とある商人の反省
カルムさん視点
チンピラーノ様のご厚意によるお祈りなので、てっきり一回分のお祓いをしていただけると思っていたら、まさかのリムーブカース(一発完全浄化)でした。
腰が抜ける程ビックリしました。
大都市の大きな神殿にいる最高位の大神官でしかなし得ない奇蹟をこの目で見られるとは。
お値段にするとゼロ2つ増えます………マーチャンドラー神殿だとソコからさらに2割増しですよ?
第一印象がアレ過ぎて、怯えまくっていた無礼な私に、どうしてここまで……あんな人がいるなんて………
商人として培ってきた私の人物鑑定に自信が持てなくなりました。
あっさり打ち解けていたお調子者のルカスの方が、人を見る目を持ってるってのはちょっと納得いかないですが。
異様…鋭利…えぇっと……少々特殊な出で立ちのチンピラーノ様は窮地の我が隊商の前に突如として現れ、いつも護衛していただいている方々が苦戦するほどのゴブリンの群れを瞬く間に殲滅。
馬車の荷台に隠れながらも垣間見えた、ゴブリン相手に神の愛を説きながら死体の山を築く姿は悪鬼のようでした。
敵も味方もなく、私達もあの凶悪な武器で引き裂かれるかと人生の終わりを覚悟しました。
それをあの人は護衛の方々に手を伸ばし、回復呪文を唱え彼らの傷を癒したのです。
たまげました。
そして私は思ったのです。
最初に助太刀するとおっしゃっていたのは本当だったのだと。
もしかして悪い人ではないのかも……と話しかけると、……あり得ない程朗らかさで答えてくださいました。
死体の山の中で返り血を浴びたままなのに、そこを一切気にしないで世間話をしているような様子が余計に恐怖を煽られてしまったのが敗因かもしれません。
これからは、人を見た目だけで判断しないよう見る目を養いたいものです。
「チンピラーノ様、お礼には足りないかも知れませんが、この荷物の中でお好みの物を差し上げますので、何でもいってください」
「カルムさん、私は様なんてつけて呼ばれるような大層な者じゃないですぅ! 出来たら昨日みたいにチンピラーノさんと呼んでくれれば………」
なんと謙虚な!私はこんな人を悪鬼と恐れていたのか………本当に申し訳ない。
お礼を頑なに固辞するチンピラーノさんに、それでは私の気が済まないと訴えていると、祭壇を片付けていたルカスが浄化されたばかりの衣装箱をチンピラーノ様の前に持ち寄っってきた。
「チンピラーノさん、うちの仕入れ品で一番値が張るの、この中のモノなんで遠慮しないで、こっから選んでくださいね!」
ルカスよ……お前はちょっと遠慮しなさい。
でも遠慮がちにも程があるチンピラーノ様にはこれくらいの押しが必要か。
明らかに動揺しているのを見て、ずっと私以上にチンピラーノ様に怯えていたジェリコが進み出た。
「人型、毛皮無いから、なんか…着た方がいいと思う……ます…」
人見知りで口下手のジェリコが、頑張っている!
正直セールストークとしてはどうかと思うが、この子も呪いを解いてくれた事に感謝しているのだ。
「んんんんっ!」
我々の気持ちが通じ、チンピラーノ様は衣装箱から黒いコートを一着選んで受け取ってくださいました。
顔を片手で押さえて打ち震えてるのは何故なんでしょう?
呪いは巧妙に隠されていて、チンピラーノのレベルだから気づけました。




