片足魅惑のスピードスター
僕に与えられた加護は【スピードスター】だった。
でもこの片足で何が出来るというのだろう。
武を司る家としては役立たずもいいところ。
兄からは嫌われてるし、スペアとしては妹やまだ見ぬ赤子がいる。
そして僕は、いや俺は家を出て、母方の親戚の養子になった。
武の才がなくても知識があれば、何か出来るはずだ。
前世の記憶を元に頑張ってみるか!
(あれ、また俺、何かに巻き込まれたのか?
身体が痛い、目が見えない、かろうじて人の声と救急車の音が、いや聴こえない、痛い、苦しい、眠い、寒い……)
そして俺の意識は途絶えた。
朝日が眩しい。
目が開かない。
身体は動く。
でも足は動かない。
左脚が動かないのだ。
折れたとも違う違和感。
それよりも自分の呻き声に違和感を感じる。
「子供の声?!」
目が覚めると俺は子供になっていた。
鈍痛に顔を顰め、掛けられた毛布を捲って現実を知った。
左脚がなかったのだ。
肘が残ってるのはきっと幸いなんだろう。
施術された後なのにつるりと綺麗だ。
医療技術は凄い、ではなく、此処は何処だ?
辺りを見渡す内に、誰かの記憶が流れ込んできた。
これは僕の記憶だ。
走馬灯の様に記憶は流れ込んでくる。
あぁこれは駄目だ、寝るしか。
そしてかつて俺であった僕は再び眠りについた。
どうにか復調して、明日に備えないと……
次の朝方、記憶の整理が終わった。
そして初めて会う家族に教会に連れて行かれた。
どうやら5歳になると、神から加護が与えられるらしい。
我が家アルソード家は武力に特化した家系だ。
なので、剣士や騎士等の武術に恵まれた加護があると望ましい。
兄は【剛腕旋風】という加護を貰ったらしく、早くも跡取り気取りである。
僕も兄をサポート出来る加護がイイなと思った時期はあったみたいだ。
前に並んだ子は、神官の子供らしく【快癒】の加護を貰っていた。
次は僕の番である。
神殿のアーティファクトは、その子の持つ加護を浮かび上がらせる物だった。
司祭に促され、アーティファクトに手を翳す。
光を放つと、光は収縮し文字を浮かび上がらせる。
【スピードスター】
それが僕に与えられた加護であった。
歓喜の後の落胆、家族から得られたのは称賛でなく溜息だった。
きっと僕は何もなければ瞬足で駆け、素早い動きで敵を屠る剣士になれたのかもしれない。
でも僕には片足がない。
片足がなければどうなるのか、というと左腕も杖等を必要とする為、片手では戦えないのだ。
前世の漫画では片足ながらも戦うヒーローはいたし、失ってもヒロイン達からエリクサーを貰って手足を生やす。なんてのもある。
僕は従者に、車椅子を押されながら項垂れるしかなかった。
僕にとっての加護は生きにくい足枷となった。
片足しか、ないのにね。
その日以降、家族は腫れ物に触るみたいに僕を避け始めたので、状況を見つめ直す事にした。
アルソード家は子爵家であり、辺境に近い領で魔獣も多く、魔獣や隣国の兵等と戦う武の家系だ。
領民の多くは武人を目指して生きる事が多い。
僕もそのうちそうなるのかなと思っていたようだ。
だがある日、兄に誘われたのだ。
魔獣の巣穴を見つけたから見に行かないかと。
勿論僕は嫌がったが、稽古をつけてやろうか?と言われてしまったら、従うしかなかった。
兄の一撃は痛いのだ。
ついていくだけなら大丈夫だろうかと思ったのが運の尽きだった。
巣穴から出てきたのは狼の魔獣だった。
兄は弟を盾にして逃げた。
大きな狼の魔獣が左脚に噛み付き引き千切ったのだ。
激痛の後意識が途絶え、気付いた時には自室のベッドの上だった。
大人達が巣穴に駆けつけた時には魔獣の姿はなく、爪痕や足跡から遠くに逃亡した後だったらしい。
兄は勿論僕を主謀者にしたし、僕の行為は自業自得とされた。
因みにつるりとした脚は治癒師によるものではなかった事から倦厭されていた。
遠巻きにされている事から、この家族とはやってけないなと感じた。
一人で生きていくのは難しい。
けれども自立しなければと思った。
片足なんだけどもな。
なので書庫で本を読みまくった。
うん。
スルスル入る。
どんどん入る。
コイツぬるぬる動くぞ!という感じに、内容が頭に入っていくのだ。
積み上げられていた本がどんどん読み終わっていく。
掻い摘んだ、最初だけ読んだ、後書きだけ読んだ、とかではない。
本全部を読み切ったのである。
そして、暫くして思い立つ。
考える。
思考する。
理解する。
整理する。
思い出す。
最初からの2番目の書物の◯◯ページの台詞を思い出す。
「思い立ったが吉日」
この家族から逃げようと思った。
