ラブラドライト・パンドラボックス
1つ前の話「1つの決意。ムーンストーンに願がけを」の前半部分の怜奈の話です。
怜奈が暗かった訳の部分です。
周りと少しズレてしまった。皆さんも1回は経験があるかもしれませんね。
「怜奈ちゃんならどこでも上手くやれそうなのに。」
陽菜先輩から言われた瞬間におぞましい記憶たちが蘇った。
中学時代私の周りには人がいなかった。
周りは私を空気のように扱い、時にヒソヒソと嘲笑している。
私は昔から人とズレていた。
私には世界がキラキラした宝石箱のように見える。
それを他人と共有したくて幼稚園の頃から大人や友達に話していた。
雨の日には
「見て雨きれい!クリスタルがふってるみたい!」
祭りに行けば
「りんごあめってるびーみたいだね!」
なんて。大人たちは微笑ましそうに聞いていて友達も訳は分からなそうだったけど「すごいねぇ!」とか言ってくれてたと思う。
小学生になって天然石が好きな母の影響で私も天然石にハマってからはその例えがより難解になってしまった。
知名度が低い宝石の名前を出してしまったり宝石の組成の話をしてしまったり、宝石言葉を絡めてしまったり……。
優しく聞いてくれていた大人たちは段々苦笑いをしていき、友達も宇宙人を見るような目をし始めた。
思春期に入り色んなことに多感になってしまうからこそ周りの態度に困惑してしまった。
好きなことを話す時、人は我を忘れてしまう。
私ももちろんそうで1度話し始めると話終えるまで終わらない。
話し終わって相手のドン引きした顔を見て絶望するのがデフォ。
小学校を卒業した時に誓った。
「宝石語りをするのはやめよう。」
でも時すでに遅しだった。
私立ではなく公立に進んだ私。
大体の学校がそうだと思うけど小学校と中学校のメンツはほとんど変わらない。
つまり小学生で貼られたレッテルは簡単には剥がせなくなってしまっていた。
もちろん他の学区の子も入ってくるけどもう話すことが怖くなってしまっていた私は話すことを最小限にしていた。
周りも訝しげに見始め、小学校時代を知ってる子たちは私の宝石の話を広めた結果孤立してしまった。
最初は孤立するだけだったからまだどうにかなったけど一度だけでてしまった。たった一度だけ。
事件は突然起こった。
いつもペンケースに宝石を日替わりで付けていた。
その日はラブラドライト。
休み時間に隣の席の女の子が話しかけてくれた。
「そのペンケースについてるの綺麗だね!」
今なら分かる。
その子は宝石を褒めた訳ではなくてそのアクセサリーが可愛いことを褒めたことに。
でも普段話しかけられてなくて尚且つ自分のこだわってる所に目を向けられたらどうなるか。
次に見たその子の顔は思い出したくもない。
周りの視線もこちらに向いていた気がする。
そこからは地獄だった。
ラブラドライトのキーホルダーは捨てて学校に宝石をつけていくことは二度となかった。
だからこそ高校は変わろうと思ったのに。
先輩。私先輩が思うような子じゃないんです。
ごめんなさい。これからは気をつけます。
だから、もう少し隣で先輩を見させてください。
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