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第27回「情報の対価」

 コンスタンティンはたっぷり間を置いてから、自信と意味深を口元に浮かばせた。


「『聖女の槍』という武器を知ってるかな」

「いいや、知らないな。プラム、君はどうだ」

「把握している。だが、おとぎ話のようなものだ。わざわざ取りに行く価値があるかというと、経済ではないと考える」


 初めて聞いた名前だったが、プラムが知っているのが意外だったし、なんだか負けた気分だった。そんないかにも強そうな武器なら、冒険の旅をしていたころに風聞だけでも耳に入っているはずだが、まるで聞いたことがなかった。


「どこにあるんだ」

「ルスブリッジ大聖堂の地下書庫の最深部」


 遠くはない。

 だが、面倒を起こしたくない場所ではある。レラート帝国の自由都市であるルスブリッジ。大聖堂はその象徴とも言える巨大建築だ。完成までに200年掛かったとほどで、建築様式が箇所によって時代性を表していると評判である。また、かつて大陸で最も尊敬された君主と言われる「慈悲王」ラヴィクマールの墓があり、世界中から多くの観光客が集まる。周囲ではモンスターの出現もほとんどなく、人間にとっては有数の安全な場所と言えた。

 裏を返せば、魔王アルビオンも側近たちも、わざわざ攻め落とす必要がないと考えていた証左でもある。内陸部にあって攻めやすく守りにくい地形。帝国の構成都市でもあるため、人間側の手強い反撃も予想される。わざわざ無理をする必要はなかった。

 そんなところに、本当にとてつもない力を持つ武器が眠っているのか。プラムが知っているという事実を加味しても、まだ疑念が残るところではあった。


「地下書庫ねえ。ずいぶんとまた雰囲気のあるところに眠っているもんだ。よく知っていたなあ」

「これは最高機密に属する部類らしい。もちろん、王はそんなものを造作もなく乗り越え、同時に無意味な情報として捨て置いていた。利益にも害悪にもならないと判断したわけだ」

「人間ってのはどうも情報が筒抜けだね。この分だと、彼から法外な値段で買わなくても、プラムに頼めば全部解決しそうだ」


 そういうことである。わざわざコンスタンティンの「お願い」を聞かなくても、多くの機密情報を知っているらしいプラムに頼めば、大体の問題は解決してしまいそうだった。


「待ってくれ。お嬢さんもあんたも、聖女の槍の特別な使い方については知らないだろう」


 コンスタンティンはよりいっそう身振り手振りを激しくした。


「ただの武器じゃないのか」

「いいや、違う。武器としても卓抜した威力を持っているが、その真価は解呪能力にある。たとえ魔王が千年の呪いをかけてきたとしても、それを容易に打ち砕くほどだ。さらに、呪いを解かれたやつはすさまじい力に目覚める。覚醒するって感じかな」


 限定的な状況下ではあるが、対象の能力を大幅に向上させる副次効果があるわけか。僕は納得を覚え、同時に興味も湧いてきた。


「愉快な内容だ。たとえほら話だとしても、『そこに何があるのか』を見たくなってきた」

「しかも、その深刻な呪いを掛けられているのが俺なんだ」


 何を言ってんだ、とツッコミを入れるのをこらえたことについて、僕は誰かに褒め称えてほしいくらいだった。

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