4.初めての魔王戦
俺達は、結局アッシュ王国で遊びの限りを尽くしていた。
ただ遊び呆けているだけでもなく、俺達二人は両親の情報を掴む為に動いていた。
しかし、未だに何の情報も得られず、減っていくのは時間と俺達のお金だけだった。
「こんな全部が大きい王国で何の情報も無かったら、どこ探しても一生会えないよな〜〜。やっぱり、もう死んでんのかな?」
両親の情報が見つからなかったのは残念だ。
だが、レイラと一緒に修行をすると共に感じたことがある。
それは、レイラには剣の才能があるということ。
戦いをする度に、目に見えて成長している。
このままいけば、本当に勇者になるのも夢じゃないだろう。
そこでレイラには、今本格的な修行をさせている、レイラ本人も前までは嫌がっていたが、今では何だかノリノリだ。
「――俺も置いてかれる前に、魔法の練習でもするか!」
剣の才能はレイラ程じゃない、なら他の部分で勝とう。
昔はあんなに嫌だった魔法を鍛える事にした。
島を出るために修行を頑張ったおかげで修行方法は分かっている。
そうして、コツコツと魔力量と使える魔法を増やしていた俺は、宿屋に帰る途中。
その時、王国の壁の外からドカンと音がなった。
次の瞬間、魔王軍が壁の外から入り込んで来んできたのだ。
魔王軍はこの国の人達を無視して真っ直ぐ王城を目指している。
それが分かった瞬間、俺は王城に向かった。
なぜ魔王軍がこの国を狙っているのか分からない。
だが、今の時間は王城の兵士にレイラが剣技を教えてもらっている最中だ。
早く向かわないと!!
「――今、向かうからなレイラ!」
城の修練場まで辿り着いた。
しかし、兵士は魔物との戦闘中で話を聞ける暇はなく、レイラの姿は無かった。
「はぁぁぁぁーー!!」
その時、レイラの気合いを入れるような声が聞こえた。
殺伐とした中、微かにレイラの声がした方に急ぐ。
そこでは激しい戦闘が繰り広げられており、レイラが魔物と互角にやり合っていた。
他の兵士達は既にやられて残るはレイラ一人。
「――インシェントクロス!!」
レイラの強力な技が魔物の体が引き裂く。
そして、最後の一体の幹部らしき魔物を倒し、魔物達から王様や偉い人達を守り切った。
「助かった、お主が居なければ魔物にやられていた。感謝してもし足りない、何か出来ることがあればなんでも言ってくれ!」
この人はアッシュ王国の王様でめっちゃくちゃ偉い人である。
レイラは早速勇者としての第一歩を踏み出したって訳だ。
「いえ、僕はいつも兵士さんのお世話になっているので特には」
レイラは本当に欲がないな〜〜と言うか。
「助け必要無かったのね……」
レイラが魔物を倒し、全てが解決したと思いその場の全員、気を抜いていた。
次の瞬間、全身の毛が逆立つ感覚がした。
「まだ終わっていないようだな。しかし、まさかこんな所に居るとは……」
その魔物は突如として目の前に現れた。
白髪の長髪、鍛え抜かれた身体と長身、男前な顔つきの男。
一目見ただけでわかる。
力の次元が違う、天と地がひっくり返ってもこの魔物には勝てないだろう。
圧倒的な魔力量、魔力の質、身体どれもが異次元。
「私の名は、ヴォルテックス。魔王軍の頂点に立つ存在、魔王だ。鱗を持つ存在、まさかまだ子供とはな嬉しい誤算だ! ――貴様にはここで消えてもらう!」
鱗を持つ存在? 何故その事を! だが今はそんなこと考えてる暇はない!
「爆裂魔法最上位フラットホール――グランドバースト」
その魔法は、城の半分を削り取り俺達も一緒に死ぬ……はずだった。
しかし、間一髪の所でレイラ、王様は助かっていた俺の魔法によって。
「よく避けたなキサマ」
「……どうも」
俺の魔法によって全員を何とか安全圏まで避難することはできた。
だが二度目は避けれない。
「アドラー、僕の事は良いから逃げてくれ頼む。逃げれるのは君だけだ! くらえ、インシェントクロス!!」
「行くなレイラーー!!」
そう言いレイラは、ヴォルテックスに特攻を仕掛けた。
しかし、インシェントクロスはヴォルテックスの
身体に傷一つつける事はできなく、すぐさま胸を手で貫かれた。
その瞬間、レイラの体が鱗で包まれ人間の形を変えまるで絵本で見るドラゴンのような姿になった。
「グオオォォォーー!!」
「正体を現したな。化け物が!」
そこからは地獄だ。
ヴォルテックスとドラゴンの姿になったレイラの戦いは周囲を巻き込みアッシュ王国は火の海になった。
レイラは俺より苦手だった魔法を使いこなし、魔王と最上位の魔法が撃ち合い。
最後にはレイラの体は動かなくなり戦闘はヴォルテックスの勝利で終わった。
「我の勝ちだ、これで脅威は居なくなった!! はは、ハッハッハッ!!」
ヴォルテックスはそう言い高笑いをあげながら消えて居なくなった。
空から王国全体を見渡す。
以前までの王国はそこにはなかった。
俺は何もできなかった。
仲間なのに勇者なのに。
見ている事しかできなかった。
そんな事を考えている間に俺はすぐにレイラのそばに近づき回復魔法で助けようとした。
――が、もうぴくりとも動いていなかった。
「――そのドラゴンのせいだ、俺たちがこんな目にあったのは、早く仕留めるんだ、絶対に許さない!! 殺せーーッ!!」
僅かに生き残ったアッシュ王国の国民がレイラに向かって次々と罵倒を浴びせ武器を持ち殺気が満ちた目で睨んできた。
俺は身の危機を感じ、空を飛ぶ魔法でレイラの体を持ち、飛び去っていった。
「逃がすなーー!! 絶対に捕まえろーー!!」
後ろから聞こえる殺伐とした声。
レイラのドラゴン化。
魔王ヴォルテックス。
俺の頭の中はもうぐちゃぐちゃだ。
何が起きたのか、そんな考えが巡るが心の中は後悔で埋め尽くされていた。
もしあの時、島から出ずに修行だけをしていたら、こんな事にならなかったんじゃないか。
村から連れ出さなかったら、レイラは死ななかったんじゃないか。
俺がもっと強ければこんな事にならなかったんじゃないか。
レイラと過ごしたのは一ヶ月程だったが、一緒に過ごした日々は楽しく、多分初めての友達だったはずだ。
心の底から後悔した、それと同時にある思いが浮かんだ。
―――――――魔王を殺す……ッ!――――――
見ていただきありがとうございます。
次回から次の章に入ります。