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245  作者: Nora_
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09

「あ、おはよう」


 意識をするまでもなく五時半ぐらいに目が覚めて本を読んでいた。

 それでもなんか読み続けたい気持ちにならなくて早く起きないかなと期待をして待っていた結果がいまのこれだ。


「は……? え、いまって何時?」

「六時だね」


 集中できていたら一時間ぐらい簡単に過ぎていくのにね。


「ちょ、ちょっと待ちなさい、花火は見にいったのよね?」

「すぐに寝ちゃったから帰ってきたお母さんに事情を話して残らせてもらったんだよ、あ、それでも一旦帰ってお風呂には入ってきたからね?」

「お風呂に入ったとか入っていないとかはどうでもいいんですけど……」


 隼人は泊まっていいと言われたのに異性の僕が云々と返して二十一時ぐらいには帰った。

 泊まっていいと言ってくれたから泊まらせてもらったけど私はちゃっかりケーキなんかも貰ってしまったりもしたことは内緒だ。

 本人にバレたらなんのために来たのかと言葉で刺されてしまう。


「もう大丈夫なんだよね?」

「だから――体調はそうね」

「じゃあ隼人を呼ぼうか、久里子のことを一番心配していたのは隼人だろうから、安心させてあげたいからね」


 早いけど元気になったことを知ることができればそれが一番のはずだ。


「まだ六時なんでしょ? 八時ぐらいになってからでいいわよ。それよりシャワーでも浴びてくるわ、寝汗もかいたし気持ちが悪いのよ」

「倒れたりしたら嫌だから洗面所にいるね」

「はあ? はぁ、ちゃんと服を脱いだり着たりするときとかは出てよ?」

「うん、人の裸を見るような趣味はないからね」


 洗面所でも微妙かもしれないから洗面所前の廊下で本を読んで待っていることにした。

 今度は短時間で集中できて丁度いいところで彼女が出てきてしまったから少しだけもやっとしたものの体調が治ったばかりなのに長く入られていても心配になるから無理やり片付ける。

 それで部屋に戻ったのはよかったけど、


「なんで私は押し倒されているの?」


 すぐにこれで馬鹿みたいに見つめてしまった。


「もう私があんたを貰ってしまおうかしら」

「まだ体調が悪いの?」

「はは、冗談よ、やっぱり隼人を呼びましょうか」


 隼人を呼べるならそれでいい。

 本を読んで待っていると十分も経過しない内に来た点には笑いたくなったけど。

 本当に意地を張らずにこの家にいさせてもらえばよかったのにとツッコミたくなる。


「今更だけど迷惑をかけてごめん、せっかく史果とお祭りにいけていたのにさ」

「いや、史果がいきたがっているのに必死に止めるような人間じゃなくてよかったとしか思っていないから安心してね、そんなことよりも体調が治ったようでよかったよ」

「あんたと史果はどう感じているのかはわからないけどあんた達はお似合いよ」

「え、そうかな? もしそうだったら嬉しいけどな」


 あ、そういう方向に持っていこうとしているのが丸わかりだ。

 急にこんなことを言うようになったのは、あ、先程私に対して勢いで行動をしてしまったからか。

 なら本当のところを隠しているだけなのかな?


「ちょっと久里子――」

「あら、急に近づいてくるから思わず押さえつけてしまったわ」

「なにか隠していない? さっきといいおかしいよ」


 彼女はこちらを押さえつけるのをやめてから隣に寝転んで「いや、実際はまだ体調が微妙なだけなのよ、これは隼人が来たぐらいに気づいたの」と言ってきた。


「え、それなら寝ないと」

「うん、だけどあんた達にはいてほしい」

「私は久里子に頼ってもらいたかったからここで追いだされるようなことにならなくてよかった、本当に嬉しいよ」


 ある程度のところで帰らなければいけないから一緒にいられる時間は少なくなったとしても今日は気持ちよくいられる。

 複雑さに負けると読書もまともにできなくなるから彼女はこの時点で私を救ってくれたことになる。


「それは大袈裟だけど求めていたようだから年上として多少はね、家にはゲームがあるからそれでもしていれば暇じゃなくなるわよね」

「本でも貸してもらえれば私はいくらでも時間をつぶせるよ」

「うん、じゃあ……寝るわ」


 すうすうとすぐに寝息を立て始めたから本を借りようと動いたところで隼人がじっと見てきていることに気づいて足を止める。


「お母さんに話して一階でゲームをやらせてもらう?」

「ゲームはいいかな」

「それなら本でも借りて読ませてもらおうか」

「本もいまはいいかな」


 それなら私にはどうしようもないからとにかく本を読んで起きるのを待つとしよう。

 でも、じっと見られていることをわかった状態で読書をしたことがなかったから結局今日も集中できることはなかった。

 寧ろ隼人の方に集中していたぐらいだから人の部屋でなにをしているのかという話でしかない。


「もう」

「はは、喋りかけて邪魔をしていたわけじゃないんだから許してよ」


 体調が悪いところで頼るのは違うとわかっていても常識人の久里子にツッコんでもらいたいところだった。




「正直、昨日の夜は物足りないところもあったよ」

「やっぱりそうだったんだ」


 もやもやは筋肉トレーニングをすることでなんとかしたらしい。

 

