第三十一話
ある日の真夜中、眠っていた私はうなされて目が覚めた。
頭の中でずっと私が訴えている。そして、リオにずっと謝っている。壁に掛かっている時計を見ると、午前二時過ぎだった。こんな時間に起きたことは今までなかった。
明日は登校日だから早く寝ないと、朝になっても起きれなくなる。もう一度、目をつぶって布団に潜り込んだ。
“カスミン、キモい”、“カスミン、消えろ”、何で私ばっかり文句を言われなきゃいけないのよ! 匿名で誰が言っているのか分からない……。誰もが犯人でクラスメイト全員が私に後ろ指をさして笑っている。みんなヒドイ……。私みたいなものが目立つのが気に入らないから? 私のことが嫌いだから? 筆箱や上靴を隠され、筆箱の鉛筆を全部折られ、ノートに落書きをされ、水を掛けられ、私の心は傷つきすぎて泣いている。
もうイジメないで……。人間の“人間に対する嫉妬や嫌悪”に恐ろしい程の醜悪と、尽きることの無い憎悪を感じて人間の事を拒絶していた。
リオもカスミンはあまり気にしないで、と気を遣って言ってくれたけど、本心は腹が立っているに違いない。だって折角立ち上げた自分のチャンネルを駄目にされて腹が立たない訳がない。リオは背を向けて離れていく。リオごめんなさい。どうしてこんな事になったの……。誰が悪口のコメントを書いて荒れさせたのよ!
“カスミン、キモい”、“カスミン、消えろ”、何で私ばっかり文句を言われなきゃいけないのよ! 匿名で誰が……。
この“嫌な想像”が何回も頭の中で繰り返し続いている。早く寝たいのに、寝ようとしても頭がフル回転していて眠れない。何も考えたくないのに頭の中は勝手に動いている。時計を見ては、焦って眠れない。
三時……、四時……、五時……、窓の外が徐々に明るくなってきたが、ずっと同じ“嫌な想像”のループがまだ続いている。眠りたいのに眠れない。六時……、七時……。結局、二時に目が覚めてから眠れなかった。
起床時間の七時を過ぎても起きてこない私を心配した母親が部屋に入ってきた。
「果澄、七時過ぎてるけど」
眠れず頭痛が酷かった私はフラフラで起き上がれなかった。瞼が重くて開かないので、今日はもう動けないと判断して母親に言った。
「眠れなかったから、今日休んでいい?」
「え? どうしたの? 寝てないの?」
「二時から眠れなかった」
私は頑張って起き上がったが、目を開くと視界が歪んで動き、違和感で目を閉じてしまった。眩暈が酷く、吐きそうになったので、すかさずゴミ箱を手に取った。そして、私は嘔吐したが、胃の中が空っぽで何も無かったからか何も出てこなかった。その後、数回ほど何も出ない嘔吐があり、落ち着くと横になった。
その日は学校を休んだ。学校を休むと思うと、心が少し安心したのか眠りに入ることができた。
でも、二時間ほどで目が覚めてしまって、熟睡まではできてなく、まだ頭が貧血しているようにふらつく。
午後になってようやく頭痛が治まってきて、起き上がって動けるようになった。何だったのだろう、こんなに眠れない事は初めてだった。横になって何もしていないのに頭の中だけが疲れていた。心を安定させる為にパソコンでアンドロメダオデッセイの世界に入ったが、疲労感で十分も経たずにログアウトした。普段は気付かないけど、ゲームするのって頭が疲れていると何も出来ない。頭痛薬を飲んで落ち着いたけど、病院にも行けないと思うから、仕方なくベッドに横になっていた。
身体は元気なのに何も出来ない事がとても歯痒い気分だった。