まず、母の家系で養子を求めてる親戚は居ないかを聞いた。
僕が足手まといになるのを理解しながらも受け入れてくれる家族が欲しかった。
父の家系は同じ武人家系なので頼れない。
なので母方を頼ったのだ。
そして遠縁の子爵家の養子として僕は家を出る事になった。
遠縁のサトテラス子爵は、愛妻家であった。
が彼との間に子を設ける事が出来ないぐらい奥様は病弱であり、その為養子を欲していたらしい。
おそらく彼女が喪われても後妻を迎える事はないであろう事は、見合いの席で理解出来た。
僕の今世の両親は彼らなのだと定めた瞬間だった。
ありがたい事に、両親は僕を温かく迎え入れてくれた。
だから恩義に報いたいと切に願った。
彼らは僕に家庭教師もつけてくれたし、専属の従者もつけてくれた。
沢山勉強をしたし、父とも母とも会話を欠かさず、彼らの話も漏らさず聞くようにしている。
少しずつ、でも細々と、前世の知識をそれとなーく〜したほうがいいかも。と助言していった。
僕の言う通りに改善したら、良い結果が出たらしい。
そのたびに偉いぞー!と高い高いしてくれた。
(そろそろ恥ずかしいが)
僕はサトテラス家ですくすく育ち、自分の加護を理解し始めていた。
【スピードスター】は、何も肉体に関して特化しただけのものではないと言う事だ。
速読、理解の速さ、前世で取得した速記術、完全記憶とも取れる知識の深み、海馬から引き出される処理能力の素早さ正確さ。
それを可能とした加護でもあるのだと言う事だ。
加護は神から与えられるが、スキルは其々個人の生き様に現れ生えてくるといわれている。
ステータスに並べられたスキルは僕の心を強くした。
誰彼が武力で殴ってくるならば、僕は頭脳で殴ってやろうと、やるのだと。
そして僕は貴族が通う学園に入学する頃合いになった。
その日は何故か不思議な夢を見た。
大きな大きな狼が目の前にいた。
僕は恐怖した。
狼は動かない。
涼やかに僕を見ていた。
僕も静かに狼を見た。
あの時の事はよく思い出せない。
狼は灰色ではなかったか?
でもこの狼は白い。
突如意識の様なものが流れ込んでくる。
あの時はすまなかったと。
お陰で子を産む力を得たのだと。
聞く所によると、彼女は出産するに至り隠れていたそうだ。
人里近くであったのは、他の魔獣に食い殺されない為であったという。
空腹でもあったが、彼女は僕の魔力に惹かれて血肉を喰らったのだといった。
食べた上でなくした脚に治癒を施したのだそうだ。
僕の魔力で回復した彼女はどうにかその場から逃げて、別の場所で出産したらしい。
驚くことに彼女は聖獣フェンリルであるという。
彼女は僕に謝罪と感謝を述べると、白銀の義足を与えてくれた。
重さは右脚と同等の筋力重量であるらしく、何かしら特化した力はないという。
が生態金属らしく、歩行など不自由がない程度の物らしい。
また、義足は僕と彼女の縁らしく、繋がりを欲してのマーキングのような物らしい。
そしてひょっこりと彼女の足元から子狼がよちよち近付いてきた。
僕の周りをクンクンすると、尻尾をブンブンと振った。
彼女は子狼が僕についていきたいといっている。と、子狼を口に咥えて僕に差し出してきた。
子狼は可愛くがぅと鳴いた。
僕は何故か子狼を受け取った。
フェンリルに名前をつけてあげてといわれたので、僕は子狼にザナと名前をつけた。
(あたし、ザナ!ザナ、ご主人様についてくね!)
どうやら僕はザナと主従契約を交わしてしまったらしい。
フェンリルは去り、ザナだけが残った。
僕の顔をペロペロ舐めていた。
その朝は、まぁ、筆舌しがたい騒がしい朝となりました。
子狼が僕の上でのっかかりスヤスヤ眠っていて、そして更には義足が僕に生えていたのだから。
そして始まった学園生活。
元兄がふっかかってきたり、生徒会の書記に選ばれたり、サトテラス家が伯爵に叙爵したり、色々あるのが、どうにかへこたれる事なく頑張ってます。
続きはないです。
長期作品描く能力ないので、誰か続き描いて。(えー)
僕のルビがたまに彼やユージンや俺なのは、雄二が現世人格ユージンを指してる時と、雄二がユージンと同一化した感覚で話している、自分自身(雄二)としての感覚という差異になります。
ザナはナイト代わりとライド用です。
特にレッツパーリーしたりの武装伝はないです。
ザナはちっさいですけど、ちゃんと騎乗出来る大きさになれます。
義足も普通の義足で、足技特化とかはしてません。
彼はこれから頭脳で殴って知識で蹴り倒すので。(たぶん)
前世の雄二は巻き込まれ体質だったのでこれからも何かしらに巻き込まれる事でしょう。
この話を読んで下さりありがとうございました。