「久里子ちゃんの家にいけて会えたんだから連れて帰ればよかったと後悔したぐらい」

「ちゃんと言って」

「だからこれからはちゃんと言うよ」

「うん、それがいいよ」


 中途半端なことをしてしまったのは私だから今度こそちゃんと最後まで守らないといけない。

 

「ということで今日は泊まってほしい」

「それならまだ十五時だけどお風呂とか済ませてくるね」

「付いていってもいい?」

「それこそなにもないけどそう時間もかからないからいいよ」


 家でご飯を作って早めの夜ご飯にするか聞いたら「僕の家で作ってほしい」と言われたからそうすることにした。

 その日にちゃんとお風呂に入ったうえにそこから汗をかかなければそれでいい。

 汗っかきではないのがよかった。


「もういく?」

「ん-夜になってからの方が汗をかかなくて済んでいいかもね」

「退屈な時間ばかりになっちゃうし隼人の家まで歩いたぐらいで汗はかかないからいこう」


 抵抗できないようにある程度の荷物を持ってから家をあとにした。

 結果を言うと調理中すらも大して暑くは感じなかったから問題なかった。

 ご飯も食べてしまえばあとは歯を磨いたら寝られる状態になっているので盛り上がるだけでいい、盛り上がらずに静かに夜空でも見ておくのでも悪くない時間になっていく。


「ふぅ、お腹いっぱい」

「美味しかったよ」

「よかった、洗い物を――」

「ちょっと外で話さない?」

「洗い物をしてからじゃ駄目なの? わかったよ、それなら出よう」


 ご両親が気になるから公園まで移動してそこで話すことにした。

 夜空とか言ったけど早めにしたのもあって前みたいに少しだけ薄暗いだけだ。

 それでも目の前をただ見つめていると「二つの意味で久里子ちゃんには風邪を引いてほしくなかった」と呟くようにして言った。


「久里子ちゃんに好きな子ができて付き合い始めた頃とは違うんだよ、だから久里子ちゃんとなんとかくっつけようとするのはやめてほしい。なにより史果にそうされることが一番悲しいんだよ」

「うん、久里子にも迷惑にしかならないからやめるよ」


 落ちていた小石を拾い上げて投げようとしてやめた。

 結局元のところに戻して今度こそ暗くなってきた空を見つめていた。

 久里子とのときだけだと思っていたけど私と二人きりのときもなるべく喋らないようにしているみたいですぐに静かになる。

 でも、気まずいわけではないからこのままでもやっぱり問題はない。

 ここで無理に話さなくても家に泊まることになっているからなのもあるのかもしれない。


「史果、いい?」

「いいけど繋いでいたら手汗をかいちゃうかもよ?」

「それでもしたいんだ」

「気にならないならいいよ」


 それから一時間ぐらいはお互いに黙ったまま手だけが繋がっていた。

 家まで帰っている最中も、隼人がお風呂にいくまでもそのままだった。


「ただいま」

「おかえり。あ、急だけど学校では敬語に戻すから、そのつもりでいてね」


 そういう切り替えが大事だと思うから。

 まあ、徐々に直していくという話が学校のときだけはに変わっているのはアレだけど。


「学校ではということは家では続けてくれるんだよね、それならいいよ」

「あとは隼人次第だよ」

「うん、頑張るよ」


 いや、気まずいというか気にならないのは外にいたときだけで彼の部屋で黙ったままだとそれはそれで変な感じになる、かといって私が一人でぺらぺら話していても空回りしているだけでしかないからどうしたものか悩んだ。


「あーもう寝る?」

「それでもいいよ」

「……もっと欲を見せてよ、そうしないと本当に寝るから」

「寧ろ欲求に正直に行動ばかりしているから史果にだって言葉で刺されそうで怖いよ」


 はぁ、上がる前に歯だって磨いてきたから本当に寝よう。

 ただ、布団は既に敷いてくれていたのもあって本当にそのまま寝られてしまったうえに止められなかったのが問題だった。

 だからベッドの上ですやすや寝ている彼を多分不満気な顔で見つめていると「おはよう」と呑気に挨拶をしてきてつねりたくなったけどやめた。


「昨日はご飯とか食べさせてくれてありがとう、だけどスーパーにいかなければならないからもう帰るね」


 七時ぐらいから頑張ってくれているスーパーがあってよかった。

 エコバッグなんかを持ってきてからでなければいけないから三十分ぐらいは時間がかかるのも開店時間的にいい。


「待って、それなら僕も一緒にいって荷物持ちをさせてもらうよ」

「隼人はとりあえず顔を洗ってきて」


 涎の跡が付いているとかではないものの切り出してしまった手前気まずくなっている馬鹿がいた。

 そもそもこちらもまだ顔を洗えていなければ歯も磨けていないから変な絡み方をするべきではなかった。

 でもまあ、結局のところ一旦家に帰らなければならないという状態になったのは感謝しかない。


「待っててくれる?」

「……外で待っているからいってきて」

「わかった」


 いまの私にとってはここでニ十分ぐらい待たされるのがよかったぐらいだった、が、五分とかからずに出てきてしまったから留まっているわけにもいかなくなって歩き出すしかなかった。

