屋上神様
上からものを言う。何様だって話だけど、屋上から見下げた校庭は、ちょっと寂しくさせる。手摺に手をかけて、少しバランスを崩せば下まで真っ逆さまで死んでしまう。下ではそんな危険はない。でも此処にはひとりだけで、ひとりで見下ろしている。上と下、まったくの別世界で、水槽か虫籠を観察している気分にさせる。遠い距離感だ。校庭では、もう帰宅時間だから各々友人と一緒に遊びに行く約束をしていたり、部活の為に着替えてストレッチしたり、意味もなく駄弁って時間を潰していた。そこでは誰かと誰かが同じ空間で繋がっている。でも、屋上からの視点は、物理的な高低差以上の間合いを線引きしている、そんな気がした。溜息を一つ。屋上は孤独だ。立たなければわからない視点で、自分で選ばなければ見えない目の位置で。その時背後で、鍵の壊れた扉がギィギィと音を立てた。誰も来ないと高を括っていたせいで心臓が跳ねるほど驚いた。「あら先客?」と現れた同級生は手に持つ煙草とライターを慌てて背中に回した。「見なかったことにする」不思議なもので、何もなくても近くに誰かがいるというのは、それだけで落ち着ける。