探索者になります→初めての攻略です
皆さんこんにちは
二話目をお読みいただき有難うございます
次話の投稿は明後日の予定となっております
では、『第2話』お楽しみください
バットを片手に意気揚々と潜っていった珱霞であったが、30分ほど過ぎた今でも魔物を見つけられないでいた。
それと言うのもFランクの迷宮の場合、一般人とまでは言わないが娯楽で潜っている人も多いため、朝早い時間でも1層のあたりだと魔物がリポップしていないことも稀にあるのだ。
珱霞は運悪くその日に当たってしまった。昨日が日曜だったのも大きな原因であろう。
(出来れば1階層で戦っておきたかったのだけど‥‥仕方ないか)
いつまでも1階層で蹈鞴を踏んでいるわけにもいかない。今日の目標は、最低でも5階層の踏破だ。今週中には魔法も一つは使えようになりたい。
それから珱霞は10分ほどかけて下へと降りていった。
走れば5分とかからずに着いただろうが、ここで必要以上に体力を使うのは得策ではないと考えたのだ。まだ今日は長い、それが大きかった。
「ここが2階層か。1階層とそこまで変わらないみたいだな」
北浦迷宮は洞窟型の迷宮だ。迷宮にもいくつかの種類があるが、小さな迷宮には洞窟型が多い。逆に大きな迷宮だといくつもの種類が混合されているのが多いとされている。
まあ、実力的に今のところ洞窟型以上は無理だけどね。
(さて、この階層では魔物を見つけたいところだな。流石にここより下の階層に、まともな装備もない状態。なおかつ魔物との戦闘経験も皆無な状態で臨むのは少し怖い)
北浦迷宮は1階層と2階層にはゴブリンとスライムしか出ないらしい。なので、最初に臨む迷宮としてはいいと思ったのだが‥‥流石にここまで魔物が出ないとは思わなかったな。
それから10分ほど彷徨い続け、ようやく一体目の魔物を見つけることができた。
「ゴブリンか」
子供位の身長で、緑色の身体、手にはナイフを持った醜い化物だ。
「グギャ?ギャギャギャ!」
珱霞に気付いたゴブリンは、ナイフを振り回しながら珱霞へと近づいていった。
珱霞はナイフを軽々と躱すと、振り向きざまにバットを振るった。
バットはゴブリンの後頭部を捕らえ、その一撃で死んだのかゴブリンは【魔石】のみを残して消えた。
「まあ、ゴブリン相手だとこの程度なのかな?それに、思っていたよりも気分の悪さもないな。始めて殺したから、吐き気くらいはあると思ったけど…まあ、こんなところで吐くよりはましかな」
予想よりもはるかに弱くはあったが、取り敢えず落ち着いて1対目を倒すことができた。
「“ステータス”」
【夜冥 珱霞】
Lv.1
Exp.5/100
HP 100/100
MP 100/100
物攻 10
魔攻 7
物防 8
魔防 5
俊敏 9
運 ⒓
・スキル
武具適性・魔法適性・鑑定
・称号
なし
「ゴブリン一体で貰える経験値は5か」
レベルが自分の方が高い場合には、貰える経験値が減るしパーティを組むと、人数で割られるからな。小数点以下になってしまうときは、貢献度に寄りだそうだ。
ゴブリンのレベルとステータスは、僕達地球人とはかなり変わっているらしい。僕達のレベルよりも高いが、ステータスは中学生でも勝てるレベルだそうだ。
「まあ、今のステータスでも十分に、余裕をもって戦えることは分かったな。ここからは3層の敵とも戦ってみて考えるか」
途中、2体のゴブリンを倒し、3階層へと降りていった。
「え~と‥‥ここは、人が入っているんだったよな?」
3階層に降りた矢先、見たのは一面に広がるスライムの群れ(?)だった。
「一体一体倒していくしかないのか…」
一体一体バットで殴り、スライムを倒していく。
スライムのステータスは、〈物防〉を除いてゴブリンよりも低いらしい。確かに〈物防〉のステータスはゴブリンよりも高い様だ。
「まさか、一体倒すのに2回も攻撃が必要だとは‥‥途方もないな」
床一面に広がるスライムの群れを見て、ぽつりとそう呟いた。
~1時間後
「『貫け〈水針〉トリプル』」
珱霞は運のいいことに数10体スライムを倒したところで【水魔法:レベル1】の魔法スクロールを手に入れることができた。
レベル1で使えるのは主に3つだ。今使った〈水針〉、簡単に使えるだろう〈水球〉、最後に〈軟水〉。先の2つは攻撃用で、最後の一つは飲み水の確保に使える。また、簡単な応急処置には使えるだろう。
「これで最後」
〈水針〉のMP消費量は、一発につき3。MPは10未満になると体調不良になることを考えると、安全面も考えるとマックスの状態でも20発から25発程度しか撃てない。今使ったのは合計で18回。回復量がどの程度かは分からないが、半分以上を使ったことになる。
