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序章

「また個体値が低い子だわ!また性交しなくちゃいけないのー」

妻がリビングに入ってくるなり、病院から送られてきたカルテを投げ捨てながら言った。どうやら今回の赤子は期待通りの個体値を持っていなかったらしい。

「やっぱりあなたの個体値がすこし低いからかしら?妥協せずにもっと個体値が高い人を選べばよかったなー」

ちくりと刺すような嫌味に耐えきれずに私は思わず「個体値は女のものが遺伝しやすいってテレビで言ってたぞ」と言ってしまった。

すると「あら?私の個体値は高い方よ?それに今回の子の個体値で低かったのは身長と知能よ?どちらも私はAなのだから遺伝したのはあなたの個体値よ。それに〜」

始まってしまった。妻は私より知能の個体値が高いのでとても口では勝てない。私はうんうんと頷きつつ妻の小言が終わるのを待った。

「とにかく今度は個体値高い子を作れるように頑張らないとね。そろそろ私たちも歳だし。あなたもそろそろ性交にはあきあきしてるでしょ?」

そうなのだ。私たちはもう25歳だというのに未だに産む子供を決めれてない。世間一般の家庭では23歳の時に産む子供を決定しているというのに。それに性交にもあきあきしているのも事実だ。

「分かったよ。次は頑張ろう。」

と言って私は自分の部屋に逃げた。



部屋に戻り、やるせない気持ちでベットに寝転んだ

「個体値なんて見えない方がいいのに・・・」と一人呟いた。

人の個体値が見えるようになったのは80年ほど前のことだ。科学の進歩により<才能>と呼ばれていたものが具体的に見えるようになり、自分の伸ばすべき分野がわかるようになった。だがその人の劣る能力も見えるようになるのにそう時間はかからなかった。そして40年ほど前にまだ母親のお腹の中にいる赤ちゃんの個体値もわかるようになってからは人々は出来るだけ個体値のいい子供を産むべく俗に孵化マラソンと呼ばれる行為を行うようになった。

孵化マラソンとは生まれてくる赤子の個体値が低かったり希望通りではない場合流産させ、希望の個体値の赤ちゃんができるまで子作りし続ける行為のことだ。

当初は母体への負担や倫理的観点から問題視されていたが個体値の高い子供と低い子供の決定的な差が明らかになってからはだれも問題視しなくなった。

かくいう私も孵化マラソンの末に生まれてきたのだが、両親が途中で半分諦めてしまったため身長と知能がCと低い。

「悩んでも仕方ない。とりあえず仕事するか・・・」

私の仕事は絵を描くことだ。私の個体値は手の器用さとセンスがSと高いので幼い頃から絵について学ばされた。お陰で絵一本で生活できている。さらにありがたいことに多くの人が私の絵を称賛し価値をつけてくれる。

さらさらさらと注文の絵を書き上げ、依頼主に送った。

依頼主は「さすがだ。特に色使いが天才的だ。といっても君のセンスの個体値はSだから当然か笑」とコメントしてくれた。どうやら依頼主にとって色使いはセンスらしい。

読んでくださりありがとうございました。

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