ざまぁは最後ににやってくる。
ブクマ評価ありがとうございます(*´▽`*)
マルちゃんという異世界接続器は想像以上に優秀だった。
この世界と魔界を繋ぐ穴が広がりすぎず、さりとて用が済むまで塞がらないようにする為の媒体として最適な素材だが、正直もっと脆くて細いものだと思っていた。
例えるなら家庭用ゴムホースで池の水全部抜くチャレンジのつもりが、意外と頑丈だったので限界を探りながら注入量増やしてたらなんとダムの放水レベルまで耐えられる逸材だったのだ。
悪魔って凄いな。
人間サイズのマルちゃんが今ではウ○トラマンくらいのサイズに膨らんで瘴気の滝を口から目から吹き出してるのに誰も寄ってこない。
人間界で大空からこんなん宙吊りで瘴気の滝吐きに来たら、腕に覚えのある冒険者(英雄クラス)がタコ殴りに来るのにガン無視してる。
なんでかわからんが、この作業を邪魔される訳にはいかないので都合がよかった。
術式解析して魔法陣を召喚陣から書き換えても、細かい術式を作り上げるのはやはり魔術理論等の専門知識がいる。
なので私のアサシン系解析能力では大まかな構築式は作れたが、他の細かい設定が全く出来なかった。
魔法に詳しければ詳細設定で全自動構築が作れようが、私には無理なので全手動作業で可能にした。
やれば出来る。
チート故に確信はあった。
術式に構成しきれなかった大部分が私の物理的な努力で対応可能であると。
つまり全ては私の腕力にかかっているのだ。
瘴気集積層を有刺鉄聖銀線でマルちゃんと私の体を媒介にダンジョンに有線でムリクリ繋げてた。
そして吊るしたマルちゃんを巨大化させたのはいいが、その重量を全部私の腕力で賄ってる状態だ。
レベル87でよかった。
プリーストでもウル○ラマン(サイズ)吊れるよ!
マルちゃんが予想外に使えるキャパシティ持ってたというのは嬉しい誤算である。
これなら瘴気流し作業すぐ終わりそう………と喜びかけた自分の目に瘴気貯蓄層が重なってブレて見えた。何故だ。
恐る恐るそこに視線を送る。
聖銀線で繋がった先。
今、座している場所からは離れているがはっきりとそこを認識して繋いだのだ。
「あ………」
嫌な事を思い出した。
ダンジョンで隠し部屋を見つけたら、チェックするのは兼業でシーフ持ちの自分の仕事だ。
その上でシーフの技能で何も見つからない筈の部屋でゲームマスターは私だけに見えるモノがあると告げた。
「チンピラーノにはダイスを振って気づく権利がある。気づくか気づかないかはダイス目次第だ」
「はぁ!?」
振ったダイス目は達成値を越えたらしくゲームマスターはニヤリと笑った。
「このダンジョンには、ある種族だけに関知出来るメッセージが仕込まれている」
くそう、長くプレイしてる超ロングキャンペーンシナリオの最中(しかも終盤に差し掛かってた頃)に、せっかくパーティーが完全に忘れていた事実をゲームマスターに想起させられてしまった恨みが蘇る。
私に見えるモノがあるダンジョン………黒末系はモチロン該当する。
こんな種族ボーナスいらんかった。
つまり、今見えちゃったのは本物で………
今まで見えてた入り口に『第一層』、ブレて見えてる先に、『第二層』と手書きのプレートが見えた。
多分プレートの視認がトリガーなのだろう、その奥にも更なる層の気配がはっきり見えだした………つまり5000年分の瘴気収集は伊達ではない。
完全に認識すればダンジョンの深層、瘴気の貯蓄層が多重次元積層になっていて想定のうん倍の瘴気が溜め込まれているのが発覚した。
前世の決算期に似たような案件(上司のうっかりミスで降って湧いた………)で、仕事が増殖する地獄を見た悪夢が黄泉がえりかけてクラっときた。
ふざけんな!この量で魔王召喚したら、瘴気だけで実体化して受肉可能だわ!生け贄最初からいらんだろうが!!誰だよ!こんな糞みたいなシステム考えた奴!!
「マルちゃん!ノルマ増えた!もうちょい大きくなれる?なれるよな?イッケェ!!」
「ふぐごごごごぉぉぉぉ!!!!」
新鮮な海老のような動きで応答しているマルちゃんに釣竿ことラブオブゴッド棒がしなる。
更に大きさを増したマルちゃんの重量プラス通過する莫大な瘴気のコントロールの同時制御。
一時たりとも気は抜けない。
だが、我が名はチンピラーノ・ヒャッハー!
