第12話 平穏に暮らしたい魔王、勇者パーティーと再会する…
何ということだろう、魔王と家来のバフォメットのリリアンが城の跡地に掃除に来たと同じタイミングで占い師の占い結果通りに魔王が生きている可能性があるか調査に訪れた勇者パーティーが来ていたのだ。
「変だな、城の財宝は国の復興のために戦利品として僕らが持って帰ったわけだが、クローゼットから衣類や食器棚から皿やカップなどまでもが消えている。」
「その辺に住んでる地元民か盗賊でも持っていったんじゃないか?」
「あっありえますね。」
「ならどうしてクローゼットと食器棚ごと持っていかなかったの?これも金が使われてるし高級品よね?」
「だろ?僕らは金銀財宝にばかり目がいってしまっていて気づかなかったが、仮にここに残っているものを探しに来た者とかなら見過ごすはずがないと思うんだ。」
「そう言われてみればそうだな?」
「確かに変ですね…?」
「まるでここから別の場所に移って生活するために持っていったみたいだ。」
「じゃあ、やはり!」
「魔王もしくは家来の魔族が生きてる可能性があるってことか。」
「お姉様の占い結果は当たっていたのよ。」
「だが早合点ということもある、結論を急ぐものじゃない、もっとじっくり調べよう。」
「そうね、ほかにも生きてる可能性に繋がる何かがあるかも。」
「おっしゃー、やるか。」
「わっ私はこっちを担当します。」
「みんな、頼む。」
勇者パーティーが城の跡地をくまなく調べている様子に近くの木に隠れて覗いている魔王と家来のリリアンは恐怖を感じていた。
「まっ間違いありませんよ!奴らは魔王様もしくは家来である私達が生きていることに気づいて調べにきたんです!」
「なぜだ、なぜなのだ…我の魔力はまだ全盛期の3%ほどしか回復してなくて、たとえ魔力探知の魔法が使える者があの中にいても見つけることは不可能なはずだ…」
「でもチズさんは魔王様を見つけられましたよね?」
「奴は我の家来だ!主従契約をしているから、微力の魔力でも見つけられたのだ、普通じゃありえん…」
「ではチズさんですか?」
「違うな、奴は上級魔族で魔力のコントロールに長けている、そんなヘマはせん。」
「じゃあ、もしかして私…?」
「なわけあるか、我やましてやリズより魔力が下のおまえが感知されることはない。」
「はっ!そうか!きっとリズちゃんですよ!」
「リズだと…?」
「リズちゃんは魔族の中でも強い種族のヴァンパイアの娘、そんな彼女は主従契約をして力が向上してあの幼さながら確かに私より遥かに魔力があるように感じます。おまけにリズちゃんは幼さくて自分の魔力をコントロール出来ずにいる。ついこの間もヴァンパイアの力を使おうとしたぐらいですよね?だからその魔力を察知されてしまったのでは?」
「うむ、ありえなくはないな…?」
「もしそうならリズちゃんが危ないです!今すぐに村に戻りましょう!」
「あっああ、そうしよう…」
しかしここで放心状態の魔王は落ちていた木の枝に引っかかってダイナミックにコケて大きな音を立ててしまう!
「何の音だ?」
「あれは!」
「勇者様!」
「どうしたのよ!」
リリアンに手を引かれて起き上がった涙目の魔王の元に勇者が走って近づいてきていた!
「しっしっしまった!」
(こんな形で因縁の再会を果たしてしまうとは!!)
魔王はあまりの恐怖から足腰がガクガク震えていた。そんな魔王達に近づき勇者が背中に背負った鞘から剣を抜いた!
「君達!」
「あわわわわっ!」
「させません!」
「リリアン!」
そんな怯える魔王をリリアンが守るように前に立った!
「私が命をかけて守ります!」
「リリアン、弱いくせに…」
魔王はその行動に心が打たれた。しかし、勇者が狙っていたのは魔王達ではなく後ろから迫っていた大熊の魔物だった!
「ガオオッ!!」
「何!?」
「きゃああっ!」
「二人とも伏せるんだ!」
「リリアン!」
「魔、リリィ!」
魔王がリリアンに覆いかぶさり伏せさせた。
「アイリス!二人に結界を!」
「はっはい!」
そして勇者が仲間のロリ魔女アイリスに魔王達に防御結界を張らせた!
「よし、これで思う存分暴れられる!」
そのタイミングを見計らい、向かってくる大熊の腕を勇者が魔力を込めた剣で斬り裂いた!
「ガオオッ!!」
「まだ暴れるつもりか。」
大熊はもう片方の腕で反撃しようとしたが、それを遠くからアーチャーの美女エルフ、レイアが光の矢で貫いて阻止した!
