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HSP少女はかく語りき  作者: なみだいぬ
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第一話

 ある日の放課後、暖かい日差しが窓越しに教室内を照らし、四月下旬では寒気が残る木目の机はほのかに暖かい。ぞうきんで机を丁寧に拭きながら、その暖かさに少しの嬉しさを感じている。水拭きぞうきんで冷え切った指先の痛みが和らいでいるから。


 二年二組の生徒は帰宅か部活で教室内には今日の掃除係しか残っていない。掃き掃除担当の男子生徒達はふざけあって遊んでいる。ぞうきん拭き担当の他の女子生徒は雑談している。私はちゃんと掃除をしているのにサボっている連中を見ると腹立たしいのは当然だけど、注意できない自分も腹立たしい。


 高校二年にあがってまだ一ヶ月も経っていない。クラスには知らない顔ぶれもちらほらあり、クラスメイト同士まだ馴染んでいない時期だ。サボっている生徒とはあまり面識が無いだけで仲が悪いわけではない。だから注意をして嫌われるのも嫌だなと思ったり、自分さえ我慢していれば、掃除係の間で険悪な雰囲気になったりしないと思った。それに逆ギレしてくる事もあるだろうし、これから口を聞いてくれなくなったりすることもあるかもしれない。ずっと無視されたりね。そういった理不尽な報復が怖いと思った。相手の性格が分かってきてからじゃないと軽はずみで素行の悪いクラスメイトに注意ができないよね。忘れ物で教室に戻ってきた先生がサボっている生徒を見つけて注意されたら良いのに、などと心の中で思った。


「倉里、ゴミ捨て頼むよ」

 男子生徒達はそう言って通学カバンを肩に掛けて教室をそそくさと出ていった。


「倉里さん、ゴミ捨てお願いね」

 女子生徒も続いて教室を出ていった。


 みんな部活があって、開始時間を過ぎているから早く行く必要があるとかで、ゴミ捨て当番は帰宅部の私、ということ。まだ「頼むよ」や「お願いね」って言ってくれるだけましな方かな。頭の中でそう思いながらゴミ箱の白い袋を新しい物に取り替えた。

 ゴミ捨てもサボる生徒もいるみたいだけど、私はそんなだらしない生徒だと思われたくないから、面倒臭いけど、当番の仕事はちゃんとしている。自分の通学カバンとゴミ袋を持ち出して教室の戸締りをした。


 職員室で教室の鍵を戻して下駄箱で下履きに履き替えた。

 グラウンドを横目にしながらゴミ袋を運んでいると、同じ掃除担当の男子生徒がボールを蹴っているのが見えた。木村君と小林君ってサッカー部だったんだ。二人とも活発そうな雰囲気なので合っているなぁ。


 グラウンドの端にはテニスコートがあり、コートに何十人も並んでいた。同じ掃除担当の女子生徒もラケットを持って素振り練習をしていた。その中に掃除を雑談でサボってた小泉さんと佐藤さんがいた。


 頑張ってるなぁ、部活。私は運動系の部活は苦手。でも、高校に入学した時に軟式テニス部に入ろうかなと思った事がある。素直に「楽しそう」と感じたのがきっかけだった。その日の帰り道をウキウキしながら自転車を走らせたのを覚えている。でも、よく考えてみた結果、入るのを止めた。もともと運動神経が良い方ではないし、練習して上手くなれる自信無いし、それにそもそも中学の時に部活でしていた人が入部するものだろうし、下手だったら練習するときに私が失敗して相手に迷惑掛かるだろうし、自分も楽しくないだろうし、そのうち誰も相手をしてくれなくなるだろうし。私みたいな者が入ったら、テニス部に入る同級生の皆から嫌がられるに違いない。そんな未来がすぐに浮かんできたから。その事を頭の中で思い出して、やっぱり入部しなくて正解だったと心の中で何度も頷いた。


 テニスコートの北に学校の塀が見えてきた。塀のちょうど裏門に近いところに動物園の柵のような収集用のゴミ捨て場がある。ようやくそこでゴミ袋を柵の中にそっと置いた。


 さ、帰ろうっと。

 色々と考えすぎて疲れちゃった。

挿絵(By みてみん)

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