第三十三話
今日も寝る時間になった。
時計の針が二十三時を指したのを横目で確認した。昼夜逆転を元に戻す方法を自分で考えた結果、無理に寝ようとしなくて良いという結論になった。
寝る時間に近づけば近づくほど、頭の中でまた“嫌な想像”が動き始める。
明日、学校に行かないといけないと思えば思うほど“嫌な想像”の強迫感が強くなり、頭がフル回転し始めて眠れなくなる。
学校では数日休んでいる私の事をクラスメイトたちは後ろ指をさして笑っているのだろう。休む日が長くなればなるほど学校に行きづらい気持ちは高まっていく。
それは日に日に倍になって増えていく感じだった。このまま学校に行けず、中退してドロップアウトしてしまうのだろうか。就職もできず、不幸せな人生を歩んでいくのだろうか。次々と起こりうる未来が予想されていく。
私も落ちてしまうのか。批判していた杉高君と同じじゃない。辛くて涙が出そうになった。
薄暗い部屋の中で天井を見つめていた。
目を瞑ると、“嫌な想像”が頭の中で増幅していく。寝ようとして目を瞑るから駄目なんだ。気を紛らわす為にパソコンを立ち上げてネットでも見てみよう。
頭を使わずに、ただボーっと映し出される映像を眺めるだけにする。登録してあるサイトを巡るうちに動画投稿サイトを開いていた。サイトのトップには色々な動画のサムネイルが流れていた。
……ん? 何これ?
“心が繊細で傷つきやすい貴方。HSP”
そのタイトルに目が留まった。心に何かピンと引っかかるものがあったので動画を見てみる事にした。
真面目そうなスーツ姿の男の人がカメラ目線で説明し始めた。目がアニメのように光が集まって輝いているのが印象的だった。
世の中には心が繊細で傷つきやすい人がいます。それは普通の人よりも感受性が強く、多くの情報を汲み取り、深く考える、といった特徴があります。
元々は生物に備わった危険予測能力によるもので、いわゆる洞察力が原点になります。その中で特に洞察力に長けた少数が、人間ではHSPにあたります。
HSPは普通の人よりも自分の周りの環境から常に多くの情報を受け、より深く処理する事ができます。そのため、非常に疲れやすい傾向にあります。多くの情報は人によってはポジティブにもネガティブにも受け取ることができますが、ネガティブに受け取り落ち込むことが多かったりします。
HSPであることで世の中が生きずらいと感じる方は多いかもしれません。HSPは五人に一人の割合で存在すると言われています。
何だか心が貫かれるような感覚があった。HSPの内容が気になって、続きの動画も見る事にした。落ち着いて動画を見ていたが、心の中の私は興奮していた。




