夢だと信じたい
「でさでさ~♪聞いてよ~♪ハル~。ハルが来ない間、暇で暇で仕方がなくってさ、それで俺何してたと思う?ねぇ、ねぇ!気になる?気になる~?」
「………。」
「あ♪やっぱり気になっちゃった?だよねだよね~♪気になるよね~♪じーつーはー♪」
神様、仏様、その他数多の聖人達よ。
一体全体どうしてこんなことになったのでしょうか、、、
どうして私が
「ハルの為に新作の歌、作っちゃいました~♪イエイ♪発売は~って、俺死んでるから発売なんて出来ないんだった♪うける~♪あ、今のは故人ネタだって!ハル、ノリが悪いぞ。ここは笑うところ!」
故人の相手をしているのでしょうか、、、、
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遡ること、1ヶ月。
私こと、羽山 陽は何処にでも居る、本当にごく普通の27の女だった。職業は幼稚園教諭。毎日子どもに振り回され、噛まれたり、叩かれたり、かんちょうされたり、こちょこちょされたり、頭突きをされたり、鼻水をかけられり、鼻水を私の服で拭かれたり、排泄物の世話をしたり、嘔吐の世話をしたり、保護者対応をしたり、職場の人間関係で頭を悩ませたりエクセトラと、毎日が忙しなく、でも充実した日々を送っていた。
そこまでは良かった。そう、そこまでは。
その日も何時も変わらず仕事を終え、何時も同じように帰宅、ご飯を食べてテレビを観て、お風呂に入ってはい、お休みなさいと、寝た。
そう、私は寝たんだ。何時も同じように只寝たんだ。
お気にいりの抱き枕をお腹の上に乗せて寝た、、、、筈だった。
筈だったのに、、、、
「あれ?君は誰?あ、君ももしかして死んじゃった系?」
やたらとテンションの高い故人と遭遇しました。
これは、、、、夢、、、、?
「ちょっと~、無視するとか酷くない?」
「…………。」
うん。きっとこれは夢だ。
「おーい、ねえ聞いてる?おーい。」
「………。」
日々の忙しなさが見せた変な夢だ。
「んもう!聞いてないならもう勝手に自己紹介をします!」
「………。」
やたらとリアルな、でもヘンテコな夢だ。
「笹原 駆生前23歳!職業はアイドルでした!趣味は人間観察、仕事仲間と馬鹿をすること!お酒を飲むこと!あ、アイドルなんで彼女はいません♪彼女募集中♪なんちゃって、死んでるから無理じゃん♪うける~あ、これ故人ネタだよ♪ほらほらここ笑うところ!」
「………。………は………?へ…………?」
夢、、、、だと思ったんだけどな~。
「え、、、ちょっとどういうこと!?え、何で駆くんが目の前に!?え、、、、、私、死んじゃったの!?」
突然の展開に私の思考回路はショート寸前。
今、目の前にいるのは今をときめく若手アイドルグループのメンバーの1人、笹原 駆、本人だった。
「いやいや、それは俺が聞きたいところなんだけど。俺って死んじゃってる系だからずっと1人で此処に居たのに突然君が現れてさ、びっくりしてるのはこっちなんだけど。」
そう、笹原 駆は死んだ。
人気アイドルの突然の死。
毎日のように彼の死の特集を取り上げられ、多くの人間が、早すぎるアイドルの死を悼んだ。
そんな彼が今、目の前にいる。
………と、言うことは………?
イコール私も死んだ…………?
「え!?嘘でしょ!?いーやー!まだ死にたくない!!」
「ちょっと~、故人の前で死にたくないはタブーで~す。」
頭が追い付かない。
いや、私は死んでいない、、、筈だ。
そう、死んでなんかいない、、、筈だ。
だったらこれは、、、?
今目の前で起きているこの現状は一体、、、?
「………。よし、夢なら早く醒めておくれ…………。」
「わーお、現実逃避されちゃった。でも残念、これは夢ではありません♪夢だけど~?夢じゃなかった♪ってね♪あ、これ某有名映画の一節だよ♪俺好きなんだよね~♪あの監督の作品♪」
このやたらハイテンションな故人が何故私の夢の中に、、、?
考えても当然答えは見つからない。私に残された道は只1つ。
それは、
「必殺、現実逃避!なるようになれ作戦!!」
「うわ~なんか頭悪い発言してる~。」
現実逃避をすること。
若干、否かなり白い目で故人に見られたが、気にしたら負けだ。それに良い様に考えれば、手の届かない存在だったアイドルにこうして逢えた、このことを喜ぶべきなのでは、、、?
「ふふ♪これはこれで有りなのかも、、、」
「うわ~なんか引く~かなり引く~。」
気にしたら、、、、負けだ、、、、