猛獣大サーカス
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サーカスの大きなテントが怒号や悲鳴で揺れだした。入り口からは逃げ出した観客が飛び出し、絶叫と共に人々は今までと逆の方向に走り出した。
緊急事態に近辺にいた兵士達がサーカスに向かうが逃げる人の多さに進めずにいるのが見えた。
サーカスの猛獣が暴れているのなら早く沈静化しないと被害が増す。
避難する人の邪魔にならないよう壁を走り、壁が切れたら、空中に魔力の足場を使って疾走した。
大急ぎで騒動の大元サーカスのテントの中に駆けつけると、そこには……
「マスティ! 落ちついて! 正気に戻りなさい!」
目を真っ赤にした臨戦態勢の魔獣マンティコア(体長5メートル)とそれを取り囲んで唸りをあげる猛獣達(最大が2メートル級)と最前でマンティコアに訴えている猛獣使いらしき女の子が鞭を手に必死にマンティコアを抑えようとしていて、他のサーカス団員は皆、観客の避難誘導に掛かりきりになっていた。
「突然、魔獣が巨大化して!」
「さっきまで普通に芸をしてたのに!」
「責任者出てこい!」
急に入り口に向かうから渋滞にパニックになっている観客達が口々に叫ぶおかげでなんとか状況が知れた。
観客を逃がそうとしているサーカス団員達は、必死に謝罪を繰り返している。
あの目のギラギラした赤さと、口から大量のヨダレを流し唸るマンティコア。
興奮に我を忘れて………など生易しいモノではないな。巨大化させて凶暴化なんて、いにしえの戦隊物に出てくる週変り怪人みたいな魔法は通常の人の使う魔法使いスペルではあり得ない。
発動時なら、魔力の発生で探知出来るが既にかかっている魔法では使用者を探すのは困難だ。
犯人探しは諦めて、魔獣を見る。
あの子凄い。あんな状態なのに、人や他の猛獣に飛びかからないように、ギリギリの精神で耐えて頑張っている。
仲間達もそれがわかってて、迂闊に動けずにいるらしい。
にらみ合いなのに、目に心配してるのが浮かんでいる。
猛獣使いの女の子の手腕なんだろう、いい腕だ。
サーカス団員も真っ先に客の誘導に動いてるし。
このサーカスはとても善良な人達だ。
仕留めるのは簡単だけど、そんな可哀想な事私には出来ない。
これが呪いの類いなら、私のプリースト呪文で即解決出来たが、これは魔法によるもので系統が不明。魔法使いのディスペルマジックが使えたらいいのに………と無い物ねだりは無駄だ無駄。
「とぅっ!!」
華麗なジャンプで猛獣使いの女の子の前に降り立つ。
見慣れないモヒカンの乱入に、歯を食いしばって耐えていたマンティコアの正気の光が消えた。
「危ない! お客さん逃げて!」
とっさにマンティコアと私の間に入ろうとする少女を片手で制した。
「私に任せて」
「グルァガアアアア!」
後ろ足で立ち上がり、覆い被さるように頭から私を齧ろうとするマンティコア。
それより速く飛び上がり、その顎をすり抜け大きな首に顔を埋める。
おっきいもふもふ………いや、首から肩の筋肉にそって腕を回す、抱えきれないがそんなことは些少だ。
巨大マンティコアの突進力は大したものだが、力なら私の方が強い。
まぁ多少は受け流して、仰向けに転がして、じたばた暴れるのを力づくで押さえ込む。
自分の何倍もあるので結構大変だが、所詮は獣。筋肉の動きでどう暴れるつもりなのか密着していれば丸わかりなのだ。
例え巨大化していようと、その動きに先んじてもふればその気持ち良さに力が抜けてしまうのだよ。
しかも、私のもふもふはただのモフリテクニックではない!
プリーストゆえ、回復魔法を極めている私のもふりは、低周波治療のごときイタキモチイイ、感度爆上げもふりテクニックなのだ。
この世界にきて最初の夜に、狼たんを喜ばせる為にその場で開発した。
君も我がもふもふテクニックの虜になるがいい! そして私のテクニック上達の糧になるのだ! ヒャッハー!!
「よぉし、よーしよーし!! ここかぁ? ここが好きかぁ!? んんん~?」
「きゅ………きゅーーーーん………」
マンティコアがぐったりするまで思う存分モフリまくった私が満足して振り返った時には、ドン引きする猛獣使いちゃんと、その背に隠れるように震えてる猛獣達。そして集まったチベスナ顔の兵士達が私を遠巻きに眺めていたのであった。
途中からマンティコアちゃんが可哀想になって来たので、お客さんは全員スタッフによってお帰り頂きました。おかげで兵士の皆さんがテントに入れたという………




