並ぶのはけっこう暇である
ようやくリングムの街が見えてきた。街の門前にはたくさんの馬車や荷物を抱えた行商人や旅人が列をなしている。
カルムさん達のホームグラウンドだけあって獣人率が高い。
もふもふしたいわぁ……
「大市が近いから渋滞してるんですよ。こりゃ時間かかっちゃうなぁ」
ルカスさんはため息をつくが、慣れた様子で馬車が並ぶ列の最後尾につけた。
こちらを振り返った人が大体モヒカンを見るなり硬直し視線を逸らして、ガヤガヤと騒がしかった喧騒がこの周辺だけ異様に静まり返ってしまった。
あっれぇぇぇ………?
僕、悪いモヒカンじゃないよ?
街に入る時に、余所者とみられて横入りされたり、雑魚と思われて絡まれたりするイベントが発生するかもしれないと身構えてたのに、誰もが見つめ合うと素直におしゃべり出来ない状態は想定外です。
列が中々進まなくて退屈なんだし、みなさん自由におしゃべりしてくださいよ! と声を大にして言いたい。
「チンピラーノさん、また背中曲がってますよ」
ションボリしてたら、厳しいお叱りの言葉が飛んで来た。
おしゃれなコートを着てるのに猫背でシルエット崩れて下品に見えるのか、ルカスさんがちょいちょいチェックいれてくるのだ。
「あ、すいません」
チンピラーノのポスト雑魚なキャラクターイメージが黒いコートのお陰でちょっぴりセレブ感あがって、雑魚から中ボスみ出ちゃっているのか、ルカスさんの指導は厳しい。
しかし、本気でチンピラーノをカッコいいと思っての善意。受け止めない訳にはいかなかった。
背筋を伸ばし、がに股にも気を付けると、視点がめちゃめちゃ上がる。
ついノリでジョ◯ョ立ちを決めると
曇りなき眼で私の姿勢矯正に熱意を燃やしていたルカスさんが拍手喝采してくれた。
ありがとう! 君なら喜んでくれると信じてました!
私達のほのぼのした交流を見て警戒心が解かれたのかやっと喧騒が戻ってきてひと息ついた。
やがてゆっくりと列が進む。
「この辺りは治安がいいんですねぇ。こういう行列って短気な人が列を乱したり、争い事とかしょっちゅうありそうなのに」
民度が高くて素晴らしい。
リングムは良い街そうで期待が持てます。
「キャラバンが多いと護衛もその分いるから………その、そういう気配に注意を払ってて………その何て言うか………みんなヤバそうなのを気にして………」
カルムさんの護衛のリーダーさんが、言いにくそうに目を逸らしながら説明してくれます。どうやら口下手さんみたいですが、言いたい事は伝わりました。
門前でもうすぐ街に入れるというのに、よそのキャラバンの護衛らしい人たちが気を抜く事なく、全く警戒をといておらず全体が程よい緊張感に包まれてこその、この治安の良さなのでしょう。
思わず笑みが。
「ここの冒険者さん達は善良ですねぇ」
私達の会話が聞こえたのか、後ろのキャラバンの護衛がうっかり槍を落とし大きな音が響く。
照れ屋さんかな?
「ひっ」
大きな音にビックリしたのか、誰かの悲鳴も聞こえた。
あるよね、ざわざわしてたのに一瞬だけ静かになる瞬間の、やたら声が響いちゃうアレ。
可哀想だから視線は向けないでおいた。
結構恥ずかしいもんね。私も経験あるしわかるわかる。
ようやく、検問所に入って私のいかにもな風体に難色を示す門番達に、カルムさんとリーダーさんが、ゴブリンの群れによる襲撃と助太刀の話をして私の人となりを保証してくれ、入街の許可をもぎ取る事が出来ました! しかし。
「このギルドカードは他国の物なので証明には使えません」
1つ誤算だったのは、この世界はチンピラーノとして昔に救った世界とは全く違う別の世界だった事だ。
1旅人として、入門料を割り引き無しで払い、私はリングムの街にたどり着いた。
渋滞がひどかったのは馬車列で、歩きの人はもう少し早く列が進んだ。
でも、チンピラーノが一人旅だったら多分門番は街に入れてくれなかった。




