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1つの決意。ムーンストーンに願がけを。

ゴールデンウィーク明けの話です。

「せ〜ん〜ぱ〜い〜!テストなんてどうしたらいいんですか?!」

ゴールデンウィーク明け、中間テストからはちょうど1ヶ月前といったところ。

いつものように昼休みに来た怜奈ちゃんはしょげながら言った。

「中学もテストあったでしょ?」

「ありましたけど難易度が違いますよ難易度が!」

「まぁ……確かに?」

「数Aとかほんとやばいですよ!物理基礎だって!」

「まあまあ。落ち着いて大丈夫だよ!まだ1回目のテストだから中学の復習みたいな感じだったと思うし……。」

「中学も結構大変だったのにぃ!私この学校入るの苦労したんですよぉ。」

苦労した。その言葉にふと思う。

この学校は別に何か特別なものがあるところじゃない。

強い部活があるとか、特別な学科があるとか、お嬢様学校とか。

私も何となく学力が近くて入っただけだし。

「そういえばなんでここに入ったの?」

隣で頭を抱える彼女に声をかける。

「理由……ですか?」

私の問いにキョトンとした顔を彼女は浮かべた。

なんの理由もないやつかな?

「理由はこのリボンです!」

彼女は自分の胸元を指して言った。

「リボン……?」

私も自分の胸元を見つめる。

何の変哲もない赤色のリボン。

「ルビーみたいで可愛いなって。」

ルビー……確かに赤色だけどそんなにかな?

