作戦会議
お待たせしました!
推し神様から直接お願いされて、二つ返事で内容も聞かないまま引き受けた私は、元いたラスボスルーム前に転移させられた。
前世で惚れぬいたイケボで囁かれたら断るという選択肢などあり得ない。それほどに尊かった。
これから、神託が降りたら全てCV(G田哲章)で脳内再生されてしまう!! 前世で推して推して推しまくりーの愛し抜いた奇跡のイケボ。マイフェイバリットナンバーワン声優の推し声! それが信仰神の声帯から出てくるのヤバヤバのヤバである。生きてて良かった!
その蕩けきった締まりの無い顔を待っていた悪魔達が呆然と眺めていたので秒速で正気に返ったけどね。
まぁ、見せてはいけないモノ見られちゃった事がモヒカンになってから割りと多い私の経験値舐めるなよ。
さぁ、何事もなかったのように話を進めちゃうぜ!
そう意気込んだ矢先、さっき私が召喚した悪魔が顔をあげた。
喚んだ時は黒いモヤモヤしたものだったけど、なんか人型になってた。黒髪をワイルドに流した野性味の中に知性を感じさせる品の良さがある。
悪魔ってやたらイケメンに化けようとするよね。しかも黒い貴族の礼服みたいの着てるから、まだ乙女ゲーの世界から抜け出せてないかと思った。
だが、残念だったな! 推し神を至近距離で堪能してきた………むしろオーバーキルされた私にただのイケメンが通用すると思うなよ!
「お早い帰還、何よりでございます。ご命令通り隣室の戦闘は恙無く続いております、マスター」
執事か! うーむ、私の理想の執事はロマンスグレーの元軍人臭するガチムチおじいちゃんなのだ。お前はちょっと若すぎる。
ハッ。ヤバい、ラヴァデウス様のアルフォート王子コラボのせいで思考が前世の乙女()よりになっている!
このままでは、いつか『モヒカントゲトゲおねえ』な言動をしてしまうに違いない! 落ち着け私! ビークール、ビークール。
私は釘バッドを持ったモヒカントゲトゲ肩パッドプリースト、チンピラーノ・ヒャッハーだ。うむ。己を客観的に見れば………辛い………さようなら乙女な私。
無理だよ………このモヒカンルッキングガイ人生で乙女心を抱えたまま生きるなんて私には無理だ!
ましてや、悪魔に舐められたら私の中で何かが終わる。多分堪忍袋の緒的なサムシングが、だけど。
万人に紳士なチンピラーノさんですが、悪魔には引かぬ、媚びぬ、省みぬ! の世紀末覇王の精神で対応しますよ~イッツ ア ショータイム!!
「お、消さなかったか。気が利くな」
ソイツまだ使い道あるから。細かい指示出来なかったからどうなることかと思ったけど執事を目指すなら気づかいも細かいんだろうな。
「は! 勿体ないお言葉感謝します」
執事悪魔が平身低頭で答える。無表情だが、心の中でセーーーーフ!! と叫んでたのがわかった。
コイツちょっと感情殺しきれないタイプみたい。
悪魔としても、執事としてもそこコントロールってか、隠しきれないのヤバくない?
ま、コイツは置いといて。
後ろで縮こまって震えてる奴! お前だ、お前!
「おい、あ………私は今さっきダンジョンマスターから全件委任されたぞ。お前、名前はなんという?」
ダンジョンマスター、もとい黒幕がラヴァデウス様とは誰も思うまい。
あの方にお仕えしていたなら悪魔と言えどラヴァデウス信徒と言っても過言ではない。
お前とか悪魔とか呼ぼうとして2匹供悪魔だったと思い出して名前を聞いてみた。
「………名前は無い」
「ナイ、か。ナイよ、お前には知らされてなかった事だが、あそこの魔王召喚陣の蓄積魔力使いきってその後このダンジョンを正常稼働させるのがあの方の真意だ」
「な、あの? えぇ?」
「私の役に立つなら生かしてやるぞ」
突然の事に動転するナイ、と彼をうわぁ、可哀想という感情を隠しもせずに憐憫の眼でみている執事悪魔。なんでだよ?
「とりあえず、生け贄の花嫁達の洗脳を解け。あの人達帰した後で生け贄なしで魔王召喚しよ」
「「魔王様を、召喚するんですか!?」」
「別に魔王を喚ぶのは重要じゃない。ただ長年かけて蓄積魔力のせいで召喚しないともう爆発寸前らしい。魔王は喚んだら私が片付ける。昔仲間と3人がかりでボコった時は、全員ちょっとイライラ溜まっててフルボッコにしたが、私一人でもなんとでもなる」
ナイがどんどん不安そうな顔をしていくので、フォローしたら更に青ざめて高速バイブレーションを始めた。信じろ。邪神と比べたら魔王なんて可愛いもんだ。
その時執事悪魔が泣き叫んだ。
「それ大魔………お待ちください! あの召喚陣のレベルでは………おそらく私クラスの召喚にすら耐えきれず崩壊します! 何卒お考え直しを!」
なんと! 魔王召喚陣で普通の悪魔召喚するとぶっ壊れるのか! 最終的にはあの召喚陣廃棄したかったからちょうどいいや。
指輪で召喚した悪魔って肉壁にしても文句言わないし、いいアイデアくれるし使い勝手悪くないな。
「それ採用! 術式弄って召喚してあそこ崩壊させよう!」
「マスター! 召喚陣は契約を兼ねています! 召喚と隷属に代償が必要になります! 悪魔有利の契約になりますがよろしいので?」
へーそうなんだ。この悪魔詳しいんだなぁ。
「? 無償で肉壁になる連中が有償でどこまでしてくれるのかわからんが、このチンピラーノから銅貨1枚でもむしり取るなら相応の仕事してくれるって事だよな」
「………私が望むのはマスターの爪先にキスをする権利デス………」
それ絶対服従の証明じゃん。いいの?
「あ、お前の名前も聞いとくか」
「マルコキアスと申します」
へー………ゲームとかでちょくちょく聞いた気がするからけっこう有名悪魔じゃん。
「じゃあマルちゃんね」
「ご随意に」
即答したぞオイ、マルちゃんそれでいいの?嫌がると思ったのにスルーとは………やるなマルちゃん。
名乗ってないのに名付けられて強制的に隷属させられたナイはマルちゃんの名前を聞いて正体に気付いたんだけどお口ミッフィーで震えてるよ!




