第二十二話
ある日の登校日、今日は先週の中間テストが返却される日だ。
テスト直前に気になることがあったので自信がない。クラスメイトに無視された事が気になって、頭の中がその事ばかりで心が落ち着かない状態が続いていたから今回は点数が悪かったかもしれない。
一時間目は数学の授業。
解答用紙が返却され、先生が解説し、答え合わせを行う。
二時間目は国語、三時間目は英語、四時間目は歴史、五時間目は科学の授業。テストの点数にクラスメイトは一喜一憂し、教室内は騒がしい。
五時間目が終わって、ホームルームにはクラス順位と学年順位が書かれた紙を担任の先生から受け取った。
“倉里果澄”私の名前が書かれた紙にはクラス順位14/48、学年順位102/392と書いてあった。今回も100位を超えられなかった。国語と歴史が苦手で、特に歴史は平均点も取れなかったから足を引っ張っている。
そんな点数を他のクラスメイトに見られたら、みんな私の事を頭が悪い人間だと絶対に思われるから絶対に見せられない。もし良い点数の場合でも自分に自信がないから、自分の事を卑下して言ってしまう。
自分より良い点を取っている頭の良い人なんて沢山いるから。
「順位は何位だった? ねえ、見せて見せて」
宮河さんの大きな声がどこからか聞こえてきた。
「ん~、私はそんなに良くないから」
順位なんて言ったら、周りから好奇な目で見られるのは簡単に想像ができるので私は首を横に振った。
「お願い~」
宮河さんは私の前で手を合わせて、しつこくそう言った。
宮河さんってこんな人だったんだ……。人が嫌がっているのに、人の気持ちも分からないのかな。この人も自分の欲望を抑えられない人間なんだな、とがっかりした。決して友達という存在にはなれないと思った。この人とは心の距離が離れた。
私だって他人の順位は気になる。気になるけど、聞かれて嫌がる人も多いし、そういうことしたくないから。人を傷つけるような事を平気でする人が信じられない。でも、このまま拒否していたら嫌われると思う。こんな人は嫌われても良いのだけれど、恨まれて周りに悪口を広められたりしないかどうか気がしてしまう。
私の中の心の中は、見せるか見せないかでせめぎ合う状況で、ストレスが大きく膨れ上がって、とても嫌な気持ちになっていた。
宮河さんはまだこちらをにっこりとした笑顔で見ているので、凝縮されたストレスがもう破裂して、どうでも良くなった。
順位の書かれた紙をチラリと見せてしまった。「内緒だからね」と私が言う前に宮河さんは大きな声でこう言った。
「14位じゃん! すごーい」
周りはゾワゾワと引いて静まり返り、私は顔が真っ赤になって声が出なかった。
私は宮河さんに順位の紙を見せたことを後悔した。見せるのは嫌だけど、嫌な気持ちになって見せてあげたのに、こんなに目立つような事をするなんて酷い。
西井君にも順位を知られてしまった。みんなから一斉に後ろ指を指されているような気がする。頭が悪いって事が知られて、嫌われてしまったに違いない。私の心はとても傷ついた。
宮河さんとはもう話をしない。もう信じない。宮河さんの事が嫌い。周りの好奇な目で見てきたクラスメイトとも嫌い。
心が辛くて、もう死にたい気持ちになった。