第10話 平穏に暮らしたい魔王、主従契約する。
うっす。あたいは魔王様の一番の家来でミノタウロスのチズっす。あたいはとにかく主である魔王様を尊敬していて大好き。でもここ最近は魔王様と同じぐらい大好きで大事な存在が出来たっす。それがヴァンパイア娘のリズっす。リズはあたいのことをママだと本気で思っていてくれていて、あたいも自分の娘だと思ってるっす。マジ可愛いっす。そんなリズのお世話の一部を紹介するっす。
「待つっす、リズ〜!」
「着替え終わっとらんぞ〜!」
「あははは!ふく、きなーい!」
「風引きますよ〜!」
リズは三歳になってから背中に翼を出現させて空中を自在に飛ぶことが出来るようになったっす。なので朝のお着替えは追いかけっこから始まるっす。これが毎朝、大変でみんなクタクタになるっす…
「全くリズのおてんばにも困ったものだな?」
「でもそこが可愛いんっすけどね。」
「ママ、だいしゅき!」
「あたいもだよ。」
「フッ、親バカめ。」
「お待たせ、今日のリズちゃんの朝ごはんはチーズパンだよ。」
「わーい!リズ、これ、しゅき!」
ヴァンパイアは血しか主食に出来ないと聞いたことがあったけど、あたいの乳を使った料理なら食べられるみたいっす。ただし種族的にNGなニンニクや好き嫌いだけど人間の子供のようにニンジンやピーマンなどの野菜は苦手だったりするみたいっす。
「おしょとおしゃんぽしたい!」
「まだ日が明るいだろう?」
「そうだよ、陽の光に浴びたら危険だよ?」
「日が暮れてからっすね。」
「むぅぅ。」
リズは活発な子で動き回りたいのか外に行きたがるっす。だけど、陽の光が弱点なのがヴァンパイア、余程の用事でもない限り日中に外には出さずにさんぽも買い物も日が暮れる夕方にしてるっす。
「日が暮れたし、おさんぽ行けるっすよ。」
「いくいく!」
「我もついて行こう。」
「魔王様も行くんですか?」
「きっきさまに晩御飯に使う食材のおつかいを頼まれてたからな、それのついでだ!」
「そうでしたっけ?」
「いっいいから、さっさとメモを渡さんか…」
リズと外に出ると小さい子供が大好きな人やご老人達が寄ってくるっす。
「まぁ、リズちゃんじゃない。」
「今日も可愛いのう。」
「えへへ。」
まぁリズはほかの人間の子供と比べても綺麗な顔立ちしてるし将来絶対に美人になるに違いないっすからね、チヤホヤされて当然ちゃ当然っす。(親バカ)ちなみに村ではチズの母親はあたいだとちゃんと浸透していて、店の人とかに奥さんとか言われるようになったっす。まだ結婚もしていないんっすけどね、構わないっすけど。
「リズちゃん、今度、うちの娘と遊んであげてね。」
「あそぼうね。」
「うん!」
年の近い女の子に手を振った。
「じゅる、あのコ、ち、おいしいだろうなぁ。」
「おいおい、完全に獲物を見る目になっとるぞ…?」
「駄目っすよ、村の人を襲っちゃ?」
「はーい。」
流石、小さくてもヴァンパイア娘、血が美味しそうだと思うと本能がうずくらしいっす。
「ねぇ、ママ、まおうしゃま、ひがあるとおそとであそんじゃだめなんだよね…?」
「そうだな、きさまはヴァンパイアだ、弱点である陽に当たると灰になって消滅してしまうからな?」
「しょっか…じゃあ、あのコともあしょべないね…」
「リズ…」
リズは落ち込んだ顔をしているっす…こんな時、どう声をかけてやればいいか…
「日中も陽の光を気にせず外で遊びたいか?」
「あしょべるの?」
「方法がないわけじゃない。」
「魔王様、それって!」
「うむ、我との主従契約だ。」
