第十五話
ある日のホームルーム終了後、部活に行く人と帰宅する人の足音や雑談する人の喋り声で教室内はガヤガヤと騒がしかった。ふいに後ろから声を掛けられて驚いた。
「カスミン、動画の事だけど」
「えっ? あっ、リオ。何?」
二年四組からわざわざ来てくれたが、リオはいつも突然だ。
周りのクラスメイトは物珍しそうに、私の方を見ているのか四方から視線を感じる。
私が喋るのがそんなに珍しいのかな。自分が喋る姿を客観的に見ていると、段々と顔が赤くなっているような気がした。
周りの視線なんて気にしないリオは続けた。
「動画の事なんだけどさぁ」
「どうしたの?」
私から次の動画のアイデアを提案できていなかったから、何か言われるのではと思った。魔法使いなので次は水に浮くアロマキャンドル作りとかどうかなと思ってたけど、面白くないかなって思って自分でボツにしていた。もしその話題になったら言ってみようかな。
「カスミン、ごめんっ! 私のクラスメートと動画撮影しちゃったんだ。動画の話をしていたら私も出たいって言われちゃって」
リオは手のひらを合わせて私に謝った。
「そうなんだ、別に良いよ」
もともとはリオが作ったチャンネルだからリオが決める事だと思うし、私だけじゃなく色々なキャラがいた方が面白くなると思うし、再生回数も伸びると思うし。でも、本当はリオと私の二人で撮影した動画をアップしていくものだと思ってたから、ちょっとショックだった。リオは友達も多いし。友達に出たいって言われたら断れないだろうし。
「ホント、ごめんね」
「うん、全然良いよ」
「ありがとう、また今度一緒に撮ろうよ、また良い感じの衣装を準備しとくから」
「うん」
「あっそれか、最近流行りのキャンプ動画とか良いんじゃない? 広尾山とかでテント張ってさ、料理して食べたりして、そういうの楽しそうじゃない? 動画としてはどうか分からないけど、楽しさが伝わるんじゃない」
「うん……。でも、キャンプって危なくない?」
「危ないって? えっ? 土砂崩れで? 熊?」
「うん、色々と」
「そんな事ないと思うけどなぁ。カスミンはアウトドア好きじゃなかったっけ?」
「好きじゃないよ、全然。苦手な方だから」
私は顔を左右に小刻みに振って、やんわりと断る雰囲気を出した。
「そっか、また何か良さそうなのを考えとくわ」
「うん」
「それじゃあねー」
ニコッと笑顔を見せて、リオは忙しそうに教室を出ていった。
この会話を耳にしていた周りのクラスメイトは私が動画に出ている事を知ってしまったかもしれない。
誰も興味はないだろうけど、どのように思われているのだろう。変な奴が変なことをしていると思われているかもしれない。複数の女子からそんな事してるんだぁ、と後ろ指を指されるかもしれない。そんな動画は誰も見ないよって思われているのだろう。私の魔法使いの格好も笑われるだろう。スライム作りも失敗した事も笑われるだろう。
もし西井君に知られてしまったら恥ずかしいな。チラッと見たが友達と喋っているみたいでホッとした。
色々と考えすぎて疲れちゃった。