第17話 平穏に暮らしたい魔王、初の料理をする。
「ふんふん、ふふん。」
勇者パーティーが来るという危機を乗り越えてから、5日後、魔王は居間のテーブルを拭きながら鼻歌を歌っていた。
「魔王様、上機嫌ですね。」
「べっべつにそんなことはないぞ?」
「わかってますよ、昨日、チズさんから今日の夕方頃には帰ってくるって連絡があったからですよね。」
「だったら聞いてくるな…」
魔王は顔を真っ赤にした。
「私も久しぶりにリズちゃんに会えますから、嬉しいですよ。まぁ、チズさんは魔王様のことがありますから微妙ですけど。」
「んっ?我がどうかしたのか?」
「あっいや、何でもありません。」
「聞き間違いか?」
「とっとにかくチズさん達が帰って来れることと、勇者パーティーから怯える心配が無くなったお祝いを兼ねて今夜の夕飯は豪華にしましょうね、ケーキでも作りましょうか、チズさんの乳も残ってますし。」
「そのケーキ、我が作ってもいいか…?」
「えっ!魔王様が作るんですか!」
「駄目なのか?」
「駄目じゃありませんけど?これまで料理したことないじゃありませんか?どうして今頃?」
「とっ特に理由はない、ただチズやリズに会えると思ったらな、作りたくなっただけだ…」
「むぅぅ、つまり二人のためにですか。」
(私には料理作ってくれたことないのに。)
リリアンは頬を膨らませて焼いていた。
「何で機嫌悪そうなのだ?」
「絶対に教えませんよーだ。」
「変な奴だな、まぁよい、確かにきさまが言ったように我は料理をしたことがない、わからないことがあったら教えてくれ。」
「そうですね?リリアン先生って呼んでくれるなら教えてあげないこともありませんよ?」
「なっなぜ主である我が家来のおまえを先生と呼ばないとならないのだ!」
「えー?人間の間ではどんなことでも教えてくれる人は先生と呼ぶのが礼儀らしいですよー?」
「ぐぬぬ、仕方ないな、呼べばよいのだろう、りっリリアン先生…」
「よろしい。」
「ハァ、相変わらず生意気な家来だ。」
今日はお店は休みなので、お昼を食べたら二人で夕飯の買い物に行き、時間になったら夕飯の支度を始めた。
「それでは夕飯を作っていきましょう、魔王様はケーキ作りを。」
「やるぞ、ケーキ作りはまず何から始めたらいい?リリアン?」
「リリアンー?」
「あっ、リリアン先生…?」
「よろしい。」
「いちいちめんどくさいな…?」
「まずはスポンジ生地作りですね。」
リリアン監修のもと、魔王は一からスポンジ生地を作り、泡立てた生クリームを塗って、ところどころで指を切りながらも切り揃えた苺を中にサンドしたり上にトッピングして、不器用ながらもなんとかホールの苺のショートケーキを完成させた。
「でっ出来た…」
「頑張りましたね、初めて作った割には美味しそうに作れたじゃありませんか。」
「ふふん、まぁ、我が作ったんだからな。」
「苺のジャムで文字も書けますよ?」
「文字か、書いてみるかな。」
魔王は苺ジャム入りの絞り袋を使い、ケーキの真ん中に文字を書いた。
「なんて書いたんですか?」
「まだ秘密だ、見るな!」
「えー、ケチッ。」
「このケーキ、チズ達、喜んでくれるといいが。」
「またチズさん達ですか…」
リリアンは落ち込みつつも、帰ってくる二人のためにいつもり豪華な夕飯を作り上げた。
そして少ししてチズ達が魔界からお見上げを沢山持って帰ってきた。
「ただいまっす、魔王様!」
「ただいま!」
「お帰りなさい、二人とも。」
「二人が帰ってくるのをずっと心待ちにしておったぞ。」
「まさかうちらが魔界に行った後に勇者パーティーが来るとは思ってなかったっすよ…?魔王様の危機を助けられなくて申し訳なかったっす…?」
「気にするな、結果的に勇者パーティーとは我が魔力を全回復するまで戦わないとなって、プラスに転じたのだ。むしろ弱いリリアンではなく強いお主がいたら戦闘になっていたかもしれん。」
「それもそうっすよね。」
「ちょっと納得しないでくださいよ!」
«あはは。»
久々に家が賑やかな笑いに包まれた。
「リズ、魔界は楽しかったか?」
「うん!たのしかった!みんなのちちおいしかった!」
「ちっ乳ですか?」
「実は姉貴と妹もミノタウロスなんで、うちと同じく乳が出せるんすよ、それでリズに飲ませて。」
「なっなるほど。」
「今度は魔王様達も来て欲しいって言ってたっす。」
「魔力が回復して魔界に行けるようになったら行くとしよう。」
「きっと喜ぶっす。」
「いこうね、まおしゃま。」
「うむ、必ずな。」
「食事の用意が出来てますから。」
「わーい!リリアンのごはん!」
「うちもリリアンのご飯が食べたくて仕方なかったっすよ。」
「お世辞言わないでください…」
久々の4人で食事を食べた。
「美味しかったっす。」
「おいしかった!」
「でもこれで終わりじゃありませんよ。魔王様がケーキを作ってくれてるんです。」
「ケーキ!やったぁ!」
「驚きっす、魔王様が料理をするなんて?」
「おまえまでそんな反応せんでも?まぁよいか。」
「二人のために丹精込めて作ってましたよ。」
「誰が二人のためだけだと言った?」
「えっ?」
魔王は冷蔵庫から作ったケーキを出した、すると真ん中に書いていた文字には〚親愛なる家来、リリアン、チズ、リズ、これからもよろしく〛と書いてあった。
「わぁ!わたしのなまえだ!」
「うちのも書いてあるっす!」
「私の名前まで…?」
「きさまは勇者パーティーが来てもずっと逃げずに守ろうとさえしてくれた、チズ、リズと同じく我の大事な家来なのだ…」
「まっ魔王様〜♡」
リリアンはあまりの嬉しさに抱きついた。
「こっこら!邪魔でケーキが切りずらいではないか!」
「だって嬉しいですもん♡お礼にあーんって食べさせてあげますね♡」
「せんでいいわ!」
「ずるいっす!うちがするっすよ!」
「だからいいって!」
「じゃあ、わたしする!」
«えっ?»
「わたしもまおしゃま、すきだもん。」
「うむ、リズにならしてもらいたいかな。」
«魔王様〜?»
二人に羨ましいそうに見つめられながら、リズは魔王にフォークで取ったケーキの一口を食べさせてあげた。
「おいしい?まおしゃま?」
「美味しいぞ、ありがとう、リズ。」
「えへへ。」
「ずるいですよぉ、リズ〜。」
「もとはうちの乳なのに〜。」
でもリズの満面の笑みを見てると、みんな心が温かくなった。




