主役()は遅れてくる
行ってらっしゃい。と見送った。
彼らと同等かちょい苦戦するぐらいのラスボス出ても彼ら自体は連携も取れてるし、一応魔法陣の配置を説明してあるので効率的に人質解放させられるだろう。
と、思ってたんだけどなぁ。
プリーストからシーフに転職してマスタークラスまでいっちゃってるチンピラーノさんの耳には、「止めろ!」「どうして!?」「目を覚ませ!」等の不穏すぎるワードが戦闘音にかき消されもせずに届いていた。
「うわぁ」
汎用シナリオにオリジナリティ出してくるタイプのゲームマスターのシナリオだ………
道理で知ってるパターンがなんか違うと思った。
しかも花嫁洗脳パターン………こやつサイコパス系のマスターか。
クルセイダースが苦戦させるレベルにガチガチに強化されてるみたいなので、かなりやりにくいだろう。
「えげつないわ………」
ジャスティオーザって悪魔に操られようが敵対したら身内でも即殺すって思ってたんだけど、あの人達そこまで過激派ではなかったんだねぇ。
これ私1人で戦った場合説得も手加減も出来ずに、花嫁ミンチにしてバッドエンド一直線だったわ。
頑張ってクルセイダース(優しめ)!! 真のハッピーエンド目指して頑張ってね!
「おや?」
前方から侵入者の気配。移動速度が異様に早い。
「光あれ」
プリースト呪文の『ホーリーライト』をぶちあげる。アンデッドとか消滅必至の聖なる光である。ソレ以外にはただの明かりなので今回は犯人に向けてのスポットライトでしかないが。
最下層に入った途端目映い光に照らし出され、侵入者は忌々しげに目を細めた。
「何故人間がここに………?」
「マジか」
噂の悪魔のご登場である。
私の姿に本気で驚いている。
残念だったね。ダンジョンがあの仕様でなければ、とっくに花嫁救出して更なる驚きをプレゼントしてるところだ
悪魔は撫で付けたオールバックの黒髪と白目が真っ黒で瞳孔が真っ赤な目をした、貴族のような黒い燕尾服を纏っている人型でどちらかと言うとオーソドックスな吸血鬼スタイルだった。
人型といっても目で人間味台無しの人外野郎だが。
あー魅了とか得意そうな面してんな。
「いや、人間? ではない? あれ?」
悪魔は混乱している!!
失礼な! 何故そうなる! トゲトゲだから? モヒカンだから? そうですねコンチクショー!!
「んん?」
混乱していた悪魔が何かを閃き笑顔になった。
「あぁ! お前もマスターに喚ばれた口か!」
「!!」
やっぱりいるのか『マスター』という存在が!こいつの召喚主は制御しきれずに殺されてるから、それ以上の存在に使役されている訳だ。
ゲームマスターとして私みたいに転生してきた同郷の人かだったらどうしよう。性格悪そうだし。会いたくないわ。
「成る程、人間のパーティーをおびき寄せたのか。やるな………マスターは早く魔王を召喚をせよと仰せだ」
悪魔は勝手に私を仲間と思い込んで、フレンドリーにバンバンスキンシップで接してくる。
マジか、さっき聖なる光ぶちかましたでしょ。なんで私が悪魔扱いされるんだよ!
でも都合がいいからお口チャックで悪魔ちゃんになるたけ情報を吐いてもらおう。
マスターの目的は魔王召喚。チンピラーノ心のメモメモ。
「赤の花嫁がまだ手に入らない、あの失敗が響いてガードが固くなって近寄れもしないのだ」
あの失敗ってマンティコアちゃんのモフモフ大暴走か。
アレがお前の仕業なら、あの場にいた筈。よく私に気づかないな。バカか。
冷めた目で悪魔を見ていたら、フラフラと疲れた顔で入り口の壁にもたれ掛かる。
「イエス、マスター」
先ほどの情けない声とはうって変わった感情のない声で悪魔の左手がアーチに触れる。
油断したのは私だった。
演技派悪魔。