「あとはオレに任せろ!オリヤッ!オリヤッ!」
最後にムキムキ男のグロスがパンチの連打で大熊を吹っ飛ばし気絶させてKOした!
「いっちょ上がりだな。」
「僕一人でも大熊は倒せたんだが?」
「いいじゃない、久しぶりにみんなで戦ってみたかったのよ。」
「チームプレイなんて魔王討伐以来ですもんね…」
「確かに三年しか経ってないのに懐かしく感じたよ。」
「だろ?やっぱりこのチームは無敵だぜ。」
〈あはは。〉
勇者パーティーの全員が笑った。そして魔王達のバリアを解いてあげた。
「二人とも怪我はなかったかい?」
「はっはい…?」
「助けて頂いてありがとうございます…?」
(まさか勇者に助けられるとは…?)
魔王達は驚きを隠せなかった。
「君達はここで何をしてたのかな?」
「そっそれは…」
「ここは危険な魔物がうじゃうじゃいるエリアなんだぞ?」
「お嬢ちゃん達が来ていい場所じゃないわ。」
「武器すら持ってませんし、餌食になっちゃいますよ…?」
「すぐに家に帰りなさい。」
「はっはい…?」
「わっわかりました…?」
魔王とリリアンはとりあえず正体がバレてないらしいと見つめ合い、一安心した。
「家は近いのかい?」
「危ないし、送るぜ?」
「あっいや!」
「結構です!」
「ふふ、グロスみたいないかつい顔したムキムキ男が付いてくるって行ったらそりゃ怖いわよね?」
「おいおい、ひでえじゃねぇか。」
「わかります。」
「アイリスおまえまでかよ?」
〈あはは。〉
また勇者パーティーは笑った。
〈ポカーン…〉
(勇者パーティーってこんなゆるいパーティーだったの…?)
(3年前に我と戦った時はもっと怖い感じだったろうが…?)
魔王とリリアンは呆然としていた。
「とにかく安心しなさい、アタシ達は怪しくないわ。」
「そうだぜ!俺達はあの有名な勇…」
「グロス、言わなくていい。」
「えっー?最後まで言わせてくれよ?」
「だから君達も話さなくていい。魔力を探ったが今のところは周辺に危険な魔力を持った魔物はいない、すぐに住んでる場所に帰るといい。」
「そっそうさせてもらいます、行くよ、リリィ。」
「うっうん、お姉ちゃん。」
魔王とリリアンは姉妹になりきって手を繋ぎ合うと、勇者パーティーに正体がバレずにその場から退散できた。
「ハァハァ、緊張しましたぁぁ、なんとか正体バレずに済みましたね、魔王様…?」
「姿を少女にしてるとはいえ、まさか勇者達に助けられるとは…」
「勇者が剣を抜いて迫ってきた時、怖くなかったですか…?てっきり私達が斬られるのかと…?」
「こっ怖くなんか…」
「強がらないでください。」
リリアンは胸に抱き寄せた。
「うぐっ、リリアン…」
魔王は怖かったらしく、本当の女の子のように大粒の涙を流していた。
「よしよし、魔王様。怖かったのによく頑張りましたね。」
「だから怖くなんかなかった、子供扱いするな…」
「今はいいでしょう?」
「自分だって大熊の時に怯えてたくせに…」
「ですね、でもそんな二人がくっつけば怖さも平気だと思いませんか?」
「わかるかもしれん…」
「でしょう。」
「もう少しだけこうしてたい…」
「はい、落ち着いたら、すぐに村に戻りましょう。チズさんやリズさんを守らなくては。」
「うむ、絶対に守るぞ、大事な家来で家族だからな…」
「ですね。」
魔王はその大事な家来で家族にリリアンも含まれていると本人には照れくさくて言えなかった。
そして勇者パーティーはというと。
「ロード、なんで俺らが勇者パーティーだと言わなかったんだ?」
「僕らが魔王が生きてるかどうか調査に来ていることは極秘なんだ。」
「そうか、いらない混乱を避けたのね。」
「流石です、勇者様…」
「なるほどな、恐れ入ったよ。」
「では魔王が生きてる可能性に繋がるものを引き続き探そう。」
「でもこれ以上、見つかなかったらどうするの?」
「近くの村か町で聞き込みだ、もちろん僕らの正体は隠して。」
「わかったぜ。」
「野宿じゃなくて宿に泊まりたいものね。」
「聞き込み、対話…苦手なんだけどな…」
「頑張ろうぜ。」
「そうよ。」
「はっはい。」
「それじゃあ、仕事再開だ。」
〈おう!〉
魔王達と勇者パーティーの再会フラグはまだ続いていたのだった。




