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第19話 平穏に暮らしたい魔王、魔界に戻る。

魔界が大変になってることなど知るはずもなく、その日、魔王達はリズの通う学校の休みに合わせて店も休みにして久々に町へお出掛けするために身支度をしていた。


「わーい!きょうはひさしぶりにみんなで町におでかけだー!」

「ふふっ、嬉しそうですね、リズちゃん。」

「気持ちはわかるっすよ。」

「皆、身支度は済んだようだな、行くとしよう。」


出掛けようとした瞬間、居間の壁に魔界のゲートが開いた!


「魔界から誰か来るのか?」

「いえ、そんな話は聞いてません?」

「この魔力はもしかして!」

「ママはわかるの?」


するとゲートから出てきたのは背丈が低く髪型がツインテールのチズに顔が似たミノタウロスの娘だった。


「着いた…?」

「ミノタウロスの娘か、随分若いが?」

「チズさんと同族ということは?」

「やっぱりシズだったっすね!」

「チズお姉ちゃん!」

「此奴はチズの妹なのか?」

「そうっす、妹のバニラです。」

「わたしはしってるよ!」

「そっか、リズちゃんはチズさんの里帰りに付いて行ってるもんね?」

「うん!のませてもらったお乳おいしかったよ!」

「お乳出るんですね…?」

「今日、来ることは聞いていたのか?」

「いえ、知らなかったっす?バニラ、何用で来たっすか?」

「お願い!捕らえられたシルお姉さん達を助けて!」

〈捕らえられた!?〉

「うん…」


バニラは状況を知ってもらうために魔王達に今の魔界の現状を詳しく話した。


「まさか本当に魔界で反乱が起こるとは…?」

「ですがそれより驚きなのは城が1日で陥落したことです、一人で幹部を倒したという新魔王を名乗る仮面の女は何者なのでしょうか…?」

「わからん…」

「チズお姉ちゃん、あの子誰なの…?」

「魔王様っすよ。」

「魔王様!?」

「前に生きてるって話したじゃないっすか。」

「あれが魔王様…なんて可愛い…」


バニラは魔王様に見惚れていた。


「地下の牢獄に閉じ込られたという幹部の皆さんは無事なんでしょうか…?」

「奴らも心配だが、城の者達以外も心配だ、新魔王の命令で部下を使い全国から若い娘達を城に集めているのだろう?バニラとやら?」

「はっ!そうです!その魔の手が私達の村にまで来て、私はこの事を皆さんに伝えて欲しいと両親に頼まれて隙を見て逃がしてもらいました、でもほかの村の娘とシルお姉さんはきっと今頃、捕まって…」

「なるほど…」

「しかし、ミノタウロス族は魔界の者の中では強い種族のはず、抵抗しなかったのですか?」

「戦闘に長けた男達が戦いました、でも兵を指揮していた新魔王軍の四天王と名乗る蜘蛛女に歯が立たなくて動けない状況に…」

「新魔王軍の四天王の蜘蛛女っすか…」

「魔王様、新魔王は若い娘達を城に集めて何が目的なのでしょうか?」

「それもわからぬが、全ては魔界の王でありながら魔界を放置していた我の責任だ…バニラとやら、すまぬ…」


魔王は謝った。


「魔王様!頭を上げてください!」

「魔王様が謝ることじゃないっす、頭を上げてください!」

「そうですよ!悪いのは新魔王と名乗る仮面の女と家来です!」

「しかし…?」

「安心するっす、今からうちが魔界に行って、シル姉や村の娘達を助けて、新魔王から城を奪還して来るっす!」

「チズお姉ちゃん…」

「なら私も付いていきます!戦力にはなりませんが、回復なら誰にも負けませんから!」

「心強いっす。」

「我も行くぞ。」

〈えっ!〉


魔王の一言にチズとリリアンは驚きを隠せなかった。


「本気ですか、魔王様?」

「我もまだ全盛期の7%ぐらいしか魔力が回復していないが、リリアンお主よりは戦える、戦力は多い方がよいだろう。」

「でも魔王様は勇者パーティーとのリベンジを果たすまでは帰らないと決めてたんじゃ?」

「こんな非常事態だ、プライドより優先するものがあるだろう?」

〈魔王様…〉

「魔界は我のものだ、新魔王などとわけのわからん奴に支配させてなるものか。」

「ですね、一緒に取り返しに行きましょう。」

「そうっす、うちらの魔界を!」


魔王達三人は心を一つに見つめ合った。


「バニラとやらは万が一を考えて人間界でリズと留守番してくれるか?」

「はっはい!わかりました!」

「それが安心っすね。」

「ですね。」

「え〜!わたしもたたかうよ!」

「リズはまだ子供だし、駄目っす。」

「リリアンよりはつよいもん!」

「リズちゃんに言われると傷つくよぉ。」

「リリアンより強くても駄目だ。」

「むぅぅ、行きたかったな。」

「それにまだ修行途中だぞ?」

「たしかにまりょくはまだうまくコントロールできないけど。」

「だろ?帰ってきたら、また修行してやる。」


魔王はリズの頭を撫でた。


「わかった、やくそくね?」

「約束する。」


そして指切りもした。


「全部をお任せしてすみません、私、何の役にも立てなくて…」

「何を言う、お主が知らせに来てくれたから魔界の状況がわかったのだ、感謝している。」


少女姿の魔王は笑みを見せた。


「キュンッ♡」

「こりゃ、バニラのやつきっと。」

「バニラさんがどうかしたんですか?」

「なんでもないっす。」

「では魔界に行くぞ、リリアン、チズ。」

「はい!」

「はいっす!」


魔王、リリアン、チズの三人は魔界のゲートをくぐり、チズの姉達を救うために城の前ではなくシズが出てきた場所に出た。


「この黒かかった空、スゥゥ、ハァァ、この淀みきった空気、これこそ我が魔界だ…」

「懐かしいですね、人間界じゃ絶対に目にしない花もありますし、空飛ぶ魔物も…」

「しかし、懐かしさに浸っている場合ではないな、まずはチズの村に急ぎ、四天王の蜘蛛女とかいうのを倒してチズの姉達を助け出さねば。」

「でっですね、チズさんの村に案内してもらえますか?」

「もちろんっす、ついてきてください!」


一方、人間界に留守番となったチズの妹のバニラはというと。


「魔王様、チズお姉ちゃんの言う通り可愛い姿になられてたな…」

「かおがあかいね?かぜでもひいたの?」

「あっいや、違うよ。」

「ふーん?」

「それよりおやつ用意しようか?」

「うん!ショートケーキがいい!」

「了解。」

「あっでもママのちちないや!」

「大丈夫、私のあるから。」

「そっか、バニラおねえちゃんもでるんだもんね!」

「多分、いっぱい出るからもだから…ちょっと大きいの作るね…?」

「たべる!たべる!」

「ありがとう。」

(私のあの体質については恥ずかしいから言わなくていいよね。)



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