それはそうとして、スライムのドロップを集めるか。
閑話休題
スライムのドロップを集めるのに20分近くかかってしまった。
取れたのは、スライムの【魔石】38個と、【スライムゼリー】が27個だ。つまり合計で66体ものスライムを倒したことになる。
「数だけ見るとそこまで多くは感じないが、結構広がっていたという事か」
スライムの魔石の売却額は50円、スライムゼリーは200円だ。ついでにゴブリンの魔石は70円だ。
つまり、今のところの稼ぎは7510円だ。
さてステータスは…
【夜冥 珱霞】
Lv.2
Exp.26/200
HP 100/150
MP 50/200
物攻 13
魔攻 11
物防 9
魔防 6
俊敏 10
運 13
・スキル
武具適性・鑑定
魔法適性
¦—水魔法:レベル1
・称号
なし
「レベルが上がったのか。あまり実感が湧かないな」
レベルアップによるステータス上昇は固定値ではなく、その時その時で上がり幅が変わる。ただ、運はレベルに関係なく上下するらしい。
「今の時間は‥‥丁度お昼過ぎたくらいか。ここらで休憩を取っておくとするか。今日は平日だからあまり人の入りも多くないだろうからな」
平日の人の入りは休日に比べると10分の1くらいにまで減少するらしい。
今日は5時ごろには出ようと思っているので、4時間と少ししか時間が残っていない。
昼食を取った珱霞は4階層へと進んだ。
この迷宮は5層ごとにいるボスを除いて、スライム系とゴブリンしかいないとされている。ボスはゴブリンの上位種だそうだ。
「4階層ではさっきみたいな大量発生が無くてよかったな」
4階層は上の3層に比べてレベルが3から5位上らしい。ゴブリンとスライムの1レベルごとのステータス差はそこまで大きくはないが、油断していい相手ではない。
(元のレベルは3から5の間だったから、ステータスは倍に…なる訳じゃないか。僕達人間のステータスも、1レベルごとのステータスの上がり幅なんてその時によりだし、1レベル上がるごとに1レベルの時のステータスが上乗せされるわけじゃないからな。ま、倍くらいのステータスなら、多分問題ないけどな)
スライムとゴブリンが相手ならば、レベル差が10以上にならなければ大きな問題にはならないだろう。
「お、出てきたか。さっきMP確認したら、60と少し回復していたことを考えると、1分当たり最大MPの100分の1だよな。なら、1時間当たり20発なら問題ないな。〈水針〉ダブル」
「グギャ!?」
「これで終わり、っと」
両足を的確に撃ちぬき、何があったのかも良く分からずに前に倒れたゴブリンに近づき、頭をバットで砕いた。
ゴブリンは魔石を残して消えていった。スキルオーブを落としてくれると有難かったが、それは高望みだろう。
「まあ、ゴブリンはこんなものか。スライムは魔法で一撃だしな」
スライムの倒し方は核を壊すことだが、打撃系の武器ではスライムには相性が悪すぎたのだ。つまり、バットでスライムと戦っていたことが莫迦な行為であったわけで…まあ、これは置いておこう。気づいたのなら、それを直せばいいだけだ。まあ、武器なんてバットしかないけどな。
「実力的にはこの階層でも余裕みたいだな。あとは押しつけが無ければ…あ、これフラグかな?」
押しつけと言うのは、上位の実力者が下位の者に対して魔物を大量に連れてくることを指す。時稀に、下位の者が実力以上の数を抱え込んで逃げるときに、他の人に被害が出た場合にも使われることがあるらしい。
まあ、そうそうあることじゃないはずだし、大丈夫だろう。珱霞はそう、楽観的にとらえていた。
「まさか、こんな低ランクの迷宮にも押しつけ屋がいたとは‥‥知らなかったな。だから3階層にあそこまでスライムが溜まっていたのか?」
こんなことを話しながらではあるが、現在珱霞は大量のゴブリンの群れに追われている。目算でも100体以上はいるだろう。最後列が見えていないので、実際の数は全く分かっていないのだが。
こうなったのは15分ほど前まで遡り、あと少しで5階層へと差し掛かるところだった。
少し気が抜けていたのかもしれない。目の前から聞こえてくる、大量の足音に気付かなかったとは。
その先頭に居たのは、Cランクの迷宮でも十分に通用するような装備を持った、2人組の探索者であった。珱霞はとっさの判断でその2人の顔を写真に収めはしたのだが、Cランク迷宮にも通えるレベルとはステータスの差も大きく、珱霞にゴブリンの群れを押し付けると、全力で2人は逃げ出したのだ。