レベル87の筋力舐めんな!!
ちょっとマルちゃんの暴れようが激しいので釣竿役のラブオブゴッド棒をぶん回した。
マルちゃんのメリーゴーラウンドの出来上がりである。高速回転で瘴気の滝を撒き散らす。
アメリカンなホームドラマの庭にあるアレ………なんだっけか………水撒く奴………そう!スプリンクラー!スプリンクラーに似てる!
スケールのデカさが洒落にならんけど。
そうこうしてる内にちょっと大人しくなったマルちゃんに安堵する。
スプリンクラー状に瘴気を撒き散らすマルちゃんという器が膨らみ過ぎて薄くなった箇所に慌てて有刺聖銀線でテーピング巻き巻き追加。
トゲトゲ刺さって余計に穴が開きそうに見えてトゲから聖属性にじわじわ転換され、瘴気に対して耐性がつくのである。
断じてイジメではない。
ブレス吐きかけてる竜の喉に向かって召喚した連中と比べたらまだ優しくしてる方だと思う。
「んん?」
魔界の方でこちらに近づいてくる集団の気配を察知した。
この忙しい時に、邪魔しに来る気か?受けてたつぞ………いや、待て………アレは四つあし………もふ?突然のトキメキに心が浮き立つと。
「ふごぉぉぉぉ!!」
吊るされマルちゃんも接近中の集団に気づいて、もがき出した。
しかも今までにない悲壮な動きでナニかを伝えようとしているが口から瘴気を吐いているので言葉にはならない。
だが吊り下げられてから激痛と衝撃で焦点の合わなかった目が意思を持ち目線で『来るな』と訴えた。その必死の形相に意図を察した迫り来る集団はそこで歩みを止め、代わりに悲しげな声をあげて一斉に鳴いた。
クゥーン、クゥーンと切なく悲しげにマルちゃんを見て鳴くわんこの集団に心臓が握りつぶされそうな罪悪感。背筋に大量の脂汗が流れる。
「くぅ!!」
マルちゃんがトップブリーダーだったなんて!!もふもふわんこ集団!こんな時じゃなければ全力でもふりたいわ!
動揺のあまり震えた手に、何を感じたのかマルちゃんが振り仰いで目でナニかを訴えてくるが、生憎と伝わる程の絆等欠片もない。
だが向こうはもふもふに対する欲望を察知したのか、絶望にうちひしがれながらもマルちゃんはついに、脳内に直接語りかけ懇願してきた。
(ご主人様!!心話によるご無礼をお許しください!我が身は如何様に罰されようとも構いません!!ですが我が眷族だけはご容赦を!!あやつらは私を案じ集まっただけです!ご主人様に敵対しようもありません!あやつらには手を出さないでください!お願いします!何卒お目こぼしを!!何卒!何卒!)
接続機にされ限界まで膨張させられた状態で、わざわざ脳内に直接訴える無茶をしたせいでマルちゃんの体が綻び始める。
慌てて有刺聖銀線で補強する。
黒かったマルちゃんの髪とかどんどん聖属性に塗り替えられて白くなっていった。
するとマルちゃんの眷族というわんこ集団が更に涙目で鳴き始め更に私の心を抉った。
イヤァーーーーー!!わんわんが!もふもふが!全員尻尾が股に挟まるくらい怯えきってるぅぅぅぅ!!
違うんです!これはイジメではないんです!!
わんわんに悲しげな目で見られるとか、なんたる拷問!!
やめて、嫌わないで!!
私怖くないよ!!怯えないで!!
精神に深刻なダメージを負う中、ひたすら謝り続けるマルちゃんが脳内でうるさい。
「わかったから!お前はもうしゃべるな!」
余裕の無さで思わず怒鳴ってしまい、マルちゃんが大きく震えてビビり、わんこ集団も耳も尻尾もへたらせてガクガク震えて、手が離せたら頭を抱えたいくらいのヤラかした感にちょっと絶望した。
ごめんよわんわん!君らには怒ってないから!
そんな目で見ないでーーーーーーー!!
瘴気の放流が終わる頃にはマルちゃんも私も真っ白に燃え尽きていたのであった。
マルちゃんの本性がコウモリの羽を持つ狼なのをチンピラーノさんはまだ知らない。




