第十話
ある日の帰宅時、胸ポケットに入れていたスマートフォンが突然鳴りだした。あまり電話が掛かってきたことがないので驚いてスマートフォンの画面を慌てて見てみたら、リオからの着信だった。何だろう……。
「あ、カスミン? 動画! 動画! この前に投稿した動画が凄いことになってるから見て! ちょっと今からURL送るわ」と言って電話が切れた。
リオの声の雰囲気から良い事があったのではないかと思った。
メールがすぐに来なかったので、制服から部屋着に着替えているとスマートフォンにメールの着信音が鳴った。早速メールに書いてあるURLからアクセスしてみた。
リオチャンネルという、リオが橋の上で撮った画像が貼り付けられているページが表示された。十分ぐらいの長さの投稿動画が一つだけあり、視聴回数がちょうど三万再生を超えた数字が目に入った。
「えっ? そんなに再生されるものなの?」
自分のクラスメイトが以前、「視聴回数が百回超えたぜー」とはしゃいでいたので、桁違いの数字に目を丸くした。コメント数も多く、スクロールさせてもずっと続いている。もし悪口を書かれていたら嫌だなぁと思いつつもコメントに目を通した。
「シンプルに面白い」「ちょっと失敗してるの笑った」などのコメントがある中で、「カスミン可愛い」「仮面付けてる子、凛としていて良い」「はにかんでいるの萌える~」など、私にとって嬉しいコメントが溢れていた。大人しくしていたのが良かったみたい。
あと、「アニメキャラみたい」というのが多かった。それで再生回数が増えたのかな。スライムが失敗気味だったのも良かったみたい。
リオのメールには五百再生ぐらいまでは緩やかに上がっていたけど、どうやら投稿サイトのトップページにある紹介動画の一つに選ばれたようでそれ以降、SNSなどの拡散に次ぐ拡散で三万再生まで一気に跳ね上がっていったと簡単に書かれていた。
リオは「カスミンのお陰」と言うけど、私は動画の編集が良かったからだと思った。シーンがテンポよく繋がっていたり、文字の入るタイミングやBGMの選曲など全体的にとても上手くできた動画に仕上がっていたからだ。
またリオから動画撮影を頼まれるかもしれない、と思うと緊張してきた。緊張するけど楽しい気持ちが心の中を埋め尽くしていた。また同じような面白くて再生回数が多くなるような動画が撮れるだろうか。次はあまり再生されなかったらどうしよう。自分のせいで悪質なコメントが出てしまったらどうしよう。視聴してくれる人に嫌われたらどうしよう。不安によるプレッシャーが増えていく。でも、スライムの動画がみんなが見てくれるような楽しい動画になって良かったと心から思った。
色々と考えすぎて疲れちゃった。