心の中で首を傾げながら彼女を見つめるとうっとりするような微笑むような顔をしていた。

いつもみたいに豆マシンガン(豆知識マシンガン)が飛んでくるかなと身構える。

「先輩は?」

「え?」

「先輩はなんで入ったんですか?この学校。」

豆鉄砲を食らったような顔をしていたと思う。

「うーん。意味は無いかな。学力的な?」

「部活とか入んなかったんですか?」

「部活は入りたいのなかったからね。」

運動も得意ではないし楽器とかもやったことないから入りたい部活は思いつかなかった。

中学も入ってなかったし。

「怜奈ちゃんも入ってないよね?怜奈ちゃんならどこでも上手くやれそうなのに。」

「いやいや。私変わってるじゃないですか!なかなか馴染めないんですよね〜。部活に憧れはあるんですけどね。」

あはは。と笑った顔はいつもの彼女に似ず寂しそうだった。

「……。」

「この話は終わりです!今は先輩がいるからいいんです!!」

「ねぇ。」

キーンコーンカーンコーン

部活やりたいの?と言うタイミングを無理やり消すように予鈴が鳴る。

「じゃあまた!」

いつもよりも速いスピードで彼女は帰っていった。

残された私は考える。

部活……か。

いつも私を引っ張る彼女があんな顔をするなんて。

午後の授業に身が入らないまま放課後になり図書室へ行く。

テスト勉強の時にお世話になる場所である。

いつも図書室は人がいない。

だから図書室担当の村瀬先生はことある事に話しかけてくれる。

生物担当の女性の先生でテスト勉強で分からないところも教えてくれる。

言い方は良くないが一番仲がいい人だ。

同級生も含めた学校全体で。

「失礼します。」

「あら黒原さんいらっしゃい。ゴールデンウィークはどこか行った?」

「植物園に行きましたよ。藤の花が綺麗で。」

「あらぁ。出かけたの羨ましいわねぇ。藤の花なんてもう何年も見てないわぁ。」

何かを思い出すように先生は遠くを見つめている。

「でも一人で行ったわけじゃないんです。誘われて行っただけで……。」

「あら。そういうのも今しか味わえないわよ?」

ふふふ。と先生は笑う。

確かに。なんて笑いながら柔らかい風が当たる明るい窓際の席に座る。

参考書を開きながら問題を解き始めるが、昼間の怜奈ちゃんの顔がチラついて離れない。

部活……ね。

「どうしたの?」

知らない間に先生の方を見ていたのだろう。

なんでもないです。と言おうとしたのに口が勝手に動いていた。

「部活って良いですか?」

「え?」

「あっいやなんでも……」

「いいじゃない!興味あるの?何部?」

「あっあっ違うんです!」

胸の前で手をぶんぶん振る。

「そんなに否定しなくてもいいじゃない笑」

「……新しく出来た友達が部活に入りたいみたいなんです。」

「うん。」

優しく村瀬先生が相槌を打つ。

「入らないの?って聞いたら私は馴染めないから。って言うんです。」

「うん。」

「でもその顔がすごい悲しそうで本当は部活やりたいんじゃないかって思って。」

「うん。」

「でも私じゃどうしようも出来ないなって思っちゃって。私も部活入ってないし。って。」

「うーん。」

吐き出しきった私を見て先生は真剣に考え出した。

「いっそ作っちゃえばいいんじゃないかしら?」

「え?」

「お友達ってことは何か共通点があるんでしょ?そこから部活を作っちゃえばいいのよ!」

「いやいや今更ですか?!」

「別にまだ3年生じゃないし大丈夫よぉ。」

「そ、そんなもんなんですか……。」

部活創立。私の頭になかったものだ。でも確かに作ってしまえば?いや何部にするんだ……。

「そんなに思い悩まなくても〜。まぁまた興味が出たら言ってちょうだい?」

「ありがとうございます。」

もうそこからはテスト勉強どころじゃなかった。



2週間後。

私はまだ悩んでいた。

部活……作る……作らない……。

花占いにでも縋りたい気分だ。

「先輩!どうしたんですか?」

心配そうに覗き込まれる。

相当考え込んでいて頭がおかしくなってしまったのだろうつい聞いてしまった。


「怜奈ちゃん……部活やりたい?」


しまった!!!

言ってから気づく。

ガチやらかしだ。

恐る恐る彼女の顔を見ると少し泣きそうな顔をしていた。

「だ、大丈夫?!」

「やってみたいですけどいいんです。変なやつって言われるよりいいんです……。」

彼女は一体どんな経験をしてきたのだろう。

私は意を決して言った。

「部活。作ろう。」

「え?え?!」

「一緒にやろう。部活。」

この2週間。悩んでばっかだった訳じゃない。

彼女はいつも私にニコニコ話しかけてくれるしゴールデンウィークも連れていってくれた。

私も先輩として何かしてあげなきゃいけないんじゃないか。彼女の宝石のような笑顔を見ていたらいつの間にか私も笑えるんじゃないか。

そう思った。

私も殻を破るべきなのかもしれない。

決めた2週間でもあった。

「作れるんですか……?」

「詳しいことは分からないけれど図書室の村瀬先生に聞けばなんとかなる……と思う……。」

だんだん声が小さくなって恥ずかしい。自信はやっぱりないのだ。

目を少し逸らすと彼女のペンケースに見慣れない石が付いていることに気づいた。

「あれ。そんなの付いてたっけ?」

「え?よく気づきましたね。ムーンストーンって言うんです。石言葉に幸運って意味があるのでテストの願がけ……的な感じで持ってきたんです。恥ずかしい……。」

幸運の石か。

「じゃあ私も願がけする。部活がちゃんと作れますようにって。」

驚いたような顔を彼女は浮かべた。

「2人でテスト乗り越えて部活も作ろう!」

ぱああっと彼女の顔がみるみる明るくなる。

「はい!」

「終わったらムーンストーンのこと教えてね?」

「いいんですか?!」

「なんかゴールデンウィークに聞いたのが癖になっちゃって……。」

「沢山勉強してきますね!」

「じゃあ元気を取り戻したところで勉強頑張ろ!」


テストまであと2週間。

部活創立まであと???日。


部活やってましたか?私は高校時代茶華道部でした。

部活の設立ってすごいですよね。

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― 新着の感想 ―
∀・)部活をつくるか。いいね。最高の思い出になるぜ。 ∀・)この作品、ノリがなんか大好きです。 ∀・)希望を言ってイイなら最後まで見とどけたいなぁ。
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