと。】
「ぐっ…」
【ならば尚更、アイリス様の玩具になってもらうわ、命尽きるまでね。】
「絶対になるもんか…」
【だったら、さらに痛めつけて殺すまでよ!】
〈チズ!!〉
「くっ!」
「ぐがああー!!」
魔王は雄叫びをあげると、頭に角を出して全身に黒い炎のオーラを纏い、絡みついた蜘蛛の糸を燃やし尽くした!
【嘘!?その特徴ある角といい、この邪悪なオーラはまるで!?】
「今だ!!」
そして魔王はチズを糸の呪縛から解放した!
【しまった!!】
「しっかりしてください!」
「ハァハァ、今の魔力が少ない我で出来るのはこれだけだ…後は頼む…」
魔王の出した黒い炎のオーラは少ない魔力を一気に消耗したものでだったので気を失った。
「くっ、魔王様の命がけのチャンス、絶対に無駄にしないっす!」
「チズ、これを使えー!」
父から斧が投げられて、それをチズがしっかり受け取った!
「これさえあれば!」
【もう一度動けなくするだけよ!】
蜘蛛女は何度も蜘蛛の糸を飛ばす、しかしチズはそれを斧で斬り裂いて防いだ、そして蜘蛛女に向かっていき斧でなくパイルドライバーで決めた!
【グへッ…】
「決まったっす!」
蜘蛛女はあまりのダメージに白目を向いて気絶した。
〈わぁぁ!!〉
「チズちゃんが四天王の一人を倒した!」
「流石は魔王軍の幹部だった子だわ!」
「あなた。」
「ああ、チズは本当に強い娘だ。」
そして兵達が蜘蛛女に駆けつけた。
〈スパーミ様!!〉
「気絶してるだけだから安心するっす。」
〈気絶してるだけ…?〉
「命まではとらないっす、そのかわり捕らえた村娘達を解放して、村からとっと出ていくこと。」
〈わっわかりました。〉
「それともう一つ、新魔王にこの蜘蛛女から伝えるように言ってほしいっす。」
〈何を…?〉
チズから伝言を聞いた兵達は村娘達を解放、気絶した蜘蛛女を馬車に乗せて村から出て行った。
【んっ…ここは…】
〈スパーミ様!〉
兵達から負けたその後を聞き、さらにチズの伝言まで聞いた。
【城を必ず取り戻しに行くから、覚悟してろ、か。】
「どういう意味でしょうか?」
【さぁね。】
(間違いない、幹部だったミノタウロスを連れていて、さらにあの角と邪悪なオーラ、そして今の伝言、あの少女は魔王だ、だけど人間界で勇者パーティーに殺されたはず、なぜ生きて…?それより一番気になるのはなんで少女姿なの…?)
蜘蛛女にはわかるはずもなかった。