実は魔王の家来になるにはまず主従契約を結ぶ必要があり、主従契約を結ぶと正式な家来になれる、そして家来になると特典として弱点を一つ克服する事が出来るようになるのだ。
「まだこんな小さいのに主従契約するんですか…?」
「べつに関係ないだろう?」
「あたいは賛成っす!」
「しかし、この幼さで戦力になりますか…?」
「めっちゃ弱いリリアンよりは戦力になると思うっすよ、この子、この歳で木をなぎ倒せるほどの怪力の持ち主っすから。」
「そっそういえば、私、子守中に持ち上げられた事がありますね…?」
「我もだ、これから背も伸びて魔力も上がり益々強くなることだろう、期待のエースというわけだ。」
「わかりました、リズちゃん本人が望んでるんですもんね?」
「ひがあってもしょとであしょべるようになりたいの!」
「そう出来るようにしてやろう。」
「うん!」
「ではさっそく主従契約開始だ。」
魔王は床にチョークで紋章を描いて、その紋章の中心にリズを座らせて魔界語で主従契約の魔法を唱えた。
【□△◇◁▽◇○◑□◁△〜魔界の儀式を通じ、このチズという娘を我の家来とする〜はぁぁ!】
するとリズの周りに黒いオーラが出現して腕に主従契約を果たした証の刻印が刻まれた。
「ふぅ、成功だ。」
「ですね、刻印がありますから。」
「よかったっす。」
「これってみんなにもあるの?」
「ありますよ。」
「あるっすよ。」
二人とも魔物の姿に戻ると合言葉を言った。
〈刻印証明〉
リリアンは右頬にチズは胸元の上にそれぞれ、刻印が出た。
「ほんとうだぁ!」
「刻印はそのうちまた消えちゃうから、出したい時に今の合言葉を言うんだよ。」
「まぁ今は城もないから、チェックする必要もないんすけどね。」
「もうひがあるしょとであしょべるの!」
「ああ、特典として弱点を一つ消せるやつを陽の光を克服するにしておいたからな。これで気にせずに遊べるようになったはずだ。」
「わーい!はやくあしたにならないかな!」
‐次の日の日中‐
「リズちゃん、つぎはかくれんぼしよ!」
「うん!しゅる!」
〈あはは!〉
魔王の言った通り、リズは陽の光を克服、陽の光の中、元気に同い年の子と走り回っていた。
「リズちゃん、同い年のお友達が出来て楽しそうですね。」
「ですが相手は人間の子供っす、仲良くなってもあたい達が魔物だと知れたら敵になるかもしれない…」
「それもそうですね、私達はいずれ魔王様が魔力を全回復させたら人間界を再び攻めるつもりですし…」
リリアンとチズは切ない表情をした。
「心配するな。」
〈えっ?〉
「我が魔力を全回復出来ても、この村の人間達と争うつもりはない、そしたらあの二人が戦うことはないだろう。」
〈魔王様。〉
「まっまぁ、人間界支配を諦めたわけでは決してないがな、勇者パーティーだって絶対にコテンパンにしてやるのだ。」
「リズへのお心遣いに母として感謝するっす。」
「かっ感謝されるほどのことではない。」
「この村が好きになったんですね。」
「べっべつに好きとかじゃない!勘違いするな!」
〈ツンデレ魔王様。〉
「誰がツンデレじゃ!」
〈あはは。〉
「まっ全く、尊敬が足りぬ、家来どもめ。」
(しかし、完全には否定出来ぬ自分もいる…こいつらの言う通り、この村での暮らしを少し気に入っているのかもしれんな、あと魔力が全回復するまで96年、それまではこのまま平穏に暮らせればよいな。)
魔王はそう願ったが、その魔王の平穏を脅かしかねない事態が王都で起こっていた。その事態とは王国の城で雇われている100%当たると有名な占い魔女が出した占い結果である。
「魔王は生きている!」