こういった行為をする人間のことを押しつけ屋と呼んでいる。この行為がバレた場合には殺人未遂で捕まるのだが、基本的にはばれない事の方が多いのが現状だ。
「少しずつでも減らさないとだめか。まずは足止め程度にはなるか?〈|水針〈ウォータースピア〉〉クアッド」
ゴブリンは先頭に一体、その少し後ろにバラバラに3体がいた。その先頭の4体を転ばせることによって、少しでもゴブリンの進行を遅くしようとしたのだ。
目論見は成功した。ゴブリンのあしは短いため、かなり体は細いであろうゴブリンが倒れていても当たってしまうだろう。それに引っかかって転んでくれれば、かなり楽だったのだが、流石にそうはならなかったようだ。
「動きが止まればこっちのもんだよ!」
珱霞はゴブリンに向かって駆けだし、前に倒れているゴブリンを踏み台にして飛び跳ねた。
ゴブリンの頭を足場にしながら、一気に後ろにまで駆け抜けていく。その間も、倒せるゴブリンは倒していく。
5分もしないうちに最後列へと辿り着き、後ろから1体1体頭を殴って倒していく。
「半分くらいか?」
10分くらいが経ち、ようやく半分と言ったところだろうか?まだ、半分は過ぎていないだろうか?数が多すぎて、そこのところがどうなのか分からない。
すでに100体以上倒したが、一向に終わりが見えない。1分ほどで体勢を立て直し、攻撃を再開してきたので、そこからは少し倒すのに手間取って時間がかかってはいるが、それでも1体に対して10秒もかからない。
「〈水針〉クィント」
足元を狙っても、今度は走っているわけでもないのであまり意味がない。そこで、今度は目を狙った。
失明しなかったとしても、痛みはかなりあるのでしばらくは戦いに参加できず、味方の邪魔にもなると思う。
そして珱霞は途中でゴブリンの落としたナイフでゴブリンの首を的確に刺していく。
「139体。あと何体だ?」
珱霞がそう言いながらゴブリンを睨むと、ゴブリンはすくみ上ったように動きが止まった。
(?怯んだのか。もしかして)「“ステータス”」
【夜冥 珱霞】
Lv.4
Exp.200/400
HP 200/250
MP 84/400
物攻 20
魔攻 17
物防 13
魔防 10
俊敏 15
運 16
・スキル
武具適性・鑑定
魔法適性
¦—水魔法:レベル1
・称号
小鬼殺し
【小鬼殺し】
条件
・レベル差が10未満である(下限無し)
・ゴブリン系の魔物からダメージを受けずに100体以上連続で倒す(間が30秒以上空くとリセット)
効果
・小鬼系の魔物に対してダメージが1.3倍(常時)
・小鬼系の魔物に対して【怯え】の状態異常を付与(任意)。ただし、レベル差が10以上の時は発動しない
「これが理由か。ゴブリンのレベルは5~10だから怯んだのか。じゃあ、もっと早くいけるか」
珱霞はゴブリンの間を縫うように走りながら、ゴブリンの隣を通るときに首を切り裂いていく。規則性なく動き続け、ゴブリンを次々の殺していき、5分後。全てのゴブリンを倒すことができた。
「数は352体か。“ステータス”」
【夜冥 珱霞】
Lv.6
Exp.365/600
HP 210/350
MP 87/600
物攻 25
魔攻 22
物防 15
魔防 13
俊敏 19
運 16
・スキル
武具適性
¦—棍術:レベル1
魔法適性
¦—水魔法:レベル1
鑑定
・称号
小鬼虐殺者
【小鬼虐殺者】
条件
・小鬼殺しを持っている
・レベル差が10未満である(下限無し)
・小鬼系の魔物をダメージを受けずに300体以上連続で倒す(30秒以上間が空くとリセット)
効果
・小鬼系の魔物に対してダメージが1.8倍(常時)
・小鬼系の魔物に対して【恐慌】または【怯え】の状態異常を付与(任意)
「称号の取得方法はかかれるのか。でも、この数になるとかなり大変だよな。それに、この条件だとソロ以外では大変だろうし、パーティにレベルが高い人が入っていると失敗になりそうだよな」
事実、この称号は既に発見されていて、パーティに相手よりもレベルが10以上高い人がいると失敗になることが分かっている。
「今日は疲れたし、5階層に降りるだけ降りて、すぐに戻るとするか」
5階層へと降りた珱霞だったが、その後は直ぐに引き返した。
理由は疲れたこともあるが、先程の押しつけ屋を協会に報告するためである。
そして2時間ほどかけ、珱霞は地上へと生還するのであった。
最後までお読みいただき有難うございました
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