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第16話 平穏に暮らしたい魔王、勇者パーティーと約束する。

魔王と勇者パーティーを場所を移して、人気のない岩場だらけのエリアに来た。


「確かにここでなら思う存分、戦えるわね。」

「調べましたが罠とかも無さそうです…」


リリアンは魔王に近づき小声で話した。


「魔王様、リズさんとチズさんを魔界に逃がしておいて正解でしたね?」

「リリアン、いざとなったら我がどうにかして、きさまだけでも逃がしてみせる。」

「水臭いこと言わないでください、私は魔王様の忠実な家来です。最後まで一緒に戦います。」

「強がりよって、おまえらしくもない。」

「それにお忘れですが、私はS級治癒魔法「全復活」が唱えられるんですよ、魔王様が殺されたらこの命が続く限り唱えて何度でも復活させてみせます。」

「ふっ、きさまがこれまでになく頼もしく見えるぞ。」

「もう、それって褒め言葉ですか?」

「褒め言葉だ。」

「嬉しいです。」

「リリアン…」


魔王はリリアンだけでも逃がしてあげたい気持ちは変わらなかった。


「ロード、お前のあの最強のトドメの一撃でも殺せなかったんだ、三年前には出さなかった勇者パーティーの合体究極奥義をやるぞ、いいな?」

「あっああ。」

「ミレイ達もいいな?」

「もちろんよ。」

「わっ私もです。」

「魔王達!戦う覚悟は出来たか!」

「ああ!」

「私もです!」


魔王は少女姿の状態で角を頭に出してリリアンは本来のバフォメットの姿になった。


「なぜ魔王本来の姿にならないんだ?」

「我の自由だろう!」

「チェ、やりずらいぜ?」

「人間の女の子を相手にしてるみたいだものね?」

「あれも戦略でしょうか…?」

「きっとね、魔王が好き好んで女の子姿で戦いたいと思ってるとは思えないし。」

「でっですよね…?」


魔王本人はというと。


「魔王様、人間の姿で戦うつもりですか?」

「うむ、我はこの姿を気に入っている、この姿で戦いたいのだ。」

「魔王様。」

「リリアン、勇者パーティーに出し惜しみはなしだ、最初から全力で魔力を解放するぞ!」

「はい!」

〈全魔力解放!〉


魔王もリリアンも魔力のオーラを身に纏った、だけど勇者パーティーは全員がポカーンとした表情をしていた。


「まさかそれで全力なのか…?」

「だからなんだ!」

「嘘よ!私達を騙すつもりね!三年前に戦った時と比べたら月とスッポンじゃない!弱すぎるわ!」

「本当に魔王なのかって疑いたくなるレベルだぜ…?」

「あながち嘘じゃないみたいです…?」

〈えっ?〉

「私、ひそかに魔力測定の魔法を唱えて、今の魔王の総魔力量を調べたんですが、全盛期の4%しかないみたいです…?」

〈全盛期の4%…?〉

「魔王、どうしてそんなに弱いんだい?」

「きさまらは知らんだろうが、本当は三年前の戦いで我はおまえらに殺されていて、生き返るのと引き換えに全魔力を使い果たした身なのだ!」

「おいおい、それじゃあ、楽勝に倒せちまうってことじゃねぇか…?」

「もう一人の子も大したことなさそうだしね…?」

「敵ながらひどいです!」

「私達が全員で相手しなくても倒せるレベルってことよね、アホらしい。」


アーチャーのミレイは戦闘態勢を解いた。


「おっおい、戦わない気かよ!」

「やめるわ。」

「そんな…?」

〈ほえっ…?〉


今度は魔王達がポカーンとした。


「それにロードは最初からそのつもりでしょう?」

「そうなのか?ロード?」

「見破られていたか。」

「私の直感を舐めないでちょうだい?」

「どういうことだ…?なぜ戦うのをやめる…?」

「ボクは今の君とは戦いたくない、力の差がありすぎて弱いもの虐めみたいな感じになる。」

「つまりお主は魔力が全回復した我と戦いたいと言いたいのか…?」

「それまで待ってもいいと思っている。」

「見逃してくれるというのか…?」

「ああ。」

「正気か!ロード!こいつらは世界を征服しようと人々を苦しめてきた悪い奴らなんだぞ!」

「わっ私も同感です!」

「すまない、でもボクの直感を信じてくれないか?」

「ロード、おまえ…?」

「勇者様…?」

「私はロードの考えに賛成するわ。」

「二人はどうだい?」

「ハァ、仕方ねぇな。長い付き合いだし、おまえの直感を信じるよ。」

「わっ私もです!」

「ありがとう。」

「そのかわりに王都の連中を誤魔化すのはおまえがやれよ?」

「わかった。」

「んじゃ、帰るか。」

「そうね。」

「はっはい。」

「帰ろう。」


しかし、魔王が引き止める!


「いいのか!我は魔力を全回復してきさまにリベンジして倒したら!今度こそ人間界支配の野望を叶えるために動くぞ!」

「その時は全力で相手になるよ、そして今度こそ魔王、君を殺す。」

「ふっ、随分な自信だな、いいだろう、受けて立ってやる。」

「そのかわり、ボク達にリベンジする前に人間達に危害を加えたり世界征服を再開するとかしないこと、いいね?」

「約束はしたくないが、我は最初からそのつもりだ。」

「ならいい、君の魔力が全回復したらまた会おう。」


勇者は笑みを見せて手を軽く振ると、仲間を連れてその場を去った。


「まさか勇者が魔王様の魔力が全回復してリベンジをしてくるのを待ってくれるなんて…?」

「あの若造、三年前は我の野望を邪魔した憎らしいやつだったが、案外、話がわかるやつらしいな。」

「魔王様、もしかして、勇者を屈服させられたら家来にしようとか考えてませんか?」

「さて、どうだろうな?」

「はぐらかして、もうー。」

「はっは、とりあえず勇者にバレないように生きなくてもよくなったわけだ。チズとリズを呼び戻そう。」

「いえ、もうしばらく魔界に居させてあげましょう?チズさんは里帰りしてるわけですし?」

「それもそうだな?」

「それに私も魔王様と二人でいられる時間が増えてラッキーですから♡」

「いちいちくっつくでない。」

「いいじゃないですか♡」

「フッ、仕方ないやつだ。」


魔王は嫌がりながらも内心はリリアン達とのこの平穏な生活が続くのが嬉しかった。

だが、平穏を脅かす存在は勇者パーティーだけではない、魔力が全回復するまであと96年、果たして魔王はそれまで平穏に暮らせるのだろうか。


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