愛しのお兄様が悪い婚約者にたぶらかされてる!悪戯っ子な公爵妹はシスコン兄からの溺愛を守る為に兄の婚約者を婚約破棄に追い込む。
私の名前はサリア・クロフォード、とある高名な侯爵家の令嬢だ。
私には愛するお兄様がいる。
名はレイスと言い、金髪のさらさらヘアーの美しい自慢のお兄様だ。
趣味・特技は乗馬で狩りの腕前も凄いの!
……そんなお兄様にも当然婚約者が出来る訳で、この女が最悪ったら最悪の悪女なの!
まず家柄が不釣り合い!あの女のデュナミス家は数ある下っ端貴族のひとつでしかない。
唯一の取り柄と言えばダイヤモンドの鉱山位かしら?
でもウチはお金に不自由してないんだからお兄様がそんな物に目が眩む事はない。
となると容姿だけどこれも並。
私の美しい金髪には遠く及ばない長いだけの黒髪。
華やかさゼロで地味ったりゃありゃしない。
となると弱みでも握っていたのでしょう、下賤な下級貴族らしい汚いやり方ですこと。
そんなお兄様もさぞ苦痛だったのでしょう、私に渾身の愛を注いでくれました。
私が成人してお兄様が有力なポストに付けば兄妹での婚姻も可能になるはず。
それまではこの女に婚約者の座を譲らなければいけなかった。
「ああ、なんて浅ましいの!」
私は日々のこの女の横暴っぷりに憤慨していた。
やれ誕生日を祝えだのやれお散歩につれてけだのやれお買い物についてこいだのしつこいったらありゃしない。
どれだけ私のお兄様を独占したいんだろうか。
しかしお兄様はいつも私を優先してくれた、当たり前よね!
そしてある日の事、ついにあの女は一線を越えた。
「あ、あの、私達の婚約記念日の記念品……」
婚約者もどきの女はあろうことかお兄様に擦り寄ってきた。
婚約者の地位でいられるだけでも有難いと思いなさいよ!
愛しのお兄様とは言うと相応の対応をしてくれた。
「ああ、今日はサリアの誕生日だったね。ほら、ダイヤのネックレスだ」
「ありがとうございます、お兄様!」
あの女の鉱山で取れたダイヤで作った物なのでちょっともやっとするが、お兄様のプレゼントとなればこれ程嬉しい物はない。
それを見た婚約者もどきはなんと私のお兄様に逆切れしてプレゼントを投げつけたのだ!
「な、何をする!」
「あなたの御心には妹しかいないのでしょうね。この婚約、破棄させていただきます!」
「待ってくれ!僕は君を愛してるんだ!でなければ没落貴族である君と婚約する訳ないだろう!」
ああ、なんと浅ましい。
この女は婚約を盾にお兄様を脅迫しているのだ。
記念日を祝わねば婚約破棄すると!
なんて意地汚い小物っぷり!そこまでしてお兄様に構って欲しいの!?
そもそも下の立場から婚約破棄するなど許されない物だと分かっているのだろうか?
私はこの恥知らずの婚約者気取りに憤慨していた。
「愛しているですって?私のダイヤモンド鉱山が目当ての癖に!」
「そ、それは……」
何故そこでつまるの?ダイヤモンドなんて捨ててもいいじゃない。
しかし逆を言えばこれだけがあの女の強みである。
私は秘密裏にお抱えの御庭番に命じて鉱山に爆薬を仕掛けた。
当然鉱山は崩落し、あの女の唯一の財産は無に帰した。
「鉱山が無くなった以上、君と婚約する理由はない」
「そんな……」
あの女から婚約破棄されるのとお兄様から婚約破棄するのとでは罪の重さが天と地程違う。
その後あの女は無事婚約破棄されて私とお兄様は蜜月の日々を過ごした。
その後あの女がどうなったって?婚約破棄されたんだからお家追放に決まってるでしょ。
しかも自分から婚約破棄を迫って脅迫まがいの事をした挙句、その後日には大事なお家の財産の鉱山が閉鎖ですもの。
誰のせいかは猿にもわかりますわよね?
私の家でしたら恥に耐えきれず自害するか処刑物ですわ。
向こうのお家も随分と甘い事。
まあとにかく、家名を汚した者の末路はそういう物よ。