第五話
ある日の授業後の休み時間、私はいつものように自分の座席に座ったままで、いつものように教室内のクラスメイトを眺めていた。人の仕草や動きでその人の性格が何となく分かってくる。
色々な性格のクラスメイトがいる中で異性とばかり会話をする同性が私は嫌い。三嶋さんがそのタイプの女子だった。まだ三嶋さんとは話したことは無いけど、たぶん私とは正反対の性格だと思う。
三嶋さんはこの前はこっちの男子と仲良さそうに話していたのに、今は違う男子と仲良さそうに話しているのをよく見かける。そんな浮気な性格なのが私の心の中で影となって、まるでルール違反を注意するように戒めを与えたくなる衝動がある、要は腹が立つ。それは自分が今まで生きてきて異性と話すのが苦手なのが分かっているから三嶋さんに嫉妬しているという事だと思う。
三嶋さんとは初対面で話をする時から軽蔑して話をしてしまうかもしれない、無骨な振る舞いをしてしまうかもしれない。そういう所が自分の駄目な部分だと自覚はしている。今まで何度も何度もそう思ってきたから分かる。でも、どうやったら異性と普通に話せるのだろう。
もし私の場合、まず話題が見つからない。相手にとって楽しめる話題が分からない。相手にとって自分の話はつまらなくて楽しくないかもしれない。私に話し掛けられて嬉しくもないと思うし、そもそも私と話をしたくないのかもしれない。だから、私は相手が話してきた時に相槌を打って話をする。聞き役が合っている。自分から話をすることもあまりない。話題が見つからない時の沈黙が怖いし、その場で話題を考えるのがとても疲れてしまうから。
小学生の時に「猫を被っている」なんて言われた事もあったかな。同性でのコミュニケーション自体でさえしんどいので、あまり話さないから仲間外れにされた事もあったかな。クラスの中で特異な存在と見られているに違いない。スクールカーストはもちろん下位だと思う。目立ちたくないし、自らが選んで空気のような存在になっている。
そんな私でも好きな人はいる。同じクラスメイトの西井君。成績が上位で頭が良い、運動は不得意な男子。私自身も運動音痴だから合っていると思う。体育会系で乱暴な性格で威張ったり、偉そうにする男子が嫌いだから。
西井君の事は中学生の頃から思い続けている、好きって告白なんて恥ずかしくて絶対できない。西井君は私の気持ちは知らないと思う。話をする事があっても好きという気持ちを悟られないように私は不愛想になってしまう。好きだったら普通の会話でもしに行けば良いと思うかもしれないが、会話に失敗して“嫌われ者”というマイナスになるよりかは、会話もせず現状維持の“同じクラスメイト”というゼロを選んでしまう。
高校一年生の時も西井君とは同じクラスでオンラインゲームのアンドロメダオデッセイを遊んでいると耳にして、私もゲームを始めた。もしかしたらゲームの中で西井君のキャラに会えるかもしれない、なんて考えたらドキドキしたりしてとても楽しみだった。
結局はキャラ名も分からない為、どのキャラが西井君のキャラか分からないままゲームを続けている。いつの間にかゲームのストーリーを進める方が楽しくなってそっちに夢中になっている。
西井君はもうこのゲームしていないかもしれないけど、私はまだまだ続けるつもり。
次の授業開始のチャイムが鳴り響いた。鞄から国語の教科書とノートを机の上に出して並べた。
色々と考えすぎて疲れちゃった。