 だからまだ家に着いて顔を洗えただけでもマシになった……と思う。

 スーパーの件も無理やり出したわけではないからちゃんと必要な物を持って歩いて、店内に着いたら寧ろ少し肌寒いぐらいで体を震わせたぐらい。


「昨日の私の食材分を買って返さないとね」

「大丈夫だよ、寧ろ母さんも父さんもまた作ってほしいと言っていたぐらいだからね」

「あ、そういう嘘はいいから、お世辞を言われて喜ぶような人間じゃないからね」

「本当なのに、そんなに気になるなら本人達に聞く?」

「や、やめておくよ。さ、必要な食材も取ってきたから会計を済ませて帰ろう」


 嘘だった場合は影響力五ぐらいだけど本当だった場合は食材を返したりなんかしたら同じような状態になりそうだったからやめた。

 それでもなしにはできないから息子の彼に返していくことでなんとかしようと思う。


「持つ――」

「駄目、一緒ならいいけど」

「それなら二人で持とう」


 ということでバカップルみたいなことをしながら帰ることになった。

 よかった点は早い時間なのもあって通行人と全くすれ違わなかったこと、悪かった点は当たり前のように今度は私の家で二人きりになってしまったことだ。


「課題も終わっちゃったし本でも読もうか、ほら、小学生の夏休みには読書感想文用に読まなければいけなかったでしょ? それを思い出すような感じでさ」

「僕は毎年同じ本を読んで無理やり書いて出すだけだったけど史果は真面目にやっていそうだね」

「それが本に読むことに集中してばかりで書く方は微妙だったんだよね」


 書いては消してを繰り返して登校日になっても終わらずに学校を休みたくなった経験があるのが苦い思い出だ。

 それからはどうせ細かくは見られないと片付けてさっさと終わらせるようにした、それ以外のことで学校を休みたいと思ったことは――あった……。


「あ゛ぁ……小学生の頃の思い出したくないことが……」

「なにかあったの?」

「図書室で借りた本を読みながら帰っていたときに思いっきりずっこけて本を駄目にしちゃったことがあったんだよ、しかもなにが最悪って濡らして駄目にしたうえに鳥の糞がおでこに直撃したことなんだよね。あのときは流石に泣いたな、そのせいでお母さんからは一ヵ月ぐらい過剰に心配されるようになったのも微妙だよ」


 泣きたかったのは本を駄目にされた図書室だっただろうけどやってしまった感に押しつぶされそうになったも確かだった。

 その日の内に慌てて学校まで戻って先生に話した結果、怒られることもなく許してもらえたけど本当に心臓に悪かった。


「僕も夏休みにやらかしたことがあるよ、夏休みの宿題を持って遊びにいっている途中で急に大雨が降ってきてぐしょぐしょにしてしまったんだ。結局、先生がいるのかどうかもわからないしいく勇気もなくて登校日までそのままでね、連絡してくれればよかったのにと言われてしまったよ」

「水関連のことで似たようなことになるとは……気を付けないとね」

「そうだね」


 意識しだすと少しの間は怖くなるところは小さい頃からずっと同じだ。

 苦手のくせに怖い番組を見てトイレにいくことすら躊躇うようになるアホとしか言えないところがあった。

 人間関係ではなるべく抑えるようにしてきたから新次郎君相手には問題もなかったと思うけど彼に対してはわからない。


「微妙になったから本を読ませてもらうね」

「微妙にはなっていないけど僕も」

「うん」


 水分なんかも用意してトイレのとき以外は移動しないでいいようにした。

 今日は異様に集中できたから隼人に止められたときにはもう夕方だった。

 隼人の方は十時ぐらいに疲れてしまってやめたみたいだったからここまで我慢をできたのはすごいと思う。


「これから似たようなことが何度もあるだろうけど声をかけずに気づいてくれるのを黙って待つのはもうやめるよ、流石に天井を見て時間をつぶすのにも限界はくるからね」

「それがいいよ。さ――あいた……」


 ぐぉお……これはなかなかに影響がある痺れだ。

 立ち上がった瞬間にそれだったから目の前にいる彼に突っ込んでしまったし……。


「だ、大丈夫? 咄嗟に受け止められてよかったよ」

「ごめん隼人、大丈夫?」

「うん、僕は大丈夫だよ」


 少しの間は回復しなかったからそのまま甘えておくことにした、流石に回復してもくっついていたらアホだからくっついていた時間は短かったけど。

 それで今日も早い時間でも気にせずにご飯を作って二人で食べることにした。

 これでもやっぱりご両親的には損でしかないけど彼に対しては返せているから満足できている。


「隼人、ありがとね」

「なんに対してのお礼なのかな?」

「色々だよ」

「そっか、それならどういたしまして」


 さて、久里子にもお礼を言ってから同じように吐き出させなければならない。

 なにもないならそれでいいから意地を張って隠すようなことはやめてほしかった。

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